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選挙の時は選挙公報を見てきちんと投票しよう@クルマを1台減らして豊かな生活を手に入れよう外伝その1


プロローグ

さて現在東京都知事選挙期間中ですが56人もの立候補者が現れ、中々な盛況のようです。このマガジンは対象が地方都市在住の方ですので、あまりいないと思いますが、もし選挙権のある方は下記を参考にどうぞ!!

候補者情報@東京都知事選挙特設サイト(選挙公報もあります)
期日前投票所一覧@東京都知事選挙特設サイト

高崎市が運営するコミュニティバスぐるりん

さてこのマガジンとは決して相性の良い話ではないと知事選挙の話を出した理由は地方都市の場合、自治体が公共交通に関わるケースが多く公共交通を考える上で無視できない存在だからです。一番わかりやすい例としては上の写真の様なコミュニティバスが挙げられます。

また最近では単純に自治体と言う話ではないですがJR京葉線の通勤快速の問題も朝時間帯の快速・通勤快速全廃のダイヤ改定に対し、沿線の自治体首長たちが一斉に反発し、JRが改正発表後に一部の快速を復活させ、2024年9月にダイヤ改正を行い、更なる快速の増発を行うとの事です。

資産は私のポケットにお金を入れてくれる
負債は私のポケットからお金をとっていく

ロバートキヨサキ著「金持ち父さん貧乏父さん」より

お金や節約に関して詳しい方だったら上の言葉を聞いたことがあるかもしれません。良く節約系のWEB記事で出て来る負債にあたるものの代表格はクルマと家となりますが、電車やバスに代表される公共交通は資産と言えるのではないでしょうか?公共交通が充実していれば通勤を公共交通で行う事でクルマのコストを低減できますし、また新幹線に代表される高速な鉄道は通勤可能な地域を広げてくれ、自分の住む場所の価値を上げてくれます。言って見ればポケットにお金を持ってきてくれる存在という訳です。
そして地域の自治体にはこの地域の資産である公共交通を直接的・間接的に維持・整備していくという役割があります。
ここでは外伝という事で20年ほど前に起こったある地方都市のローカル私鉄電車を巡る騒動から地域と公共交通について考えていきたいと思います。

赤字のローカル私鉄電車廃止で地域の人達が負った負債~京福電鉄事故と電車廃止~

その経緯から地方都市の電車の価値を多くの人に考えさせたえちぜん鉄道@福井駅

さてある地方都市のローカル私鉄電車と言うのは今はえちぜん鉄道と言われている福井県福井市の鉄道です。詳細は下記のリンクも参照してください。

半年間に2回もの正面衝突事故を引き起こした事態を重く見た国土交通省中部運輸局は、京福電気鉄道福井鉄道部に対して2回目の事故発生当日に全線の運行停止とバス代行を命じ[9]、同年7月19日には鉄道事業法第23条に基づく「安全確保に関する事業改善命令」を発出した[10]。なお、全線運行停止命令の上、事業改善命令が鉄道会社に出された事例は、2024年現在でも本件が唯一である。

しかし同社はこの事故の5年以上前から、福井鉄道部単独では事業改善を行う原資も確保できない状態に陥っており、沿線住民に全線廃止を含む提案を繰り返し行っていた。事故理由の根幹には、この財政状態で積極的な車両更新や信号系統改良などに対する投資自体に関し、同社の鉄道事業全体の収支を考えても、基幹株主などの支持が得られない状態という現実があった

同社福井鉄道部では、以前から合理化のため支線の廃止およびバス転換を行っていたが、1992年平成4年)に越前本線の東古市 - 勝山間と永平寺線の廃止・バス転換を表明したのが最初である[11]。これに関しては地元紙に全面広告を打ち出したこともあった。一方、豪雪地帯であり積雪時のバス代行輸送に困難な事情がある当地ではその提案が受け入れられず、むしろ高額な運賃が乗客減少の要因であるとする収入減少に対してトレードオフの関係を指摘する意見も強かった。そのため、従来から同社と沿線自治体との間には軋轢が生じていた

