乳がん治療は科学なのか?
そもそも 医学とは 科学なのでしょうか?
そんなの当たり前と思われるかもしれませんが考え始めると意外と難しい問題です 。
人間は生物の一種で 生物学が適用されるのはもちろんですが 人としての私たちは昆虫やラットにはないと思われる 複雑な感情 思考 言葉 社会活動も特別な存在でもあります 。
例えば 分野は違いますが、うつ病はセロトニンの欠乏という 脳の化学物質の振る舞いだと説明されています。しかしそれのみで説明できるはずもありません 。
日頃の家族や仲間との人間関係 理想と現実のギャップなど人間らしい 苦悩を及ぼす影響は大きく それは認知行動療法という治療のエビデンスがあるからも明らかでしょう 。
科学的研究 を 一般的な意味でとらえると物理学 化学のようにあらゆる場であらゆる 対象に対して再現可能な物事の仕組みを見つけることが理想となります。 しかし そのような仕組みは 雑多な アーチファクトを取り除いた 抽象的な姿にならざるを得ず 多様性の大きな人間を対象とする医学にそのまま適用すると、人間の人間らしさを無視し 疾患を持つ生物として捉える 視点が強調される危険も少なくありません。
科学的な手法で臨床試験は行う必要があります。しかしやはり医学は特に臨床医学は科学ではないような気がします。
臨床医として働き始めるとすぐに本当にすぐに 現代医学の限界点を目の当たりします。臨床医のできることは限られており 限界点がそこら中に転がっており 全て未解決のフィールドです。臨床医は全員,時期は違えど 現代医学の無力感に固まってしまうはずです。感受性の高い人はそこで臨床医をドロップアウトします。
30年以上臨床医をしてきて30年前の限界点を乗り越えることが出来たのは、ほんの数項目です。がんは相変わらず、ある進行転移点に達すると不治の病です。
また、臨床医は経験学である要素が非常に大きく、ある程度の症例 臨床年数を経験しないと何物にもなれません。
科学ならすぐに答えが得られるはずです。
同じ環境でずっと働いていたとして、5年目の医者 10年目の医者、20年目の医者 さらに三十年目の医者では同じ患者さんを診ても見える世界が全く違います。治療方法の発想も違ってくるし長い目で診ることが出来ます。
経験が長くなるほどその患者さんの将来が見通せるようになってきます。またその患者さんの社会的背景が良く見えるようになります。
現代医学の限界点が見える故に無駄な治療をしなくなります。(若い先生には理解してもらえませが、、、)またその患者さんの社会的背景に合わせて治療をしていくようになります。社会ソースの使い方をアドバイスできます。
最新の検査 治療と言われて出てきた検査法、治療法の未熟な部分に眼が行きいつもため息が出ます。
臨床医学は経験学であるがゆえに医者選びは非常に重要なのです。
誠実な主治医に巡り合えることを願っています。