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オレが観たホラー映画一覧(2020/08/21時点)

レンタル屋さんで「ホラー」の棚にありそうなもの、配信で「ホラー」にジャンル分けされてそうなものを挙げてみました。

各タイトルの予告編のYouTubeのリンクをつけてみました。日本公開版が見つからなかったものについては海外版の予告編のリンクになっております。悪しからずご容赦下さい。

皆様のホラー映画鑑賞の一助になれば幸甚です。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(Night Of The Living Dead)

ジョージ・A・ロメロが作った現代ゾンビ映画の基礎であり金字塔。1970年代当時のアメリカの社会問題やタブーにも果敢に挑戦したサスペンスドラマ。”Night”から始まり、ゾンビの名を世界中に知らしめた”Dawn”、そして”Day”の三部作はどれも傑作。三作ともにアイディアの斬新さ、社会性、娯楽性を併せ持つ傑作揃いですが、やはりこの作品はもはや一つ「発明」と言って良いでしょう。やっぱりゾンビは走っちゃダメなのよ。

エクソシスト(The Exorcist)

70年代オカルト映画ブームの象徴。もちろん悪魔祓いが主題なんだけど、サスペンスドラマとして極めて秀逸なので、ホラー苦手な人にこそ見て欲しい。で、よく観てみるといわゆる「(キリスト教的な観点での)悪魔祓い」にしては時々妙な、というか不自然な箇所もあり、それが結局何なのか解決されないまま映画が終わってしまうところにもまた怖さが宿っている。それにしても当時10歳そこそこの子役のリンダ・ブレアのあの「憑かれ」演技は天才的、というか、まだ年端もいかない女の子にあの演技を要求するウィリアム・フリードキン監督の鬼畜っぷりが一番悪魔的だというお話もある。

悪魔のいけにえ(The Texas Chainsaw Massacre)

「異常も日々続くと正常になる」という何かのキャッチコピーがありましたが、結局倫理観なんて多数決なんだよな、というのを若いころに強烈に印象付けられて以来、長らく個人的一番「怖い」映画。純粋な悪意というか、無邪気な邪気というか。あとホラー的先入観でいくと、クライマックスは実は昼間(というか夕方近く)ってのも何気にすごい。トビー・フーパー監督の作り出した映像の匂いたつような生々しさは芸術。で、実際にオリジナル・フィルムはニューヨーク現代美術館に所蔵されているとのこと。

遊星からの物体X(The Thing)

(本作)

(リメイク)

当時のロブ・ボッティンの特殊効果が凄過ぎて、映画全体の印象を染め上げてしまっているが、密室で互いに疑心暗鬼になっていく人間模様を描いたテンションの高い心理ドラマとしても十分面白い、ジョン・カーペンター監督の代表作の一つと言えるでしょう。とはいえ、やはりあの心臓電気ショックのシーンは伝説のシーンであることは間違いありません。どっから出てくるんだ、そんなアイディア(褒め言葉)。元々は「遊星よりの物体X」という1951年の映画のリメイクですが、そちらの「X」さんは割とわかりやすい宇宙人然としたお方に見えました。でさらに本作の前日譚的として同じ意匠を継いだ「遊星からの物体X ファーストコンタクト」は今様CGバリバリながら、本家へのリスペクト感高しで割と好感が持てます。

死霊のはらわた(Evil Dead)

(本作)

(リメイク)

山小屋1件と男女5人というシチュエーションだけでサム・ライミが作り上げた傑作スプラッターホラー、というかスラップスティックホラー。描写が激し過ぎて笑えてしまう、血みどろトムとジェリー。そういったコメディ色は続編の「死霊のはらわた2(Evil Dead 2)」、そして三作目の「キャプテン・スーパーマーケット(Army Of Darkness)」と作を追うごとに強まっていくことになります。一方、リメイク版は最近のリメイクの傾向に倣い、笑いなしのシリアスでひたすら痛い系ホラー。緊張感のある結構よく出来た作品でちょびっとオマージュ的なシーンもあって楽しめますが、やはりそれだけオリジナルは偉大、ということでひとつ。

シャイニング(The Shining)

オッサンが徐々に如何に狂っていくかをひたすら丁寧に描写する映画、といってしまうとなんですが、本当に何か超絶的な存在によって巧妙に狂わされていく感じがじわじわと怖い。で、こういうのをジャック・ニコルソンに演じさせる訳で、そりゃスゴイに決まってる。スタンリー・キューブリック監督の撮る画はシンメトリーを意識していて幾何学的に美しく、それが一層出来事の邪悪さを強調しているよう。 ちなみにスティーブン・キングの原作とは内容がだいぶ異なるようで、キング御大は本作を評価していないそうです。(というエピソード自体がスティーブン・スピルバーグ監督の映画「レディ・プレイヤー1」でネタにされていました。)2019年に続編といえる「ドクター・スリープ(Doctor Sleep)」が公開されてます。

キャリー(Carrie)

(本作)

(リメイク)

