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乳がん治療におけるエンハーツ    抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の続き:::

エンハーツについて続きを書きます。
進行HER2陽性乳癌治療ではDESTINY-Breast03試験結果を受けて、 T-DXdがHER2陽性乳癌2次治療の標準治療として確立しました。 副作用の発現が多いため十分気を付けて使用する必要があります。投与法の工夫も必要と思われます。また、 DESTINY-Breast04試験の結果   HR陽性HER2-lowという新しいカテゴリーが治療戦略の中に入ってきました。ただ、HR陽性転移乳癌の治療が大きく変わるわけではありません。CDK4/6阻害薬を含めた内分泌療法が先行し、それが抵抗性になった段階で化学療法フェーズに移行する。化学療法フェーズにおいて、1次治療は、日本では例えばパクリタキセル+ベバシズマブの選択もあり、そのほかの化学療法という選択肢があり、その後にT-DXdを使うとよいということが明確になり、HR陽性乳癌のストラテジーの大きな変更にはなっていません。
 De novoの場合は最初に治療戦略を決める際にHRの発現と同時にHER2も見て、HER2-lowとなれば、2次治療のタイミングでT-DXdを使いにいくことになります。HR陽性の中で8割くらいはHER2-lowですので、かなり大きなポピュレーションがT-DXdの対象なります。
 繰り返しになるが、この試験は2次治療、3次治療のため、治療歴のない患者での1次治療から使うということにはならない。また今回の試験で全患者においても有効性が示され、HER2-lowであれば、トリプルネガティブ乳癌でも適応を認めざるを得ない。例えばPD-L1が陽性であれば、1次治療は、免疫チェックポイント阻害薬を使うことになるが、次の2次治療では、HER2-lowであればT-DXdが選択肢に挙がってくることになる。
 トリプルネガティブ乳癌に関して、海外ではTrop-2を標的とする抗体とトポイソメラーゼ阻害剤の複合体のsacituzumab govitecanが使われており、T-DXdとsacituzumab govitecanを比べるとどちらがいいのかというところは、まだリサーチクエスチョンとして残っている。日本はまだsacituzumab govitecanを保険上は使ず、T-DXdのほうが先に使えるようなった。またTrop-2に対するADCであるdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd/DS-1062)がトリプルネガティブ乳癌で開発中ある。

やはり最も大事なことはT-DXdの位置づけがHER2陽性とHER2陰性で異なることを認識してきちんと順番を守って安易な使用は慎むべきである。


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