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梅宮アンナさん乳癌術前化学療法中ニューモシスチス肺炎で緊急入院

ステージ3Aの乳がん闘病中であること明かしたタレントの梅宮アンナさん(52)が2日までにインスタグラムを更新。肺炎で入院していると明かしました。

「まさかの入院でした 肺炎にかかっていたとは」「24から30日まで、生きた心地がしなかったです。。高熱、食欲不振、不安ほとんど食べたいと思うモノもなくって、、心がポキって折れる音がした感じだった」「気管支鏡検査をして、組織を取り 正式な病名が昨日わかり」と告白し「当分入院になるでしょう」記述した。さらに「検査結果は肺炎でも、種類があり ニューモシスチス肺炎と。。またまた初めて聞く名前でした」と打ち明け「10月5日にイベントに参加する予定でしたが、残念ながら参加ができなくなり、参加され方々には先に一報を。。改めて御免なさいと謝りたくて。。本当御免なさい。。。また、改めてイベントは、考えております。。先ずは今、この肺炎を治す事に専念いたします。。」とつづった。

梅宮アンナさんは8月13日のインスタライブ中にステージ3Aの乳がんと闘病中であることを公表。診断は「浸潤性小葉がん」という希少な組織型のがんで、部位は右乳房。右腋窩(えきか、わきの下)のリンパ節転移があるという。5月下旬に異変に気付き、6月中旬に検査、7月上旬にがんと診断された。同31日からは手術前に抗がん剤治療を行う「術前化学療法」を開始していた。

AC治療中だったようですがニューモシスチス肺炎とはどんな肺炎でしょう?詳しく説明します。

ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumounia, 以下PCP)とは免疫不全の人がなる肺炎で弱毒菌による肺炎です。
病原体
ニューモシスチス肺炎は、Pneumocystis jirovecii(P. jirovecii)による日和見疾患です。Pneumocystis属は、真菌系の培養系で培養されないこと、抗原虫薬が有効であること等より、かつては原虫類と考えられていたが、リボソームRNAの遺伝子配列や細胞壁の構成成分等より、現在では真菌類に分類されています。
 エイズ患者さんがよく罹ります。クイーンのボーカルだった人も死因となりました。

発症機序

 4歳までの小児の75%で抗体価が上昇している報告があることより、小児期にP. jiroveciiに初感染するが発症することなく治癒する事が判明している。かつては、小児期の感染後は慢性保菌状態となり、免疫不全状態になった時点で再活性化することでPCPを発症すると考えられてきたが、現時点ではこの考えは懐疑的となっている。P. jiroveciiの感染経路および免疫不全者における発症機序はいまだ不明な点が多く、現時点では未決着事項と考えられる。一方で、気管支拡張症やステロイド長期内服者などの局所あるは全身性の免疫不全宿主では、PCPを発症していなくても、気道内にP. jiroveciiを高率に保菌している事が明らかになってきた。PCPの臓器移植患者間における集団発症事例が複数報告されており、慢性保菌者等からのヒトーヒト感染が起こっていることはほぼ確実である。

臨床像

 PCPの典型的な三徴として、労作時呼吸苦、乾性咳嗽、および発熱が挙げられるが、必ずしも全症状が揃うわけではない。肺野の聴診所見は、大半の症例で正常である。呼吸困難は亜急性に進行するため、低酸素の割に自覚症状に乏しいことが多い。室内気で安静時にSpO2は95%以下で、数分歩行させると90%程度まで低下することが多い。
 PCPでは気胸発症リスクが高いが、進行期HIVによる創傷治癒遷延の反映か気胸の治癒に時間がかかり、治癒後もすぐに再発する例をしばしば経験する。気胸をできる限り生じさせないようにするため、咳嗽の強い症例では積極的に鎮咳薬を投与しておくことが望ましい。
 PCP発症前の数ヶ月で10kg程度の体重減少を来し、多くの症例でるい痩を認める。口腔カンジダも高率に合併していることが多い。

診断

 Pneumocystis属には培養系がないため、確定診断には気道検体中の菌体を検鏡で確認する必要がある。検体のDiff-Quik染色またはGrocott染色を行い、菌体が証明できれば診断が確定できる。しかし、喀痰では検出感度が60%程度と低いため検鏡結果が陰性でもPCPを否定できない。そもそも喀痰自体得られない症例も多いため、検体としては気管支肺胞洗浄液を選択する必要がある。
 気管支鏡検査は侵襲性があること、種々の所見よりPCPは臨床診断が可能であり、後述の治療を導入することで治療的診断も有用であることより、普通PCP治療に不応性の症例や胸部CT画像所見からPCP以外の疾患の合併が積極的に疑われる症例以外では、気管支肺胞洗浄液を用いた確定診断は行っていない。一方で、後述のようにPCPに加えてノカルジア症、NTM症、クリプトコックス症、COVID-19肺炎を合併していた症例も複数経験しており、常に複数の疾患の可能性におく必要がある事は強調しておきたい。
  胸部画像所見では、両側に左右差なくびまん性のスリガラス様陰影を認め(写真)、経過と共に嚢胞性病変を生じることがある(写真2)。PCP発症例は、高度免疫不全状態のため複数の疾患を発症している症例も多く、単発性嚢胞性病変、病変が非対称な場合等非典型的な画像所見を呈している場合は、PCPの非典型例であるのか、複数の疾患の合併例であるのかを他の検査所見等も含め総合的に判断する。
 血液検査所見では、LDH、KL-6、およびβ-Dグルカンの上昇を認める。白血球数は上昇していないことが多く、CPRは軽度上昇(~2 mg/dL程度)に留まることが多い。CRPの高度上昇が見られる場合には、重症PCPもしくは他疾患の合併を念頭において精査を進める必要がある。β-Dグルカンは、PCPの確定診断例ではほぼ全例陽性であるが、感度が高くPCP未発症のcolonizationでも陽性となりうるため、これをPCP診断の根拠としてはならない。一方で、本検査が陰性の場合は、PCPの可能性をほぼ否定できる。
 PCP疑い、あるいは確定例でも重複感染、特に肺結核の可能性を考慮し、これらが否定できるまでは個室入院下(陰圧個室ではない)で、医療スタッフはN95マスク対応としている。PCPはヒトーヒト感染の可能性が指摘されており、未治療のPCP患者からは菌体の排出が多いことが想定されるため、適切な治療が導入され1週間程度経過するまでは、PCP発症リスクを有する免疫不全患者と同室にしないことが望ましいと考えられる。
治療と発症予防