ホラー小説の帝王、スティーブン・キング原作をブライアン・デ・パルマ監督が映画化した傑作中の傑作。いじめられっ子の報復物語なので、そこに至るまでのいじめられっぷりが酷ければ酷いほどクライマックスの快感が大きいわけですが、そのためにはいじめられっ子とるキャリーはシシー・スペイシクじゃないと。彼女のどこか普通にしていても怯えている様に見えるルックスがキャリーにピッタリ。そんなキャリーが人気者のお兄ちゃんにプロムに誘われ、一大決心しておしゃれしてパーティーに臨む時にとっても可愛くなってて、なので救いのないクライマックスへの急降下がカタルシスを生んでいるように思います。リメイク版の主演、クロエ・グレース・モレッツちゃんはそもそも最初っから可愛すぎるのだ。

マーターズ(Martyrs)

前半と後半が全く違う映画のよう。いわゆる「トーチャー(拷問)ホラー」はどこかにSM的価値観(痛苦≒快感)を滲ませるものが多い(故に「トーチャー・ポルノ」とも称される)けどこっちは全く別で、タイトル(殉教者)の通り、宗教的なそれを喚起させるテーマ。海外の掲示板などでもこの映画にキリスト教のモチーフがあるやなしやでだいぶ論争があった模様。個人的には「赦し」というキーワードで観るとラース・フォン・トリアー監督の「奇跡の海」と通底するものを感じる。グロ描写は結構ガッツリ来ますので、そこは覚悟の上でご覧頂ければ。ちなみにハリウッド・リメイク版がありますが、オリジナルの方が圧倒的です。

グリーン・インフェルノ(Green Inferno)

モンド・ホラーとして名高い「食人族(Cannibal Holocaust)」(ルッジェロ・デオダート監督)へのオマージュとも言われる、「カニバル(食人)ホラー」。よって当然残酷描写のオンパレードですが、そうでありながら、ストーリーにはイーライ・ロス風社会風刺が効いていて、西洋的価値観の傲慢さと嘘臭さを吊るし上げています。森林破壊反対運動のためにやって来た意識高い系の都会の若者たちに比べて、野蛮で残酷なはずの食人族がどこか平和的でほのぼのにさえ感じるのは、彼らが神なる自然に極めて忠実に従って生きているからかも。(「ほのぼの」なんて言っていますが、グロ描写への耐性のない人には直視不可能なシーン満載ですので、そこはご注意を。)ちなみに主人公の女性を演じるのは監督の(当時の)奥さんのロレンツァ・イッツォさん、めっちゃ美人さん。

呪怨(オリジナルビデオ版)(Ju-On)

(パート1)

(パート2)

Jホラーがその後のハリウッドに与えた影響を改めて認識させられるという意味で「リング」と並ぶ代表格。自分はこちらの方が好みです。恐怖と笑いは紙一重、という感じで怖がる対象をガンガン表に出して見せる清水監督のセンスに後に後にハリウッド版のプロデューサーを買って出るサム・ライミが反応したのは道理かなぁ、という気がします。オリジナルビデオ版は1,2続けてみましょう。(但し、Part2の前半の半分くらいはPart1の振り返りですので、悪しからず。)

キャビン(Cabin In The Woods)

ホラー映画を数みていればいるほど楽しめる「メタ・ホラー映画」的な作品は後でご紹介している「スクリーム」あたりがはしりかも知れませんが、これはその決定版、という感じです。とにかく沢山のホラー映画をオマージュし、かつその定型句をうまく駆使して、見る側の予想を良い意味で大きく裏切る痛快なストーリー展開を見せます。本記事に挙げている映画もたくさんオマージュの対象として取り上げられていますので、「今のシーンはあの映画のアレだ」とかいいながら楽しめます。特にクライマックスのド派手な演出はホラー映画好きにはたまらん光景です。

変態村(Calvaire)

邦題が残念ですが、言ってみれば、グロさを抜いた「悪魔のいけにえ」ともいうべきベルギー産の傑作です。やはり主人公がうっかり迷い込んでしまった町の人々に自分の精神を完膚なきまでに破壊される、という意味では定番なストーリーかも知れませんが、繰り広げられるシーンは観る側のメンタルをゴリゴリ削ってきます。なので、余程精神的に余裕のある時の鑑賞をお勧めします。ちなみに原題はフランス語で「ゴルゴダの丘の磔」の意味で、 その辺もしっかり意味深です。

デビルスピーク(Evilspeak)

言ってみれば男子版「キャリー」、要するにいじめられっ子の復讐劇ですが、この映画の特徴は主人公がコンピューターを通じて悪魔を召喚し、合体するという当時としてもかなり斬新な設定です。今の時代見るとなかなかローファイな8bitコンピューターのモニターに悪魔が出現するシーンは別の意味で感慨深いです。 1981年の作品ですが、この頃からコンピューターは「オタク(Nerdy)」属性だったんだなぁと改めて見ると思います。ちなみにオレが本作を初めて観たのはTBS系列の「月曜ロードショー」でした。

ヘルレイザー(Hellraiser)

劇中登場する4人の魔導士たちのキャラ(特にスキンヘッドに無数の釘が刺さった状態でスタイリッシュに現れる「ピンヘッド」)が立ちすぎて、いつもストーリを忘れてしまいますが、話の本筋自体にはその魔道士達はそんなに絡んでおらず、彼ら魔道士を召喚することができるパズルボックスを解いてしまった事で自身の肉体を失ったオッサンを軸にお話は進みます。そういう意味では、魔導士達はドラゴンボールでいう「神龍」的にに登場する感じです。それにしても序盤の肉体破壊描写は今見ても斬新だなぁと思います。

ハロウィン(The Halloween)

