玉井詩織ソロコンサート「いろいろ」という名の世界
玉井詩織さん(ももいろクローバーZ)の初のソロコンサート「いろいろ」(2024/3/2-3、東京国際フォーラム)の参戦(Day2)から10日が経った。しかし、未だまとめ切れないでいる。でも、これをやっつけないと前に進めない。そこに一本筋の通った視点が欲しいが、それができない。しかし、それこそが玉井さんの「いろいろ」だったのではないか。
これまで、「私は私がわからない」と言ってきた。どんなスタイルにも限定されたくなかった玉井さんが、初めてソロという枠で打ち出してきたのが「いろいろ」だった。2022年の写真プロジェクトに端を発し、2023年のソロ曲プロジェクト「SHIORITAMAI 12Colors」の考え方、思想そのものが持ち込まれたライブ。玉井さんを何か一つのものに限定しないライブ。
いろいろ怒濤の展開!
初っ端から驚かされたのが、「HAPPY-END」だ。予定調和を1曲目でガツンと壊された。あんな開幕一発目、誰が想像しただろう。真っ白なエレキギターをかき鳴らす玉井さん! お立ち台の頂点で仁王立ちする玉井さん!「Break a Rule!」と雄叫ぶ玉井さん!「今後、密かに変化が楽しみな一曲」などと書いてたことが早々に叶って笑った。このオープニングで会場全体がぶち上がって、完全に曲の世界が立ち上がった。
そこから怒濤の展開で、ほぼずっと休みなし。15周年ツアーの時みたく、流れで「ようこそ〜!」ってやる他はMCもなく、ストイックに詰め込む玉井さん。こちらも、息をつく暇がない。12Colorsの楽曲たちが、ゴリゴリの生バンドで披露される。ついていくのに必死だ。そして、目の前にはきらめく制御ペンライトの海。1階、最後方から見る絶景だ。
以下、セトリや各曲の合い間の流れは公式レポートにさっそく譲って(↓)こちらは勝手かつ雑駁な印象と思い出を綴る(笑)
「ROCK THE BOAT」はいつも、とびきりの玉井さんを魅せてくれる。初めて生で観た明治座「Origin」の奈落から上がってきた椅子は忘れられない。イントロでこれは絶対ガン見曲に違いないと、速攻、双眼鏡を取り出した。脚を真上正面に蹴り上げるとこがあったと思う。美の横溢…
「暁」は、セトリの早めに来るとは思っていた。去年のバレイベでは現地参戦できなかったから、初めて生歌を聴ける。(やはり2日目は声がかすれ…)と一瞬恐れたものの、そんな心配はすぐにどこかに吹き飛んでしまった。むしろ後半の方が絶好調。ソロコンへの入れ込み方が尋常じゃない。
「日常」と「泣くな向日葵」は、フォーク村でもやってないアコギでのパフォーマンス。初めて尽くしで、脳が追いつかない。それでも体はノリノリで、「泣くな向日葵」で遠慮なくタオルをブンブンにぶん回した。確か、ステージ上で、いづみ先輩も振ってくれていた。
なぜ、ももクロ楽曲の中から選んだのが「孤独の中で鳴るBeatっ!」だったのだろう。教えてほしい。初日参戦できなかった不甲斐ない自分が剥き出しになりそう。ズタボロなメンタルに優しく寄り添ってくれる曲。玉井さんがパンフレットに書いてる通り、玉井さんのライブは誰も置いていかない。
爽やかな「マリンブルー」が、意外とゴリゴリの生バンドにめちゃくちゃ合うことを生で体感。あとで知ったが、フッフフッフーのとこで声を出すよう、いづみ先輩が煽ってたらしい。全く気づかず。というか、そこまで余裕ないです。何しろ初めてのソロコン参戦なので。なんか玉井さん、いろいろ考えて、こちらを楽しませようとしてくれてるんだなぁと。それが嬉しい。
「Another World」「Eyes on me」「Spicy Girl」のダンス・ブロック。あるいは英語タイトル縛りブロック。あるいは小道具ブロック。キャンバス地のようなゴワゴワした衣装を着た玉井さんに対し、ダンサーは薄着、この不自然なアンバランスはもしや…(脱ぐ?!)という予感が当たって、やられた…(双眼鏡が目に張り付いた)
息を呑む純白のドレスに身を包んだ玉井さんが、白いグランドピアノに座って弾き語る「Sepia」と「宝石」。恐ろしく絵になる。ただし、ドラムの音がデカすぎた。ピアノ弾き語りにバンドは要らないんじゃないか?と何度も自問した。しかし、玉井さんが選んだのはリサイタルではなく、バンドなのだ。「Sepia」はバレイベ表でも演っている。同じことを続けず、常に趣向を変えてエンターテインしようという気概を感じた。