京福電気鉄道越前本線列車衝突事故@wikipediaより

このえちぜん鉄道、もともとは京福電気鉄道と言う私鉄企業が経営している鉄道でしたが、2001年に半年間で2回もの正面衝突事故を起こしてしまい、2回目の事故の当日に国土交通省から全線運行停止を命じられてしまい、運行を停止します。この様な事態に陥った背景には乗客減少で会社側として車両更新や信号系統改良など安全に対する投資する余裕がなく、沿線自治体との関係も良くない為だったと言えます。その為に最終的には2001年6月の事故、運行停止後運行再開することなく正式に鉄道が廃止されました。

しかし、2001年の冬季になって、積雪時に鉄道輸送のない状態では、京福バス(当時)が代行バスの運行を行おうとしても、鉄道輸送していた分に加えて駅・学校までの自転車等での通勤・通学分までの自動車交通転移負荷がより大きい方向に出てしまい、幹線道路の混雑に拍車がかかったため、終日無ダイヤ状態に陥り、バスのみでは通学はおろか、マイカー族の通勤ですら困難になることが明らかになった。これに関しては、中古車を委譲してもらったのみならず、他系列の中古バスまで投入するなど、京福電気鉄道側としては万全の対策をはかった体制をとった。同じ福井県内を走る私鉄である福井鉄道では問題が生じなかったことから、その差異は顕著であった

京福電気鉄道越前本線列車衝突事故@wikipediaより
図:運行休止による交通手段の変化@国土交通省資料えちぜん鉄道の経験 ①より

さて乗客減少による赤字で路線廃止となった京福電鉄ですが、そのバス転換は上手くいきませんでした。鉄道利用者の4割以上がクルマに移転し特に降雪の時期には道路交通がマヒ状態になりました。注目したいのは15%が自動車送迎になっている点です。

代行バスに不満を抱く人々は、次々にマイカーへと切り替えました。ただし高校生は自分では運転できませんから、ご家族が送り迎えすることになります。国道416号線では、これらの車と代行バスで大渋滞が発生し、従来のマイカー通勤者まで遅刻するはめになってしまいました。~中略~

 勝山周辺から福井市内に進学する中学生も多かったのですが、通学手段を失ってしまったために、希望校の受験を泣くなく諦めたという話も耳にしました。

ローカル線ガールズP39より

自動車での送迎と言えば運転するのは成人した家族、言うなれば高校生たちの両親になります。当時はまだ正社員の共働きは多くなかったかもしれませんが今は正社員同士の共働きも多く、最悪どちらかが時短勤務になる等勤務時間に制限がかかり、大きく収入が減少するというのも問題になると考えられます。また進学先の選択肢が狭まるという問題も当然出て来ると思われます。

日本百名城の1つであり県庁などの地域政治の中枢である福井城を築いた(北庄城を改修)結城秀康公の銅像

纏めると京福電鉄と言う赤字ローカル電車の廃止で地域の人達が負った負債は以下になります。
・少なくない数の人が通勤用にクルマを新たに購入せざるを得なくなった
・電車からバスへの切り替えで通勤・通学費の増加
・冬場を中心とした渋滞による通勤・通学時間の増加
・通学する子供の通学の為の送迎時間
・子供の進学先の選択肢の縮小
良く地域の負担の軽減のために鉄道を廃線にすると言う考え方がありますが、それは地域の人達に少なくない負債を押し付ける事である事をこの京福電鉄廃線で起こった出来事は教えてくれます。