ジェイソンくんやフレディ師匠のような連続スラッシャーものの大先輩、マイケル・マイヤーズくんのデビュー作。これまた巨匠ジョン・カーペンター監督の代表作の一つ、と言ってもよいでしょう。オープニングシーンの素晴らしさは世界中のホラー映画ファンには伝説とされています。続編も多く作られ、かつロブ・ゾンビ監督によるリブート版、さらには第一作から40年後、かつて最後までマイケルに命を狙われ、間一髪難を逃れたジェイミー・リー・カーティス演じるヒロイン、ローリーが長らく収容されていた精神病棟から脱走したマイケルと再び相まみえる「正統的な続編」が2018年に公開されています。

フロム・ビヨンド(From Beyond)

脳のある部分を刺激することで人は死後の世界とは別の「あちらの世界」に行くことができる、というちょっとやばい研究に溺れた人たちのお話。スチュアート・ゴードン監督が持ち前のしっちゃかめっちゃか(褒め言葉)な演出で映像化。まぁエログロ満載ですが、話の内容としては色々と想像力を喚起してくれる作品です。

死霊館(The Conjuring)

「エクソシスト」の201x年代の正当な後継者はこの作品なんじゃないか、と個人的には思っています。実在した超常現象研究家のロレイン&エド・ウォーレン夫妻が1971年に実際に経験したとされる話を元に作られていますが、とにかくストーリーがとてもしっかりしていて、ごくごく普通の家族に悪霊が徐々に忍び寄り取り憑いてくる様、ウォーレン夫妻を含む周りの人々がそれと闘う過程を非常に丁寧に描いているので見応え充分です。全世界で大ヒットしたのも納得。ジェームス・ウォン監督の名声を決定づけた作品と言ってもいいでしょう。邦題だけは何とも残念な感じ。ちなみに映画の予告編も秀逸。これだけで短編映画を観た気分になります。

エスター(Orphan)

ネタバレ厳禁系。子供のいない夫婦が孤児院から養子(利発そうな女子、名前は邦題になっている「レスター」)を貰い受けるところから話が始まります。キャッチコピーの「この娘、どこかが変だ」は見事に作品を表しており、エスターはその「変」ぶりを徐々に、かつ大胆に披露していきます。この「変」の元凶はいったい何なのか、いろいろな想像ができますが、本作はそこのひねり方が斬新で、張られた伏線の回収っぷりもお見事。最後はなんか割とありがちな着地だったりしますが、観終わったあとに誰かにお勧めしたくなるキレイなどんでん返しが楽しめる作品だと思います。

ペット・セメタリー(Pet Sematary)

我が子を事故で亡くした父がネイティブアメリカンの伝説の「ペット墓地」の力で息子を取り戻そうしたが、戻ってきたはずの息子は「息子ではない何か」であった。ホラーでありながら、「怖い」よりは「哀しい」が重くのしかかる作品です。キリスト教における「死」の意味とそれを人間が覆す事の罪と代償、 もし主人公が自分だったらと考えずにはいられない。これまたスティーブン・キング原作です。
(ちなみに上の英語原題、本来の「ペット墓地」を意味する”Pet Cemetry”ではないのは、劇中に出てくる、子供がスペルを誤って書いた墓地の看板、という設定に由来するそうです。)2019年にリメイク版が公開されています。

ミザリー(Misery)

ホラー映画ベスト10などのアンケートの常連作です。幽霊もゾンビもモンスターも出てこない、出てくるのは生身の人間だけなのにこれだけ怖いぞ、というわけでスティーブン・キングはやはり天才だと改めて思いますが、なんといっても本作は原作の素晴らしさをも凌ぐキャシー・ベイツの怪演に尽きます。ほとんどが二人芝居で進行していくからこその閉塞感と緊張感。公開以降、日本ではある意味本作の題名自体が「異常なストーカー」の代名詞のようにすら扱われている感もあり、それくらいインパクトのある作品です。

この子の七つのお祝いに

主演に岩下志麻、その母役に岸田今日子で女の情念モノ。怖くない訳がないです。昭和の往年の名優たちが出演していて、今と比べると各役者さん芝居が大きいので、絵面的には「土曜ワイド劇場」(昭和生まれ限定比喩)を思わせます。(「火曜サスペンス劇場」じゃないところがミソです。)お話としてはも哀愁系と言って良い、身勝手な男たちのせいで壊れてしまった悲しい女性たちの物語。今の若い人には「メンヘラ」って片付けられて終わりかも知れないですが。

オーメン(The Omen)

「エクソシスト」と共に70年代オカルト映画ブームを象徴する傑作中の傑作。大人が時に子供に感じる「そら恐ろしさ」を出発点としている映画は過去にも「光る眼」「悪い種子」など枚挙に暇がないですが、「6月6日6時に生まれた悪魔の子ダミアン」というキャッチーな設定がこの映画の勝利を決定づけているといっても過言ではないという感じ。公開当時にたまたま6月6日生まれの人は例外なくダミアン呼ばわれされた経験があるのではないでしょうか。ちなみに観て良いのはパート1、2まで、パート3は割とがっかりします。随分時を経た2006年にリメイク版が公開されています。

ノロイ(The Curse)

