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乳がん患者さんの歯科受診の重要性
前回の続きです。
乳がん患者さんは、治療開始前の歯科受診は非常に大事です。
特に先に抗がん剤をする人では早期の治療が必要です。
私の病院の歯科では抗がん剤治療を施行する場合、治療前に調べて虫歯がある場合、治療していたら時間がかかるからと、全部抜歯します。もう一度言います若い人でも全部抜歯します。傷がすこし落ち着いたらできるだけ早く抗がん剤開始です。
私の患者さんでも、歯科受診の話をすると、「先生、虫歯くらい我慢しますから、がんの治療を優先してください」そう言われる方も多いです。皆さん痛みなら我慢する、そう思っておられる。でも怖いのは痛みではないのです。
抗がん剤をすると免疫が落ちます。感染に弱くなる。齲歯、つまり虫歯は細菌感染によって引き起こされます。歯髄は骨髄につながっています。重症化すると骨髄炎になる可能性があります。虫歯がなくても歯槽膿漏があれば細菌が関与しています、ですので同様です。
歯は頭蓋骨に埋まっています。つまり骨髄炎は頭蓋骨に起こる。そう細菌性髄膜炎、そして脳炎になる可能性もあるのです。事実死亡例もあります。ですので私の病院では抗がん剤が必要な患者さんに口腔管理が徹底されているのです。
実は歯は細菌の住処であり、口腔内は歯がなくなると清潔が保たれやすくなるのです。
抜歯したばかりでは歯髄がむき出しになり、感染に弱くなっている状況で、抗がん剤の導入によって免疫が急激に下がります。
抗がん剤は最初の1回目がもっとも白血球が下がりやすく、生体の環境が激変するため、何が起こるか予想がつきにくいのです。
私は自分の患者さんが治療が始まるまでの待ち時間に対して、不安を訴えられるたびに歯科治療の時間があってよかったとお話ししています。
皆さんも、もしその立場の方は受診しておきましょう。損はないはずです。
そしてその立場にない方も頭の片隅に置いておいてください。乳がんに限らず、がんの治療の際には役立つ知識です。
歯の衛生管理は日ごろから気を付けましょう。私は歯科に行って歯石をとってもらうのは趣味にしています。髪の毛を切るペースできれいにしましょう。
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