#4 【日本人よ、Dan Vasc を聴こう】 Beyond Belief (ビヨンド・ビリーフ)
所属するブラジル軍 (#2へ) を除隊しようとしていた頃、Dan Vasc (ダン・ヴァスク) は自分の将来を決めあぐねていた。
両親は4年制ビジネススクールへの入学を望んでいたものの、ダンとしては、
「本当にしたいことではないし…」
と、あまり乗り気ではなかった。
そんな 2009 年のある夜、人生を変える大きな転機があった。
1970 年代から活動しているアメリカのクリスチャン・ロックバンド Petra (ペトラ) の John Schlitt (ジョン・シュリット) が歌う Jekyll & Hyde (ジキル & ハイド) を聴いた瞬間、
「この歌い方を学ばなければ」
と強く思った。
それから何時間もくり返しその曲を聴いたそうだ。
ビジネススクールに通いながら、ダンはボーカルレッスンを受け始める。
グループと個別を併せてトータル 10 年は続けたらしい。
また音楽学校にも通い、現代歌唱・古典歌唱・ピアノ・音楽理論・作曲を学んだ。
ビジネススクールを2年修了した頃、
「このままではどちらも二流のままだ。音楽一本に絞ろう」
と決意し退学。
「音楽業界は難しいという "神話" もあるが、人類史上音楽が社会的娯楽として常に存在してきたことを考えると、挑戦するのは安全な賭けだと思えた」
らしい。
その同じ週には、地元の生徒へのボーカルレッスンとセッションワークで生計を立て始めている。
両親には退学の許可を求めるのではなく、
「これが自分が本当にやりたいことで、まずは自分、ひいては両親をも幸せにするために必要なことだから」
と、覚悟を伝える形をとったという。
それから紆余曲折を経て、2020 年 11 月。
ダンは、ジョン・シュリットと、ペトラのキーボード John Lawry (ジョン・ローリー) との共演を果たす。
その当時 70 歳のシュリットと何度かやり取りしたのだが、彼はいつでもエネルギッシュで陽気な人だったという。
自分の歌手人生を決定づけるきっかけとなった人物と一緒に歌うなど、誰にでもできる経験ではない。
「今までの音楽キャリアの中で一番幸せな瞬間だった。自分が生まれる前から彼らが音楽活動をしていなかったら、今のダン・ヴァスクは存在しない」
と、動画に自らコメントしている。
因みに、"beyond belief" とは「信じられないほど」という意味である。
※ ギタリストの VictorTheGuitarNerd に関しては、#12 へ。
🔷Beyond Belief … Petra (ペトラ) が 1990 年に発表した楽曲。
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