白石晃士監督、公開当時は日本版「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」と言われましたが、謎をばら撒くだけばら撒いて放ったらかしの本家よりはちゃんとオチに責任を持っています。一部役者の演技が絶望的にダメなのを除けば、いかにも現代日本の都市伝説とネットで広がっている怪談話のようなテイストの話をモキュメンタリーとしてまとめ上げて、それを心霊研究家がビデオ作品として編集していた、という巧い設定でファウンド・フッテージ作品としての説得力も持っています。快作と申し上げておきます。

オールナイトロング(All Night Long)

恐らくグロで下衆であることそのものを目的にした映画。志的にはピエル・パオロ・パゾリーニ監督の「ソドムの市」と同じ方向性なのか、というのはちょっと言い過ぎかも知れませんが、人は簡単に狂気に魅せられ、堕落するという現実を淡々と描き、結果世界の多くのクリエイターを刺激し、影響を与えたという意味で重要な作品。演技レベルとかストーリーテリングとか、そういうのを求める質の作品ではないと思います。

インシディアス(Insidious)

グロやエロを抜いて、お化け屋敷的に家族で楽しめるような、とても健全かつ手堅いホラー映画。意外とありそうでなかった着眼点のお話で、びっくりどっきりな仕掛けもちょうどよく上品で、昔の「たたり」や「回転」といったクラシックなホラーを現代に呼び覚ましたような感じ。続編も何作か作られており、それぞれ世界観を崩さずに続けられている感じです。

屋敷女(À l'intérieur/Inside)

とりあえず「隠さずハッキリ見せる」というのは「顔のない眼」あたりからのフランス産ホラーの伝統なのかも知れません。筋書き自体に目新しさはなく、これもまた悲しい女性たちの物語という主題はありますが、それはともかくとして、まぁとにかくいろいろハッキリ見せられます。お陰で日本で普通に出回っているソフトでは特定のシーンに(エロ方面ではなく、グロ方面で)ぼかしが入っています。妊婦さんはくれぐれも絶対に見ないで下さい。2017年にハリウッドでリメイクされていますが、とにかくオリジナル版のベアトリス・ダルの演技が100点満点で150点くらいイキきっていますので、そちらをお勧めします。

13日の金曜日 (Friday The 13th)

最早説明不要ですね。有名なトリビアですが、ジェイソンくんはPart2が初主役、しかもまだホッケーマスクもお預けで、ズタ袋被ってます。Part1では都市伝説の住人だったジェイソンくんが現実世界で大暴れという訳ですが、まだそれほど無敵感は感じられません。前作からの流れを踏襲してジェイソンくんと「サイコ」のノーマン・ベイツをオーバーラップさせてみたりと、Part2としての工夫が見られます。

アメリカン・ゴシック(American Gothic)

ホラー映画にはたまに「規律や伝統を軽んじる不埒な若者」を「超伝統的大人」が常軌を逸した方法で懲らしめるというような「勧善懲悪」ならぬ「勧悪懲悪」のものがありますが、これはそれのかなり度を越したタイプで、今回の「超伝統的大人」は、まぁ要するに「キ◯チガイ家族」なわけですが、どこか「アメリカ黄金時代の理想の家族像」のようなものを歪んだ形で再生させているようにも思えます。そこに「古き良き」を見ているのか、「醜悪さの象徴」を見ているのかはご覧になる方次第かと。

ミスト(The Mist) 

スティーブン・キング原作、突如街中を霧が覆い、その中から得体のしれない生物や巨大な昆虫が襲いかかってくる中、スーパーマーケットのような所に閉じ込められた人たちの群像劇。モンスターホラーの形をしていますが、人間の集団心理の怖さや危うさを描くドラマとしてもしっかり観せてくれます。近年「後味の悪い映画」というと結構真っ先に挙げられる人気作です。エンディングに至る経緯が個人的には若干ご都合主義的な気もして、それ故に世間の評価程自分には響いてきませんでしたが、まぁそれでも十分絶望できます。

ブラッドビーチ〜血に飢えた白い砂浜(Blood Beach)

小学生の頃にテレビの「ゴールデン洋画劇場」で見て以来の自分のとってのトラウマ映画の一つ。アニマルパニック映画の金字塔、傑作中の傑作「ジョーズ」の亜流といえばそうなのですが、題名通り、砂浜が人を襲う、という発想が斜め上です。これのせいで、以降夏休みに海水浴に行って、砂浜に不自然にくぼみが出来ていたりすると、避けて通ったりするようになっていました。今となってはよい思い出?です。

狼男アメリカン(An America Werewolf In London)

ジョン・ランディスのお洒落でオフ・ビートなコメディ感覚と、世界を驚かせたリック・ベイカーの特殊効果によるリアルな狼男変化の合体。後ほど登場するジョー・ダンテ監督「ハウリング」に始まり、その後にマイケル・ジャクソンの「スリラー」のMVに繋がる流れです。クライマックスの変身シーンを最初に観た時は本当にビックリして、「どうやってこんな事が出来るの?」と特殊メイクやSFXの世界に興味を持った事が、自分がホラーにハマったきっかけの一つでもあります。

ローズマリーの赤ちゃん(Rosemary’s Baby)

これもとりあえず妊婦さん見ちゃダメ映画。ロマン・ポランスキー監督によるオカルト映画ブーム時の傑作です。華奢で可愛いミア・ファーローがじわじわと得体の知れない集団に取り込まれていく様がじわじわ怖いです。またこれが「実はこれって妊婦さんがただ疑心暗鬼になってパニクってるだけでは」と観てる側も惑わして行きながらストーリーが進められていくもんだから、ラストシーンの後味の悪さというか薄気味悪さはインパクト大です。

