1つ以上の内分泌療法を受けた化学療法未治療のHER2低発現または超低発現の進行乳癌へのトラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)の適応拡大が申請
またまたエンハーツ=トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の話です。
10月4日、抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)について、1つ以上の内分泌療法を受けた化学療法未治療のHER2低発現(IHC 1+ または IHC 2+/ISH-)またはHER2超低発現(膜染色を認めるIHC 0)の転移を有する切除不能または再発の乳癌への適応拡大申請が厚生労働省に行われました。
今回の申請は、ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の化学療法未治療の転移再発乳癌患者を対象に実施されたDESTINY-Breast06試験の結果に基づく。DESTINY-Breast06試験は、HR陽性HER2低発現または超低発現で化学療法未治療の再発または転移を有する乳癌患者をT-DXd 5.4mg/kgを投与される群(T-DXd群)と医師選択化学療法(カペシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択)群に割り付け行われている無作為化オープンラベルフェーズ3試験。進行癌に対して2ライン以上の内分泌療法±分子標的薬を受けた患者、術後内分泌療法で24カ月以内に増悪したか1ラインの内分泌療法+CDK4/6阻害薬投与で6カ月以内に病勢進行した患者を対象とした。
試験の結果は今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)で発表された。主要評価項目であるHR陽性かつHER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)の患者におけるPFS中央値はT-DXd群が13.2カ月、医師選択化学療法群が8.1カ月で、ハザード比0.62(95%信頼区間:0.51-0.74)、p<0.0001でT-DXd群で有意に延長していた。HER2超低発現患者のPFS中央値はT-DXd群が13.2カ月、医師選択化学療法群が8.3カ月で、ハザード比0.78(95%信頼区間:0.50-1.21)とT-DXd群で延長していた。
患者さんへの一言
今回のエンハーツの適応拡大はあくまでHER2低発現(IHC 1+ または IHC 2+/ISH-)またはHER2超低発現の転移を有する切除不能または再発の乳癌患者さんが対象です。
以前からお話しさせていただいているようにホルモン陽性乳癌はホルモン治療が基本です。どうしても抗がん剤治療が必要になった場合エンハーツの優先順位が上がりましたという程度です。
エンハーツは副作用がひどいので軽い抗がん剤からする選択肢は十分有効です。未熟な医者から身を守るためにも知識武装を