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閉経後乳がんの発生は多くが閉経前です。その機序を解説します。
一般に環境要因に依存して発生する乳がんは閉経後乳がんであるとされており 、実際に日本において最近 急速に増加しているのも50歳代から60歳代の 閉経後乳がんです。
しかし その乳がんが発生した最初の時期は多くは30歳代後半から 40歳代と考えていいと思います。発がんそのものは閉経前なのです。
その機序を考えてみましょう
乳がんは乳管上皮から出来てきます。
乳房の乳管上皮を増殖させるためには エストロゲンが必要です。
女性の内因性エストロゲンはほとんど 30歳前にピークに達し その後は次第に低下していきます。 40歳代にはその低下は顕著となりやがて閉経を迎えます。
一方 標的細胞である 乳管上皮幹細胞におけるエストロゲンレセプター発現はエストロゲンレベルが下がると何とかしようとアップレギュレーションされます。
エストロゲンレセプターを介するエストロゲンの作用は細胞分化をもたらす 上皮細胞増殖因子 レセプター誘導などで乳管細胞増殖をもたらします。
エストロゲンレセプター発現促進によって 乳管細胞増殖が亢進するわけです。
前述の通り この時期にエストロゲンが急速に低下していくというホルモン 環境はエストロゲン陽性乳管上皮幹細胞にエストロゲン過敏反応を誘導します。
最近の日本人の体格の向上、 動物性脂肪の摂取 などでいままでより相対的に エストロゲンが体内に高値になり、誘導された エストロゲンを使って エストロゲン依存性の諸 反応が乳管上皮で促進します。
このような状況にある乳腺は多様な発癌刺激(未知なしかし多様な)によって傷ついた 幹細胞がエストロゲン依存性に増殖し エストロゲン依存性乳がんができます。
こうして出来た乳がんが10年ほどたって診断される大きさになります。
50-60歳代の閉経後ホルモン陽性乳がんが出来てくる機序を説明しました。エストロゲンに過敏症なホルモン陽性乳がんですのでエストロゲン枯渇状態にするホルモン治療が非常に良く効きます。
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