死霊のしたたり(Re-Animator) 

「フロム・ビヨンド」と同じブライアン・ユズナ&スチュアート・ゴードンのコンビの出世作。死者蘇生もの、といっても凡百のゾンビものとは全く違います。大学病院の若き医学助手が死者を蘇生させる薬を開発、死体置場で実験していたらお祭り騒ぎになってしまったよというお話。原作は「クトゥルフ神話」の祖としてその筋では有名なH.P.ラヴクラフト、で、その原作が先のコンビの手にかかり、やっぱりしっちゃかめっちゃか(褒め言葉)なエログロワールドが展開されるわけです。公開当初は「ZOMBIO(ゾンバイオ)」という副題が付いていました。

バタリアン(Return Of The Living Dead)

ダン・オバノン流のロメロゾンビの「正統」な続編(原題をご覧頂ければその主旨がお解り頂けると思います)。ゾンビ達のキャラクターが際立ってますが、ストーリー自体もなかなかのぶっ飛びよう。ちょいちょいコメディ的な要素も絡めながら、当時の最新のSFXを駆使し、サントラの音楽も80年代ロックな感じで楽しい、怖面白い一大娯楽作に仕上がっています。「ゾンビは自身の死の痛みを緩和するために生きた人間の脳を食いたがる」というゾンビの動機を設定したのはこの作品が初めてかもしれません(自信なし)。続編がいくつか作られています。ちなみにこの映画の邦題から後の流行語「オバタリアン」が派生したのではないかと思います(自信なし)。

REC(REC)

いわゆるファウンド・フッテージ、登場人物目線のカメラで描かれるタイプのホラーがここまで沢山作られたのは、実は「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」ではなく、このスパニッシュホラーの世界的な成功がキッカケだったんじゃないかと個人的には思います。(本作の公開から程なく、ハリウッド・リメイク版が製作・公開されています。)救急救命士の仕事に密着したテレビクルーが、その現場で突然ゾンビに襲われ、かつ建物が外部から強制隔離されてしまったために閉じ込められてしまう、さぁどうする?というお話。ホラー映画にはいろんな楽しみ方があると思いますが、本作はみんなでワイワイ観るにはピッタリ、まぁ大騒ぎできると思います。個人的には主役であるテレビレポーター役の女の子が可愛いくてよい。やはり続編がたくさん出ています。

パラノーマル・アクティビティ(Paranormal Activities)

誰でも簡単に動画が撮れて共有できる、この時代だからこそ生まれたホラー。特殊メイクもCG技術もある程度行き着くところまでいってしまったこの時代、本作のホラー映画の恐怖表現は正直言ってかなり地味です。しかし、CGで何でもありの映画表現には現実味がなさすぎで、実際ホントに眼の前で起きるとすれば、「ひとりでにシーツがめくれる」とか「寝てるときに突然足を引っ張られる」とか、そういうくらいの出来事が一番怖いよね、というような観客の心理を見事に突いたアイディア賞ものの傑作。個人的にはちょっとオチが弱い気もしないでもないですが、まぁそこはひとつ。続編も次々と制作されました。

デモンズ(Demoni/Demons)

80年代のスプラッターホラーブームの最中に作られたイタリア産の悪魔系ゾンビもの。自分は高校生当時、地元の田舎の映画館で一人で観に行きました。お客は少なかったです。映画館の中でホラー映画を観ていたら、映画の中より怖いことが裏で発生してますよ、皆さん呑気に観てる場合じゃないですよ、というお話。イタリア・ジャーロの伝統よろしく色使いが派手でバッチい描写もいっぱいですが、スピード感があってスリリングに楽しめる映画です。バックの音楽に何故か80年代のニューウェーブ系ロックが多く使われていて、映画の初めにクレジットも出てくるのですが、きっと単に監督(ランベルト・バーヴァ)の好みなんだろうな。続編が確か3つくらいあります。

サスペリア(Suspiria) 

「決して一人では見ないで下さい」のキャッチコピーで日本でも一世を風靡したダリオ・アルジェント監督の世界的代表作。醜くて美しいという矛盾を映像として形に出来るのはこの御仁ならではで、サウンドトラックを手掛けるイタリアのプログレバンド、ゴブリンの緊張感溢れる名演奏をバックに繰り広げられるめくるめく美しき殺人シーンが見ものです。 ストーリーは二の次です、いいんですそれで(笑)。2018年にリメイク版が公開されています。

正体不明(Ils/Them)

これもネタバレ厳禁系、故にあまり言うことがない。題名通り、とある夫婦が正体不明の何かに生活を脅かされるわけですが、一体何者、というのが話の全てって言えば全てです。こういうのは本当に予断を挟まず、たまたま観る、くらいの距離感で出会うのが一番楽しめるタイプの映画ですね。

エイリアン(Alien)

これはSFかな、と迷ったのですが、第1作目は堂々ホラーということでよいかなと思います。怖くてカッコよくて洗練されたモンスターキャラクターという意味で未だこれを越える作品はないと思います。殺戮シーンを猫の表情で見せるところが個人的にはとても好きです。

