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タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤はどう使い分けられるのか?正しいホルモン治療を受けましょう。

乳がん術後にホルモン剤を飲まれている方は多いと思います。
乳がん患者さんの6から7割の方が服用されていると思います。

ホルモン剤には大きく分類して、SERMと呼ばれるタモキシフェンやトレミフェンと、アロマターゼ阻害剤(AI)と呼ばれるアリミデックス、アロマシン、フェマーラがあります。これらはどう使い分けられているのか、考えてみたいと思います。

閉経後にはタモキシフェンも、AIも効果がありますが、閉経前ではタモキシフェンは効果がありますがアロマターゼ阻害剤(AI)は単独では効果がありません。

患者さんの中(医者でもいますが)には、閉経前がタモキシフェン、閉経後はフェマーラなどAIと単純に覚えられている方も多いようですが、そうではありません。
閉経前であってもLH-RHの併用下にAIを使うことがあり、閉経後であってもタモキシフェンを使うことがあるからです。使い分けは必要かつ重要です。

閉経前の患者さんであっても、LH-RHアゴニスト(ゾラデックスやリュープリン)を使用すれば、閉経後と同じ状況になるので、アロマターゼ阻害剤(アリミデックス アロマシン フェマーラ)が使えます。

タモキシフェン VS アロマターゼ阻害剤(アリミデックス アロマシン フェマーラ)では、少なくとも再発抑制効果において、アロマターゼ阻害剤が優秀です。大体80点と100点の差があります。

それならばすべての患者さんがアロマターゼ阻害剤(閉経前であれば+LH-RH)でいいはずです。それならばタモキシフェンはもう消えているはずです。なぜタモキシフェン使用をするのでしょうか?
実際タモキシフェンを飲んでおられる方も多いはずですよね。

アロマターゼ阻害剤 Vs タモキシフェン は決着がついたとは言えないように思っています。それでもやはり進行したがんであれば閉経前でもアロマターゼ阻害剤を選択するように治療方針を立てます。閉経後でも骨折によって極端にADL(日常生活や活動)が損なわれてしまう年齢の方で、早期乳がんであればタモキシフェンのほうが骨が健康になると考えます。

閉経後でアロマターゼ阻害剤を選択していたとしても、5年以上再発なく経過され、骨粗鬆に由来する訴え、膝の痛みや、手指のこわばりが不快な方では、定期的な婦人科受診を前提として、タモキシフェンへの切り替えを提案していくと思います。

参考に閉経後の乳がん患者さんへのホルモン剤治療に関して 乳癌学会の乳癌ガイドラインを載せます。

閉経後の乳がん患者さんへのホルモン剤治療に関して 乳癌学会の乳癌ガイドラインを載せます。

推 奨

アロマターゼ阻害薬の投与を強く推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:強,合意率:100%(12/12)〕

タモキシフェンを2~3年投与後に,アロマターゼ阻害薬に変更することを弱く推奨する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:強,合意率:92%(11/12)〕

アロマターゼ阻害薬を2年投与後にタモキシフェンに変更することを弱く推奨する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:弱,合意率:83%(10/12)〕

タモキシフェンあるいはトレミフェンの投与を弱く推奨する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:強,合意率:83%(10/12)〕

乳癌学会の乳癌ガイドライン



ホルモン剤は主治医が、その患者さんと話し合いながら、その状況に応じて選択していくべきであって、盲目的に、閉経前がタモキシフェン、閉経後はフェマーラなどAIと第一選択することは、正しくはありません。


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