ドバミミズの飼育方法
はじめに・この記事の背景情報
ドバミミズはすぐに死ぬ。溶ける。たくさん捕まえてきても、長期保存は難しい。環境が安定する屋内で飼育すると家族に怒られるし、外で飼うと暑い日に死ぬ。もっともドバミミズを使いたいはずのウナギ釣りの最盛期である夏に飼育難易度が跳ね上がる。このような課題をクリアしたドバミミズ飼育方法の情報を提供しようという試みが、筆者のドバミミズ飼育シリーズ記事及び当記事である。
ドバミミズは乾燥しても、水を入れすぎても死ぬ。夏になると死ぬ。買ってきた腐葉土に入れると死ぬ。飼育箱に密に入れると死ぬ。ネットで検索した方法で飼っても死ぬ。生ごみを与えても食べずに死ぬ。これらの問題はなぜ起こるのか?という考察を行ってきたのが、これまでのシリーズ記事である。
ドバミミズに関する考察記事の紹介
当記事の内容は、基本的に過去記事で考察した課題を解決するドバミミズ飼育方法を考案して実施するものである。このため、以下の考察記事を読み飛ばさずに隅から隅まで読めば、飼育環境に工夫を加えることで、読者諸兄それぞれが、ここで挙げた課題を解決する飼育方法にたどり着くことができるだろう。興味本位ではなく当記事の手法でドバミミズを本気で飼いたいと思っておられる方は、筆者のドバミミズnote記事を全て読んでおいてほしい。
夏になるとドバミミズが死ぬ原因、水浸しにするとドバミミズが死ぬ原因、大きいミミズほど高温に弱い原因、市販の腐葉土に入れるとドバミミズが死ぬ原因などについては、以下の記事で考察している。
ドバミミズにはどのような餌を与えればいいのか、シマミミズとドバミミズの食性はどのように違うのか、ということについては以下の記事で考察している。
ネット検索で出てきたドバミミズの飼い方を真似してもうまくいかないことが多いのはなぜか、どの情報を参考にすればいいのかという課題について筆者の考えを述べているのが以下の記事である。当シリーズ考察記事で一番重要な記事はこれであると筆者は考えている。
ドバミミズを飼育箱に高密度に飼育することがなぜ難しいのか、ということを考察した記事は以下である。
水の中ではミミズが死んでしまうのか?という疑問に答えるために行った実験の記事は以下である。この実験もまた、当記事で述べる飼育方法に対する多くのヒントがある。
当記事の飼育方法で得られる副次的な効果
上記の課題の解決方法について、筆者が考案したミミズ飼育系では、飼育箱内の温度上昇を抑え安定させる効果も兼ね備えている。一石二鳥というやつである。この効果は上記の諸課題の解決へのアプローチの結果であり副次的なものではあるが、偶然ではなく筆者が意図的に設計したものである。この部分だけは、過去記事のドバミミズ飼育考察記事で触れていない大きなポイントだと言えるだろう。以下に、飼育箱の内部および上部にデータロガー付き温度計を設置し、24時間にわたり温度を測定した結果のグラフを示す。
グラフは、2024年7月19日7時から、7月20日7時までのミミズ箱内外の温度推移である。黄色が箱の内部の温度、濃いオレンジが箱の外の温度。当日、アメダスでは最高気温33℃だった。使用した温度計は以下のものである。
完全に日陰とはならない建物北東向きに飼育箱を置いたので、朝8時過ぎから11時前までは日光が当たり、箱外の温度が35℃以上まで上昇している。その後、日陰に入っても夕方17時ごろまで箱外は30度を超えているが、箱内は安定して30度未満を保っていた。氷や保冷剤、エアコンは使用していない。
筆者の狙ったとおりである。さらに言えば、これは箱内の土の上に置いた温度計のデータであるが、この飼育装置では土の中はもっと温度が低くなるように設計してあるので、たとえ猛暑日であっても高温が原因でドバミミズが死ぬ心配はないと言っていいだろう。
当記事の方法でドバミミズを飼育した結果
ここでは、実際に当記事の手法で行った2023年の飼育実験の結果を示そう。捕まえてきたドバミミズは、竹藪の葉を除けたら土を掘らずとも居るような表層性のフトミミズ(ヒトツモンミミズに似ているか、あるいはそのもの)である。
このミミズを100匹捕まえてきた。画像を見ると分かるが、捕まえてきたミミズは這い出してコンクリート上にいたものを含むため、乾燥しかけて砂粒のついているものが混じっている。長期保存予定のドバミミズが豊富にとれる場合は、このようなミミズは死にやすいので避けよう(筆者はこの時100匹を捕まえるのに大変苦労したため、このようなミミズが混じってしまった)。
これらのミミズ100匹を、(実験なので余計なものをできるだけ入れないために)カルキ抜きした水でジャブジャブと洗った後、飼育箱に入れる。
このようにして導入した100匹のミミズを、当記事で述べる実験用の飼育箱で2023年6月15日から2023年8月31日までの2か月半の間飼育した結果、84匹の生存が確認された。全部で16匹は落とした計算になるが、死んだミミズが目視で確認されたのは最初の1週間のうちであり、前述のとおり、この間死んだのは採取時にすでに傷んでいたミミズだった可能性が高い。
8月31日の全捜索前のミミズ箱の様子をgif動画にしたものが以下である。表層を少しなでるだけでこのようにドバミミズが見つかるくらいに、自然体かつ元気なのが確認できる。
2023年、飼育期間中のアメダスのデータではこの地点の真夏日(最高気温30度以上)は6月後半に5回、7月に24回、8月に29回の合計58回。猛暑日(最高気温35度以上)は7月に5回、8月に10回の合計15回あった。近年としては猛暑の部類に入る過酷な夏だったと言えるだろう。
実験後日談 ※重要
8月末まで8割生き延びたミミズたちであったが、なんと9月末にはこのうち8割以上が、10月末にはすべて死んでしまった。しかしこれにはわけがあり、今回飼育箱に放りこんだ種とみられる「ヒトツモンミミズ」について少し調べればある程度納得できる結果だと言えそうである。こうしたことも踏まえて、飼育箱に入れるべきミミズと速やかに釣りに使うべきミミズの選別についても、当記事後半では述べていくことにするので残さず読んでほしい。
具体的な飼育方法
ここからが本題、具体的なドバミミズの飼育方法について詳しく述べていこう。ドバミミズ飼育は発泡スチロールの箱で行う。筆者が実験に用いた箱は745mm×380mm×290mmで容量30Lのものである。
この箱に土を入れて暗所に置くだけではない。箱に穴開け加工を施し、いくつかの器具を配置、オリジナルブレンドの飼育床土を投入して飼育系は完成する。温度を下げ、酸欠を防ぎ、種々の土壌微生物を発生させ、ミミズの老廃物の蓄積を防ぎ、土壌環境を安定させるための工夫を施すのである。
飼育箱の加工と準備
飼育箱には2種類の穴をあける加工をする。ひとつは、飼育箱の天板にあける通気穴である。
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