エミリー・ローズ(The Exorcism Of Emily Rose)

実話を元にしており、ホラー描写より「悪魔祓いの失敗」か「神父による殺人」かを争う法廷劇を中心にしている所が異色です。とはいえ、裁判中の回想シーンでの悪魔憑きの演技は「エクソシスト」の後継者たり得る素晴らしさ。

ショーン・オブ・ザ・デッド(Shawn Of The Dead)

ジョージ・A・ロメロのリビング・デッドシリーズへのオマージュに溢れ、かつ英国のニート気味の若者の生活や文化をネタにしたホラーコメディの大傑作。特に80年代の英国音楽にハマった人には随所に出てくる小ネタにくすぐられまくることでしょう。

ババドック 暗闇の魔物(The Babadook)

何処からともなく手に入れてしまった絵本をきっかけに絵本の中の魔人に取り憑かれてしまった親子を描く、あまり今までなかったタイプのホラー映画。いったい何が怖いのか、何に怖がっているのかが途中でよく分からなくなってくる展開が秀逸。タイトルにもなっている魔人の名前”Babadook”が”A Bad Book”のアナグラムだと気づいたのは随分後になってから。

イット・フォローズ(It Follows)

性感染を想起させるようなホラーは今までもありましたが、こういう設定を思い付いた時点で「勝ち」だったのかもしれません。緊張バリバリだったり、妙にマッタリしたり、メリハリが面白い新鮮な感覚の青春ホラー。怖さを楽しむ、というよりは話の作り方の上手さを楽しむ感覚に近いかもしれません。

感染(Infection)

日本のホラーというとマイナーな役者さんが多かったり、また最近は演技力の稚拙なアイドルのスクリーンデビュー作向けの陳腐な作品が多いのですが、これはやたらと名の売れた俳優陣ばかりが名を連ねたホラー。話は正直なんだかよくワカンねぇな、て感じですが、絵面の華やかさで楽しめます。

ミラーズ(Mirrors)

名前の通り鏡に纏わる諸々が主題のホラー。「24」のジャック・バウアーの人(キーファー・サザーランド)が主人公なので、なんか何があっても結局自力で乗り切ってしまいそうに見えますが、まあまあそこは苦戦してます。しっかりお金が掛かっている感じで娯楽作として楽しめますし、オチもなかなか効いています。

オーディション(Audition)

国際的にも熱狂的なファンの多い三池崇史監督による村上龍原作の人気作。話の内容的にはテレビの2時間サスペンスドラマのような感じではありますが、途中ちょいちょい現れ、最後クライマックスでたっぷりと味わさられる残酷描写がこの映画を特別なものにしています。三池監督ですから、その辺一切躊躇がありません。

サンゲリア(Zombie 2)

イタリアのグロマスター、ルチオ・フルチ先生の代表作。先生いろいろと作りがいい加減(原題の”Zombie 2”って1はどこだ)だったり、映画としてはイマイチテンポがまったりし過ぎてて個人的に乗れないとかはあるんですが、神経逆撫で系のグロい描写は天下一品で、それでこそ先生である、とも言えます。

ビデオドローム(Videodrome)

デビッド・クローネンバーグ監督「スキャナーズ」と並ぶ代表作。ビデオをドラッグに見立てたような、ホラーいうよりはトリップムービーと言われるものに近い。後に撮った「裸のランチ」の原点という気もする。話の筋はあまり追わずに映像世界を楽しむという風情です。

ハイテンション(Haute Tension)

フランスの気鋭アレクサンドル・アジャ監督の出世作。殺人者に友人を拉致された女性が、救出すべく必死に追跡する、映画なのですが、最初からなんか変なんですねこの主人公。そこに気付くと最後の大オチが結構読めてしまう、で、オレも運悪く読めてしまい、あまり楽しめなかったのです。世間的評価は高いです。

スプライス(Splice)

映画ではよく取り上げられる科学者の禁断領域「人間創造」ものです。で、やはり人間とはちと違うシロモノが出来上がる訳でそこからのスッタモンダなわけですが、話の持って行き方が斜め方向にインモラル、意外と言えば意外なんですが、なんか科学者であるはずの主人公達がスゴくバカに見えてしまい冷めました。

ブレア・ウイッチ・プロジェクト(The Blair Witch Project)

いろいろと一世を風靡した、「POV」「ファウンド・フッテージ」ものの流行りの原点。テレビ番組やWebサイトと連動する事(メディアミックス?)を前提に作られている事もあり、映画単体で観ると「?」というのが多いんですが、逆に謎を謎のままで楽しめる方ならゾクゾク出来ると思います。続編的なものもいくつか作られていますが、2016年に正式な続編として「ブレア・ウイッチ」が公開されています。

リング(Ringu)

日本のみならず世界的に有名になったJホラー代表。先に小説を読んでいた事もあり、映画表現としてはあまり想像の域を超えてくれなかったのがもう一つ自分的に乗れていない作品です。呪いのビデオの表現が本を読んでた時の自分の想像とほぼ同じだったのはちょっとだけ驚きました。 (ちなみに上記の英題はタイポではなく、この通りです。日本語読みを尊重してくれているんですかね。)

オカルト(Occult)

白石晃士監督が追求するモキュメンタリー(架空のドキュメンタリー)スタイルのホラー。「パラノーマル・アクティビティ」のような「現実っぽさ」あっての恐怖描写が上手くいっていて面白いんですが、ラストシーンが全てを台無しにしてる残念な作品。いくらなんでも、アレは。

