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#59 - Toss A Coin To Your Witcher (トス・ア・コイン・トゥ・ユア・ウィッチャー) - 【 Dan Vasc を聴こう】

Happy New Year!!!  (謹賀新年)


2025 年の1曲目は、ポーランドの作家  Andrzej Sapkowski  (アンドレイ・サプコフスキ) のファンタジー小説が原作のドラマ、The Witcher  (ザ・ウィッチャー) シリーズの1曲である。


2019 年のクリスマスの数日後、その日の仕事を終えてちょうどスタジオを出ようとしていたとき、30 歳の  Dan Vasc  (ダン・ヴァスク) は初めてこの曲を耳にした。

その途端、頭の中にメタルバージョンが流れてきたという。

「世に出たばかりのこの曲を、誰もがカバーしたがるだろう。急がなければ!」
と思ったダンは再びスタジオに戻り、それから5日間、ただひたすら動画作りに取り組んだ。

キリスト教徒にとってクリスマス前後の休暇は、家族や親しい友人達と過ごす大切な期間である。

花火が鳴り響く大晦日、パーティでみんなが談笑するのを聞きながら、トイレ・入浴・睡眠以外はスタジオにこもりっきりだったダンは、時に涙が出たそうだ。

失うものもなければ、独身で面倒を見るべき家族もいない状況を最大限に利用して、
「今ここでやっていることは、それだけの価値が絶対あるはずだ」
と、自分に言い聞かせながら作業に勤しんだ。

この動画が拡散する予感があったため、歌の後のトークには新規視聴者に向けた歓迎の挨拶と自己紹介も入れた。

そして、2020 年1月3日。
「あんな短期間であれほどの完成度は初めてだった」
と語る、ちょうど 200 番目の動画を YouTube に投稿した。


大変なことが起こり始めたのは、その翌日からである。

視聴率が一気に跳ね上がり、投稿前には7万人だったチャンネル登録者数が、あっという間に倍増したのだ。

現時点での視聴回数は、ダンの動画の中では最多で、3千万回を越えている。

少し前には YouTube からの撤退が頭をよぎったこともあるそうだが、この大ヒットを契機に彼のミュージシャン人生は一転、大成功への扉が開けたのである。


後日、ファンから、
「突然の成功をどう思う?」
と聞かれて、
「突然? 俺はこの成功のために、10 年間ずっと努力し続けてきたんだ。そう言われるのは心外だ」
と、かなり不服そうだった。

「目に見える成功は、単に
"a part of the iceberg" (氷山の一角)
でしかなく、そこに至るまでに流してきた血と汗と涙は、人には見えていないんだ」

未来の成功を強く信じて 10 年間ひたすら続けてきた努力には、本当に頭が下がる思いがする。


ところで、このメタルカバーには約3万件ものコメントが寄せられているが、中には、
"That's not how it happened."  (オリジナル曲と違う)
という否定的なものもあった。

それに対するダンの返答は、
"Respect doesn't make history."  (敬意を示すだけでは、歴史は作れない)

実はこれは、The Witcher  (ザ・ウィッチャー) シリーズの登場人物で、まさに今回の曲を歌った吟遊詩人  Jaskier  (ヤスキエル) の台詞である。

機知に富んだ小気味よい切り返しに、ファン達は、
「これ最高!」
「マジで、パソコンのキーボードに飲み物を吹き出しちゃった」
と反応していた。





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