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あのたび -中国・麗江-

 40時間以上硬い座席に座ったままで、北京から攀枝花(読めない)駅に到着した。横になって眠りたいところだが目的地は麗江(リージャン)だ。雲南省の奥にある地で世界遺産にも登録されている。日本では全く聞いたこともなかった麗江。行く予定はなかったのだが現地で出会った人の噂で行程を変えていくことも一人旅の面白さだ。しかしボクには圧倒的に旅の経験が欠けている。
 電車なら時刻表と列車番号を見ればほぼ確実に目的地に到達できる。ところが攀枝花から麗江まではバスである。バスターミナルはどこにあるのか、何時に出発するのか、いくらくらいかかるのかという相場が全くわからない。現代ならばスマホやネットがあるので困ったら検索や翻訳ツールを使えばよいのだが2003年時点では存在しない。周りに同じような外国人旅行者も見当たらなかった。

 仕方なくその辺を歩きながら「リージャン? リージャン?」と連呼するしかなかった。おっさんがこれに乗れ、と言ってくるが普通の車だ。それに乗ってしまったらどこに連れて行かれるかもわからない。
 すると若い中国人カップルが助けてくれた。駅からバスターミナルへ3元で行き、そこから麗江行きのバスが出ているのだという。
 なんとか74元+保険2元?でチケットを買い寝台バスに乗る。日本ではリクライニングが倒せる長距離バスが一般的だが、中国では横になって眠れるベッドが並んだ寝台バスが国内各地を走っている。

kinbricks now
https://kinbricksnow.com/archives/51793968.html  より

 これはなかなか貴重な体験だが、割とマットレスが固いのでずっと横になっているのもきつい。麗江は標高2400メートルほどあるので、そこまでの道程は落ちたら死ぬなこれという渓谷の細い砂利道をバスが走る。が悪路で揺れる窓外の景色は絶景である。それだけでも乗った価値はあった。
 10時間かかってようやく夜23時に麗江に着いた。が時刻が遅過ぎて安い宿を探すのに1時間歩き回る。門が閉まってはいたが親切な中国人が気を利かせて管理人を呼んでくれ、起こして開けてくれた。長い移動で疲れていたのでベッドで眠れるのは助かった。

 ずいぶん移動に苦労したが結論としてココ麗江に来てよかった。仕事があるならここで働いて住んでも良いと思えるくらい。
(↓参考動画:Xinhua Japaneseより)

 まず街がきれい。石畳が敷かれたコンパクトな京都といった風情。歩き回れるくらいの広さでちょっと高いところに登ると古城の街並みが一望できる。朝早く路上で湧き上がる蒸気。美味しい肉まんが安く味わえる。ボクが訪れた2003年時点でも西洋化されたカフェなどが並びお洒落でスタイリッシュな店が、街の雰囲気を壊さないように建っている。旅人の中には観光地化されすぎていて萎えるという方もいるようだがボクは好き。
 
 麗江はいずれまた帰ってくる土地候補のひとつに入った。がここで逗まっていては旅が終わってしまう。出発しなければ。どんなに居心地がよくても、次へ次へ。それがボクの旅のスタイルになっていく。

中国ルート

(つづく)


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