ゴールド投資#05 先物取引
現物、純金積立、ゴールドETF、ゴールド投資信託ときて次は先物取引。先物取引の定義は取引所で取引される将来の商品の価格を取引し、証拠金を納めることによりその数倍から数十倍のポジションを持てるというものです。まさにハイリスクハイリターンな取引です。
先物の価格自体は、その時点のスポット価格からその先物の受け渡し期日までの通貨の金利とメタルの金利(リースレート)で理論値が計算できます。ゴールドを扱う業者は先物により格ヘッジができます。投資家がリスクを取ることが市場に流動性を与えます。
「先物取引=futures」は取引所で行われる定型化された特定の商品の将来価格の取引ですが、相対で行われる将来価格(厳密には3営業日後以降決済のもの)の取引は「先渡し取引=forward」と呼ばれます。似ていますが、全く別物です。
ゴールドを上場している世界の先物取引所は、CME(Comex)、上海期貨交易所(SHFE)、大阪取引所(OSE)がメイン。そのほかインドのMulti、ドバイのDGCX、トルコのBorsa Istanbulなどがありますが、ゴールドの価格形成に影響を与えるのはメインの3取引所です。
メインの取引所の中でも最も活発で実質的に世界のゴールド価格の形成の中心になっているのはCME(Chicago Mercantile Exchange)グループのComex(Commodity Exchange)です。日本のマスコミや業界が「NY金」と言ってるドル建てゴールド価格はこのComexの価格です。
Comexと日本の先物市場であるOSEの大きな違いは、一つのactive monthがあり、基本的に売買取引はそこで行われること。たいてい一か月から三カ月先物になり、それよりも先に延ばしたければswitch rateが取引されており、それでバリューを先の限月に延ばしていきます。
ComexのアクティブマンスはFeb, Apr, Jun, Aug, Decの5つに決まっています。これはメタルによって違います。なぜか知りません。笑。今9月ですが、アクティブマンスはDec 24。8月が近づくと出来高がAugからDecに移っていき、7月末にDecがアクティブマンスになります。
ここで先物価格を基準にする点の注意点を書きたいと思います。Comexの先物価格はドルとゴールドの為替であるスポットLoco London 価格とは当然差があります。オンスあたりのドル建て価格という見かけが同じだけに、時に誤解を生むことが多々あります。
8月1日のComex Decとスポットの値差(これをEFPと言います。別途解説します)は45ドルでした。スポットが2430ドルであったのにComex Decは2475ドルでした。7月30日まではAugがアクティブであり、そのEFPは-1でした。なのでスポットとComexはほぼ同じ価格でした。
そのため、NY金を価格だけで報道していると一日にして価格が45ドル上昇したという誤解が生じてしまいます。それはただ8月限から12月限に取引が移り、スポットと先物の間の期間が5ヵ月と長くなったために金利分高くなっただけなのです。
僕がドル建てゴールド価格の話をするときはLoco London spot 価格です。常に同じ条件で公平だから。NY金になると一年のいつか、によって先物の決済までの期間が違い、ゴールドの価格の話をにならないからです。マスコミや業界人にも理解して欲しい点です。
Comexは現在世界のゴールドマーケットの中心にあると言っていいでしょう。Spot Loco London価格もComexの価格から逆算して出すのが普通になっています。そのため最終的にはすべての取引が結果的にComexに集まっていると言ってもいいでしょう。
日本のゴールド先物取引は1982年に東京金取引所が設立されたのが始まり。それが84年東京工業品取引所(Tocom)となり、2013年に東京商品取引所に改名、2019年に日本取引所(JPX)グループに参加、貴金属取引はTocomから同じくJPXグループのOSEに移管されました。
投資としての先物取引の重要点は「レバレッジ=テコの効果」です。現在OSEの金標準取引(1kg)の取引証拠金は46万7000円。総額の25分の1の証拠金で1kgのゴールドを取引することができ、25倍のレバレッジをかけることができるハイリスクハイリターン取引です。
OSE金標準取引倍率25倍は現在のFX取引の最高倍率と同じです。おそらく現在もっともレバレッジのかかった投資商品だと言えます。そのためそれなりのリスク耐性のある金融資産とリスクに対する理解を持った投資家以外には勧められる取引ではありません。
逆にリスクを正しく理解し、それをコントロールできる資金力のある投資家にとってはもっとも資金効率がいいのが先物取引だと言えるでしょう。ただそのハードルは非常に高いと言わざるを得ません。その意味で、金ミニ先物や金限日先物取引は検討に値するでしょう。
OSEには金標準先物に加えて金ミニ先物と金限日先物があります。ミニ、限日ともに取引単位は標準の1/10で100グラム。限日はいわゆる限月がなく、永遠にポジションを保持することができます。標準先物との違いは現物が絡まないこと。決済は基本反対売買です。
限日取引は上場検討の際の諮問委員会のようなもののメンバーでした。標準取引と違い、現物での決済ができないという点がネックとなり商社や銀行は取引ができませんでした。裁定取引ができないので、ゴールドとは言えず、リスクが定量化できなかったからです。
Comex に戻りますが、EFP(Exchange for Physicals)。これはComexのActive monthとSpot Loco LondonとのSwap rateで、現在Dec Gold のEFPは26.5-27.5。Dec Goldが2600ドルであればスポットは2572.5-2573.5となります。Futureとspotを交換できます。