 治療
治療の第一選択はST合剤であり、治療効果、費用対効果の点から既に使用できないと判明している症例以外はST合剤で治療を導入すべきである。しかし、高率にみられる薬剤アレルギーや有害事象によりST合剤による標準的治療期間(21日間)を完遂できるのは自験例では2割程度である。
 重症例を除き、第二選択薬はアトバコンである。最も忍容性が高いが、抗菌活性はST合剤に劣る事から重症例では推奨されない。さらに食後内服でなければ吸収率が極端に低下する点、半減期が約60時間と長いため有害事象が発生した場合には中止後も長期に遷延しうる点などにも注意が必要である。
 プリマキン+クリンダマイシンは重症例も含め治療方法として推奨されているが、本邦では両剤共にPCPに保険適用がない。各主治医の責任において投与する必要があるため、現時点では積極的には推奨できない。
 重症例における、第二選択はペンタミジン点滴である。同剤は副作用発現率が高いため、当科では添付文書に記載のある標準投与量4mg/kgより少なめの3mg/kg/日での治療を施行しているが、治療効果は標準投与量と比較しても全く問題ないと考えられている。3mg/kgに減量しても種々の有害事象が発生するため、継続できないことが多く使用しづらい薬剤である。なお、ペンタミジン吸入は後述の予防としては効果を有するが、治療として使用することは推奨されない。
 PCPの治療期間は合計21日間であり、その後は抗HIV治療(ART)により免疫能が回復するまで二次予防を行う必要がある。
 PCPは補助療法としてステロイド併用の有効性が確立された感染症である。ステロイドを併用することで、PCP治療薬によるアレルギーの発症が抑制されるため、ステロイド併用によりPCP治療が継続しやすくなる。しかし、ステロイド使用により、サイトメガロウイルス(CMV)が活性化し種々のCMV疾患を生じるリスクが上昇する。DHHSガイドラインでは21日間のステロイド使用を推奨しているが、呼吸状態を診ながら早めにステロイドを中止することが多い。
 ART導入については米国DHHSガイドラインでは、PCP診断から2週間以内で開始を推奨している。PCP治療中にARTを開始すると、PCPの治療効果が不十分、PCP治療薬の有害事象、ARTによる免疫再構築症候群(IRIS)の判断が困難になるため、少なくともPCPの治療終了後にARTを導入することが多い。ただし、重度免疫不全例やPCPに関連した気胸合併例など早期の免疫能回復が望ましいと判断される例では、IRISに注意しながら個別にART導入時期を判断している。
治療

1)第一選択
ST合剤 9-12錠(TMPで15mg/kg相当)分3経口投与
バクトラミン注 3-4A+ 5%ブドウ糖(生理食塩水)500mL 8時間毎(経口投与不能の場合)
2)代替治療(第一選択が使用できない場合)
アトバコン1500mg(2包)分2(食後内服)
ペンタミジン3mg/kg +5%ブドウ糖250mL x1回(2時間以上かけて点滴)
プリマキン30mg+クリンダマイシン 1800mg分3または4経口投与、600mg6時間毎または900mg8時間毎静注(適応外使用)
 以上を組み合わせて合計21日間治療し、二次予防に移行する。

補助療法
PaO2<70 mmHgあるいはA-aDO2≧35mmHgの症例ではステロイドを併用。
当科では過度の免疫抑制を回避するため、多くの症例で呼吸状態を見ながらガイドラインよりも少量かつ短期間(2週以内)で終了している(括弧内は米国DHHSガイドライン推奨)
プレドニン 60-80(80)mg/日 3-5日(5日)
→プレドニン 30-40(40)mg/日 3-5日(5日)
→プレドニン 15-20(20)mg/日 3-5日(11日)

 重症例では治療開始時にメチルプレドニゾロン0.5-1.0g/日3日間(いわゆるステロイドパルス療法)の先行投与を考慮する。パルス療法のエビデンスは確立していないが、重症例に対して、治療開始と同時に迅速に使用しており、有効性は高いと考えている。一方で、重症化からの期間が長くなるほどステロイドに対する応答性は著明に低下する。

今までたくさんの患者さんを治療してきましたがニューモシスチス肺炎になった患者さんはいません。何か免疫低下になるような素因があるのでしょうか?皆さんは化学療法中はのんびり過ごしてください。

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