カルト(Cult)

これも白石晃士監督が心霊バラエティ番組の撮影の体で撮ったファウンド・フッテージ系の作品。何か悪しき存在に取り憑かれた家を3人のグラビアアイドルが取材している内にいろいろ起こるわけですが、途中から出てくる有能な霊能者のキャラが厨二病の兄ちゃんみたいで笑けてしまう。この霊能者がもう少し淡々とした地味キャラだったらもっと面白かったのに。

クラウン(Clown)

欧米には「ピエロが怖い」というのがある一定層いるようで、これもそういう所に訴える作品。優しいお父さんが子供達の為にピエロを演じたら元に戻れなくなり、やがて邪悪な怪物に変貌する。初めから終わりまであまり無駄なくキッチリ怖い話になっている、題材の割には意外と正統派なホラー。

IT(IT)

(1990年版)

(2017年版)

スティーブン・キング原作のホラー版「スタンド・バイ・ミー」的な作品。これキッカケに欧米各所に「ピエロが怖い」という人が多発したとも言われていますが、確か元々はテレビ用に制作されたものという話もあり、そのせいかホラー描写としては優しいというか弱めで、子供向けの「トラウマ映画」という印象。 2017年公開で前編がリメイクが作成され大ヒット、後編のリメイクも2019年公開です。

グレイブ・エンカウンターズ(Grave Encounters)

これもいわゆるファウンド・フッテージもの。心霊番組のスタッフが遺したビデオという体です。予告編で使われた場面がインパクトが強く大ヒットしたようですが、本編はその場面以上のインパクトはそれ以降最後まで訪れませんでした。パーティー用のホラー映画としてはワイワイ楽しめるでしょう。パート2もありますが、似たりよったりです。

ダーク・スカイズ(Dark Skies)

最初は「呪われた家」系のお話かなと思って観たらちょいと違ってた、ということでどう違うかを書くとネタバレになるので書きませんが、手堅い感じに作ってあります。自分的には可もなく不可もなく、という感じですが、普通に楽しめると思います。

ディアトロフ・インシデント(Devil’s Path)

1959年に当時のソ連のウラル山脈で実際に起きた未解決事件「ディアトロフ峠事件」の謎を探索に行った若者達による、これもファウンド・フッテージもの。レニー・ハーリン監督ということで金も掛かってんなぁ、という感じですが、イロイロ盛り込み過ぎたのか全般的に薄味かな。舞台が雪山なので夏には涼しげでよいですが。

エルム街の悪夢(Nightmare On Elm Street)

(オリジナル)

(2010年リメイク版)

超有名なホラーアイコン、フレディ師匠擁する、ウェス・クレイブン監督の代表作。フレディ師匠はキャラとしては大好きなんですが、映画としては個人的にはイマイチ何を怖がったら良いのかがわからないんですよね。夢なんでしょ、何とでもなるだろうと。まぁ、それ言うと元も子もないんですが。

ブレイン・デッド(Braindead/Dead Alive)

「ロード・オブ・ザ・リング」を撮って立派になったピーター・ジャクソン監督が立派になる前に撮ったグチャグチャスプラッター。「死霊のはらわた」にも通じるハチャメチャなユーモアは感じるんだけど、何か色々と「雑」な気がして個人的にはあまりピンと来ない作品。好きモノの間では非常に評価の高い作品ではあります。

バスケット・ケース(Basket Case)

フランク・ヘネンロッター監督によるカルト的人気作。奇形で生まれた兄と健常な弟のおぞましく悲しき物語。兄貴の造形のインパクトがデカさがその手の映画好きを喜ばせました。今見るとちゃちぃですが、かえってキッチュで若い人にもウケるかも知れません。 この間、渋谷でTシャツ売ってました。

残穢~住んではいけない部屋

小野不由美原作の傑作小説の映画化。竹内結子はじめ俳優陣の演技がとても自然で、じわじわと染み入るような怖さが楽しめます。Jホラー的な派手さを極力排した中村義洋監督の演出力が冴え渡ります。小説を気に入った方でも一見の価値ありかと。

血の バレンタイン(My Bloody Valentine)

「ハロウィン」以来、流行りまくった連続殺人鬼系の亜流映画の一つ。とにかく何か特別な日と結びつけようとしてのこの映画。ま、ハッキリ言ってしょぼいです。さらっと流して観ましょう。 ちなみにUKの某バンドの名前の由来は恐らくこの映画だと思います。一応、2009年にリメイクされてます。

チェンジリング(The Changeling)

同名のクリント・イーストウッド監督の映画とは全く関係の無い、1980年のカナダ産オカルト映画で隠れた名作として名高い。ありえない場所に物が現れたり、ありえない物音がしたり、という古典的な恐怖描写を使いながらミステリーとしても丁寧に作られているので、見応えがあります。

アクエリアス(Deliria/Stage Fright)

ダリオ・アルジェントの弟子筋、ミケーレ・ソアビ監督の演劇系スラッシャー映画。いろいろな手段で殺人が行われていくのですが、流石ダリオ先生の弟子だけあって「美しさ」を忘れません。クライマックスで、舞台上を被害者で飾り、一人佇むフクロウ頭の殺人鬼が非常に絵になるのです。