ローカル電車の復活で地域の人達が取り戻した資産~えちぜん鉄道開業とその後の投資~

2002年平成14年)9月17日 えちぜん鉄道設立[5]
2003年(平成15年)2月1日 京福電気鉄道から越前本線・三国芦原線を譲渡価格20億1000万円で譲り受ける[15]
7月19日 勝山永平寺線福井 - 永平寺口間、三国芦原線福井口 - 西長田間で特別列車運行[16]。翌日7月20日から正式営業再開[5][16]
8月10日 三国芦原線全線が正式営業再開[5][7]
10月19日 勝山永平寺線全線が正式営業再開[5][7]
2016年(平成28年)3月27日フェニックス田原町ライン」として、三国芦原線と福井鉄道福武線との相互直通運転開始[10]

えちぜん鉄道@Wikipediaより

そしてそんな中廃線の1年後沿線自治体を中心に第3セクター設立して京福鉄道から鉄道資産を譲り受け2年後に鉄道を復活させました。

国土交通省資料えちぜん鉄道の経験 ①より

その際にただ復活させるだけでなく高騰した運賃を値下げしたり、新駅を設置したり、終電を23時過ぎまで延長したりと使いやすい鉄道に再生する形で復活しました。

2016年から福井鉄道の路面電車との直通を開始@田原町駅

また開業後も他社の路面電車との直通を開始するなど継続的に利便性を向上させるための投資を続けています。

勝山市資料より

その結果、減少を繰り返した利用客数は増加傾向となり、かつて乗客減少により最低限の安全投資すらままならずに重大事故を繰り返した路線とは思えないほどの復活を遂げました。

ガソリン高騰 車から公共交通へ えち鉄など乗車大幅増@福井新聞1/18より※2008年
 ここ3カ月のえち鉄の通勤定期利用者数は、10月は前年同月比5%増だったが、レギュラーガソリンの店頭価格が7円程度引き上げられた11月は9%の伸び。150円の大台に乗った12月は8%増加した。月別の通勤定期利用者数に月の日数を掛けた輸送人員はそれぞれ4万人弱で、いずれも前年同月より2000―3000人増えている。

東京的公共交通を目指すと言うこと~福井の公共交通健闘のニュースから~より

またその中身も通学だけでなく通勤の利用も増えているようです。こうして見るとえちぜん鉄道として復活した電車が地域の人にもたらした資産は以下の様になります。
・少なくない数の人がクルマ以外で通学できるようになった
・バスからの切り替え、運賃値下げで通勤・通学費の減少
・渋滞の軽減と電車によるスピードアップによる通勤・通学時間の減少
・通学する子供の通学の為の送迎時間の減少
・子供の進学先の選択肢の拡大
この3セク鉄道が20年以上継続し利用者が増えている事がこの資産の大きさを何よりも明確に語っているように感じます。

高崎・前橋・盛岡多くの地方都市で行われる地域資産としての公共交通への投資

高崎市内の信越線豊岡新駅設置予定地、付近の高崎経済大学アクセス用の新駅として整備される

高崎市との「公共交通を軸とした都市の持続的発展」に関する 連携協定の締結について@JR東日本

鉄道の廃線後行政が中心となって第3セクター鉄道を作って鉄道を復活させたえちぜん鉄道の例は少し極端ですが、それでも鉄道会社と行政が連携して新駅を設置して地域の交通事情改善を目指すなどの取り組みは多くの地域で行われています。上は高崎市の豊岡新駅の設置予定地、付近の高崎経済大学への通学や、工業団地への通勤、また逆に周辺から高崎市中心部への通勤・通学などの改善が期待されています。

群馬式上下分離で維持管理の負担を軽減し30分間隔での運行やサイクルトレインなど積極的な誘客策を見せる上毛電鉄

また道路など他のインフラ同様に設備の維持・管理を行政が責任を持ち、鉄道会社が積極的に利便性向上に努力させるための所謂上下分離と言う施策を行う地域もあります。上の写真の上毛電鉄は群馬式上下分離と言うやり方で維持管理の負担を行政と分担する事で鉄道会社の負担を軽減し、自転車で電車の乗り入れるサイクルトレインの導入など積極的な誘客策を行っています。

