はなむけ、白雲、彼岸の黄色
それは2度目の別れであり、ある意味で最後の別れである。
薄暑、晴天。彼岸の街並みは日光の色。連絡船は碧の狭い海を行きつ戻りつ。
広島・尾道水道のいつもの眺めだ。本州と、ここ向島を隔てている。幅300メートルもない彼岸と此岸の間を渡す船は、10分間隔という忙しさで行き交う。
だから船に乗ることに特別な意味はない。いつもならば、の話である。
今日、姉がお嫁に行く。
式は今月の頭に東京で行われた。私たち向島の家族もその日は、水道を渡って尾道駅から山陽本線の黄色い電車に乗り、途中で新幹線に乗り換えて式場へと向かった。その約4時間の道のりは、姉がこれから辿るものと同じだ。
数年前も、進学のために姉は一人で船に乗って行った。そして今日も。行って、この家に戻ることはもう無い。
空に、一筋の白雲。船を背にした姉の顔には晴れやかな表情が浮かんでいた。
色節の、とても美しい日だ。