見出し画像

サンアントニオ乳癌シンポジウム速報-乳がんセンチネルリンパ節生検省略へ

今回も手術の話です。

乳がん治療でセンチネルリンパ節生検という手技があります。

昔はどんな小さな乳がんも腋窩リンパ節をすべて取っていました。しかしリンパ浮腫等の合併症もおきます。
そこで考え出されたのが、センチネルリンパ節生検という手法です。詳細は省きますが、乳がんに特殊なインクを注射し、それを追いかけ、最初にそれが流れ着いたリンパ節を採取して調べる、そこに転移がなければそれ以上の腋窩の郭清は避ける、という考え方です。

センチネルリンパ節生検 (SLNB) は、早期乳がん患者における腋窩リンパ節転移の有無を調べ、病期(ステージ)を正確に診断することができる、とすでに証明されており、いまでは標準の手術方法になっています。この技術は数個のリンパ節を採取して調べるだけで、腋窩リンパ節を根こそぎとって調べることと同じ結果をもたらします。この技術はがんの外科治療をできるだけ縮小し、侵襲を小さくできる画期的な発明でした。

しかし、時代も進み症例も蓄積され、早期発見技術も進み、
早期がんで、画像上も腋窩のリンパ節転移がなさそうな患者さんには、そもそもセンチネルリンパ節生検そのものもしなくてもいいんじゃないのだろうかと乳腺外科医はみな思うようになりました。


今回のサンアントニオ乳がんシンポジウム(12月10日から13日まで米サンアントニオで開催されたSan Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS 2024)で一つの回答が発表されました。

 画像上も腋窩のリンパ節転移がなさそうな患早期浸潤性乳癌に対して、乳房温存術を行う際にセンチネルリンパ節生検(SNLB)を省略しても、SNLBを行う場合と比べて浸潤性疾患のない生存期間(iDFS)において統計学的に非劣性であることが、ドイツとオーストリアで行われたINSEMA試験の結果から明らかになりました。

発表者は今回証明されたセンチネル生検省略が適する患者は
年齢が50歳以上、がんのグレード1-2、ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性で、術前の腫瘍径が2cmまでだと指摘しました。慎重な患者さん選びです。

将来的には早期がんで、画像上も腋窩のリンパ節転移がなさそうな患者さんには、センチネルリンパ節生検そのものも必要な症例は限定されることになるでしょう。早期発見されれば乳腺のその腫瘍の部分だけを切除して終わり、そうなれば患者さんもずいぶん楽になります。ただ大前提が早期発見されていること、ですからそこは注意が必要です。どこまでいっても早期発見に勝るものはない、ということでしょう。
(ますます外科医も要りません)




いいなと思ったら応援しよう!

BRSURGENT
気に入った記事があれば、応援お願いします!モチベーション維持に役立たせていただきます。