公共交通に投資するのは運営企業、行政だけでなくショッピングセンターも@イオンモール高崎

前潟駅(まえがたえき)は、岩手県盛岡市上厨川前潟にある、東日本旅客鉄道(JR東日本)田沢湖線の駅である[6][5]。
盛岡市による請願駅であり[7]、総事業費約11億円は市負担を基本に、国からの交付金やイオンモール側からの企業版ふるさと納税を活用した寄付金2億円を含んでいる[8][9]。

前潟駅@Wikipediaより

また行政そのものが投資主体になるのと同時に国の補助金を活用したり、投資意欲のある民間企業と交通事業者を結び付け、単にお金を出してもらうだけでなく、利用促進にも結び付けるのも役割と言えるのかもしれません。上の引用は岩手県盛岡市に2023年3月に開業した田沢湖線前潟駅のものですが、利用者数見込みは1700人と見込みとは言え秋田新幹線停車駅を上回るものがあります。この様に多くの地域で様々な主体を巻き込み、地域の資産である公共交通に投資し、地域を豊かにするための動きは様々な地域で行われている訳です

悪いこと探しよりも政策を見て政治家を知って投票しよう

何かと話題になる都知事選の掲示板、投票の際は政策をきちんと調べて考えてどうぞ

さて今回の都知事選挙過去最高の56人の立候補者が現れ、ポスターや政見放送で個性的なパフォーマンスをする候補、政党が目立った結果、様々な物議を醸しだしています。ただ個人的には○○はなっていないなどともっともらしいことを言う前に選挙公報を見て興味の沸いた候補者のHPを調べてその背景にあるものを深堀して自分にとって最も望ましい、あるいはマシな政治を行ってくれそうな候補者を探す基本的な努力をしていった方が生産的ではないでしょうか

候補者情報@東京都知事選挙特設サイト(選挙公報もあります)
期日前投票所一覧@東京都知事選挙特設サイト

福井市には路面で車もあります。@福井鉄道

さて最後に私なりに候補者のどんなところを見るかについて書いて行きます。まず前提条件としては交通に関して理解しきちんと出来るような完璧な候補はいる可能性は低い前提で考えます。その前提で考えると
①地域の事を理解し、その代弁者となりうる候補
・例えばバスの減便など地域にとって不利な変更が行われた際に重要なのはまずは声を上げ、議論の俎上に載せる事だと思います。これは政治の場だけでなく、運営企業への陳情と言う形をとる事もあると思います。その際に重要なのは交通や政治の知見は外部からも調達可能だが地域の視点はやはり地域からしか出せない点です。優れた交通の専門家も「地域の高校からどれだけ東大合格者を出しているか」なんて情報は分からないし期待すべきではないという事です。
②考え方に柔軟性がある候補
・例えば京福電鉄廃線の際の子供の送迎の問題を考えた際に当然「奥さんが時短勤務すれば正社員続けられるし良いじゃない」と言った反論も考えられます。ただ推奨は決してできませんが35年ペアローンで住宅購入したみたいな場合は少しの収入減少が致命傷になるケースもあり得ます。そう言った事をきちんと理解した上で対応する必要があります。

こんな感じでしょうか?確かに大変そうですが、あくまで1つの考えという事でご容赦ください。また完璧に満たせる候補はいないという前提で考えて見るのが良いかと思います。

おわりに

昨年の大河でも大活躍のお市様@柴田神社

如何だったでしょうか?外伝という事で少し毛色が違う感じですが豊かな生活を築き、楽しんだという事である意味守る話を書いてみました。わかりづらい面はありますが、地方の公共交通において自治体の頑張りが重要なので選挙の際は真面目に考えて投票したほうが良いという事をご理解いただければ幸いです。それではそれではクルマを1台手放して豊かな生活を手に入れる為これからも頑張っていきましょう。




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