引っかかること
未だに心に引っかかってる話をします。
あるアイドルでの舞台で私の席は通路がすぐ左一番端の席でした。前からもさほど遠くなく、何より端なのでとても良い席で満足してました。私のすぐ右隣の席にやって来た女性が
「(推しが)通路で踊るので一幕だけ席替わって貰えませんか?」
一瞬、何を言われたか理解出来なかったが、要するに席を交換して欲しいとの事。
私の席は一番端なので右隣とは全く違う。
普通、席を替わるなんて無いじゃない?
しかも演者達が通路で踊るなんて情報、私は知らなかった。でも、有り得なくは無い。
「えっと(どうしようかな)…」
「お願いします、お願いします!!」
「……(推しは)誰ですか?」
「○○君です」
「なぜここで踊るって知ってるんですか?」
「もう既に一度来ているので知ってます。」
彼女の懇願の目。
ここで断ると気まずいよな……相手は若いヲタク女だし。とりあえず、現場の環境を優先した私は一幕だけですねと言って席を替わった。
いよいよ来た
一幕の後半で確かに客席の後ろから入場して舞台までつづく通路でピッチを取って踊っていた。すぐ目の前で彼女の推しは踊っていた(はず)。私にはその子の名前と顔が一致しなかったのでピンと来なかったが。私の左隣の彼女を顔の向きを変えず覗きこんでみると、とてもおとなしい。推しを目の前にすると凝固していた。感激して声も出さずにじっと喜びを噛み締めているのだろうか…?その先のはにかんだ笑顔のまま淡々と踊る○○君と彼女の微動だにしない横顔を、私の顔は舞台を向いて、眼球だけを2人のことを行ったり来たり往復させていた。
彼女の熱い眼差しがあったのだろうか。そこまではさすがに確認出来なかった。指ハートでも作ってたのかな?まさか写真とか撮ってないよね…❓
いやいや!そんなことを考えてる場合じゃないでしょ!舞台にいる自分の推しを追わなくちゃ!
一幕が終わった
「ありがとうございました!!」と彼女は言い私と席を入れ替え元に戻した。
「(推し)じっくり見れました?」
「はい!すごく良かったです!ありがとうございます!」
「良かったね〜!」
私がもし彼女の立場だったらこんなに嬉しいことはないだろう。と、同時に席を替わってもらおうという発想もない。そんなことをしていたらキリがないし出来るはずがない。相手に迷惑なだけ。それを私は承諾してしまったから我ながらお人好しというかなんと言うか…。別にカッコつけたりする訳ではなく私が母親で彼女が娘みたいな年頃なのでつい彼女のわがままを聞いてしまった。が、胸に引っかかっていた。
その後、何人かの人にこの話をしたが、忠告してきたのは娘だけだった。
娘の忠告
「それ、絶対やっちゃいけない事だよ!その人が悪い人で、もし撮影か何かして発覚した時お母さんの席なんだからお母さんがやった事になっちゃうでしょ!」
アイドルの世界ではこういう不正行為をする人がいるということ。
つまり濡れ衣を着せられる…確かに!ありえる!でも、そんなことする人っている?自分の利益のために善良なヲタクを騙して…犯罪ですよね。立派な犯罪。いないとも、言えない…ほんとに?もしそうならとても悲しい…。
悲しいどころか、もしそうなったらファンクラブもろとも事務所から除名される。被害者は私、泣き寝入り?そんなの許せない!いくら私が隣の人からお願いされて席替わったんですと説明したところで証拠がない。あとは隣の席の彼女について調べれば分かるはずだがそこまで調べててくれるかどうか…。
反省
と、公演を楽しむつもりが少し後味が悪くなってしまい残念です。2幕で席に戻った時はやれやれという気持ちとやっぱりこの席の方が舞台までさえぎるものがなく全然良いと思って替わったことを後悔しました。今でも舞台観劇というと思い出すので、心にモヤモヤが残っています。今まで数多くの舞台観劇経験がありますが、本当にこんなのは初めてなので奇妙な感じでしかない。考えすぎかな?犯罪の匂いはその時は感じませんでしたが、自分が被害に会わないためにも今後は席を替えることをしないと心に決めました。