(※ これをまだ書いてる途中、フォーク村で玉井さんが全編ピアノ弾き語りの「Sepia」をやってくれた。終始リラックスして余裕の演奏でピアノの音も良く通り、深い響きを湛えたボーカルも素晴らしかった。以心伝心?と思わなくもなかった。玉井さんは応えてくれる人。素敵な人です)
「宝石」の時、ターコイズグリーンに輝く制御ペンライトの海が綺麗だった。そこからの「天国のでたらめ」という選曲の妙。落ちサビまで玉井さんのソロを堪能した。「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」のイメージからか、この曲には純白のドレスがよく似合う。
「We Stand Alone」のサックス演奏には心底驚いた。真っ暗なところで、何かを受け取っている玉井さん。ライトがつくと、そこにはサックスを首から下げた玉井さんが! これには声が出た。ここまでやるのか?!と思った。玉井さんは惜しみなく、ソロコンに力を傾注した。惜しみなく、持っているものをすべて注ぎ込んでくれた。全部詰め込んでくれた。それがたまらなく嬉しくて、その根性にひれ伏す…
亀田誠治さんが登場し、披露された「ベルベットの森」が最もライブ化けした楽曲だったかもしれない。個人的にメロディも歌詞もいまいち掴み切れてなかった曲。もっと言うと、玉井詩織を「アイドル」に固着化している曲。そういう第一印象だった。ところが、ライブ・パフォーマンスの力強い説得力でグイッと掴まれて、圧倒されてしまった。曲全体に襲われた。最高の表情で熱唱する玉井さんと、ライブ終盤の昂揚感がとても良かった。音楽というもののマジック。イントロで玉井さんがステージ奥の台に寝転び、起き上がるとこから始まる演出は、MVのオマージュで、深く静謐な森を想わせて秀逸だった。
2月に配信された、ポスト12Colorsの新章「Shape」は、玉井さんの新しい魅力が表出した楽曲。オトナっぽくて気だるくて、なんか違う感じにドキドキするけど、そこは予告通り、バッキバキダンスで決め。密かにラップパートがどうなるか気になってたけど、そこもダンスだった。(ちなみにソロコン後、最も聴いてるのがこの曲と、幕間に流れた鋭児の「PANORAMA WORLD」かもしれない)
アンコールという境界
以上で本編終了。だったのだと思う。というか、ももクロ本体のライブで「バイバーイ、ありがとう」と言われて一旦終わるというスタイルに慣れすぎて、明確に言ってもらわないと終わりだとわからない体になっている。これこそ真のモノノフ…(違う)
アコギ1本抱えて、スウェットの玉井さんが1人ステージに登場。この姿、玉井さんのソロコンとして自分が抱いていたイメージに最も近かった。本編が12Colorsという「いろいろ」な玉井さんだとすれば、アンコールは12Colorsを演じ終えた後の素の玉井さんだったんじゃないかな。
初のアコギ弾き語りによる「…愛ですか?」を聴きながら、玉井さんは一日にしてならず、と思った。続いて、名曲中の名曲「モノクロデッサン -ZZ ver.-」で、初めて見たフォーク村の1曲目がこの弾き語りだったなと思い出した(あの時は5人ver.)。玉井さんの歌声をかき消すほどの詩織コールで会場が一体となり、どよめいて止まなかった「走れ!」。ラストに不朽のソロ曲「涙目のアリス」で締めた玉井さん。
何かに限定されることを嫌い、何にも限定されたくなかった人は、何にでもなれる人となって現れ、そしてそれを演じ切り、脱ぎ終えた後、「ももいろクローバーZの玉井ー?」「詩織ー!」として、一つの世界を完成させた。
円環するエンディング
幕が降り、激しい充溢感のなか、流れるエンディング映像。それはメイキングの様子を映し終えた後で最後、玉井さんがソロコンのタイトルロゴ「いろいろ」を描くとこで終わった。この題字、すごく気になっていた。それを最後の最後、まさしく描き上げるとこをシメに持ってくるという、完璧な終わり方。セトリの1曲目からラストのラスト、エンディング映像のシメに至るまで、玉井さんの「いろいろ」は、終わってみれば、すべてが円のように美しく符合するライブだった。
いつか、坂崎村長は言った。「玉井詩織は、僕らをどんどん超えていきますよ」と。この言葉に尽きる。玉井さんは、次はどんな玉井詩織を見せてくれるだろうか。それが、今もう楽しみで仕方ない。
玉井詩織さん、とても幸せな時間と素晴らしい景色を、本当に本当にありがとうございました! あなたはいつも、いつまでも、特別な推しです。
最後に…
グッズも最高でしたね。購入額も…(笑)
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