グッドナイト・マミー(Ich Seh Ich Seh/Goodnight Mommy)

レンタル屋でたまたま出逢ったドイツ産の佳作。事故にあった母と双子の兄弟。大怪我を負った母が退院して家に帰って来てからなんか変、あれホントにお母さん?と双子が疑い出す所から話が展開します。途中で先が読めてしまう方もいると思いますが、読めたとしても楽しめます。

ハウリング(The Howling)

マイケル・ジャクソンが「スリラー」のMVで世の中に知らしめた進化系狼男変化映像のハシリとなった映画です。暗い映像の中ではありましたが、人が獣に変わるのをリアルに見せたロブ・ボッティンの特殊効果は衝撃的でした。肝心の中身の方もジョー・ダンテ監督が直球勝負のシリアスなサスペンスに仕上げています。

ドーン・オブ・ザ・デッド(Dawn Of The Dead)

ジョージ・A・ロメロが作ったゾンビシリーズの2作目のリメイク。ただ最近のゾンビのトレンドを決定付けたといってよい本作のゾンビは全速で走ります。スリリングで良いのかも知れませんが、オレは要らんのです。そんな事を気にしない人には普通に面白い映画だと思います。でも、オレは要らんのです。

アンフレンデッド(Unfriended)

映画の殆どのシーンがFacebookとSkypeとYouTubeの画面で展開する非常に今風のSNSホラー。醜態映像をYouTubeで晒されて自殺した友達がSNS上で蘇り、犯人探しと復讐を繰り広げていくというお話。予算節約できてよいですね。アメリカ人の若者の馬鹿さ加減ばかりが気になり、怖さはあまりありませんが、デスクトップだけで話が進む新鮮な感覚は楽しめます。 続編も出ています。

クライモリ(Wrong Turn)

結構人気のあるシリーズで何作も続編が作られています。スタイルとしては「悪魔のいけにえ」のような、森の中に住んでいる常識の通用しない集団に狙われる人々という図式ですが、「悪魔のいけにえ」のような、「闇」なんて表現では到底届かない得体のしれなさはなく、そういう意味では個人的には何ともない作品でした。2021年にリメイク、というかリブート作が制作されています。

エンティティー(霊体)(The Entity)

実際にあったと言われる、女性がポルターガイストにレイプされた話の映画化です。オレはこれをテレビの「洋画劇場」的番組で観ました。いわゆる「色情霊」を扱ったホラー映画としての存在も稀有ですが、被害女性の苦悩も丁寧描いていて、出来もしっかりしています。これを昔はテレビでやってたんだよな。今じゃ絶対無理だ。

スタッフ(The Stuff)

「人喰いアイスクリーム」と言われて何をイメージするでしょうか。恐らく「何もイメージできない」というお答えが殆どかと思いますが、きっと正解です。やたらと人気の出る食べ物が実は製造元を辿っていくと、というソイレント・グリーン的な都市伝説話を映画にしたような作品で、いわゆる「B級映画」そのものです。笑いながら観ましょう。

吐きだめの悪魔(Street Trash)

「B級」にもなれないくらい色々ひどい映画の事を「Z級」とかいったりしますが、その類の映画といってよいでしょう。 それ故に好きな人は徹底的に好きなようです。古すぎて飲むと身体が溶けるウイスキーをめぐるすったもんだ。オレは大学生の時に見ましたが、普通の真っ当な感覚の方は近づく必要すらない映画です。今直ぐ忘れて下さい(笑)。

バーニング(The Burning)

ちょっと偏屈で変わったキャンプ場の管理人が若い人にからかわれて大火傷を負って復讐鬼になってデカいハサミで襲い掛かるという、それ復讐鬼に同情しか出来ねぇよという設定の連続スラッシャーモノ。デカいハサミで連戦連勝の復讐鬼ですが、最期があまりに情けなくて、同情するしかないです。

ハウス・オブ・ザ・デビル(The House Of The Devil)

タイ・ウエスト監督が敢えて80年代のテイスト満載で作った2006年作品。映画の中でも80年代音楽(テンポを落としたThe Fixx “One Thing Leads To Another”がVapor Wave的でやたらとかっこいい)やでっかいウォークマンなどが出て来るし、オープニング・タイトルもそれっぽい作り。で、映画としては前フリがすごーく長くて最後20分くらいで怒涛の勢いで店じまいしていく展開。前フリまでも結構丁寧に作ってあるので、それ程退屈はしなかったですが、それにしても前フリが長すぎるかなと思いました。

ファンハウス(The Funhouse Massacre)

トビー・フーパー監督作の「惨劇の館」というサブタイトルが付く方ではなく、わりと最近の作品。刑務所に入ってた凶悪異常殺人犯がお化け屋敷に紛れ込んだよ、という景気の良いお話。フレディ師匠ことロバート・イングランドが出て来ますが序盤で退場します。何となく元ネタがわかる登場人物も多く、そういう意味では「キャビン」的な楽しみ方をする映画かもしれません。

ラスト・シフト/最期の夜勤(Last Shift)

もうすぐ閉鎖される警察署の最後の夜勤に付いた新米の女性警官が警察署の過去にまつわる不気味な現象に悩まされるというお話。あれやこれやと仕掛けは多く退屈はしませんが、仕掛け自体は目新しくはありません。新米刑事役の女優さんがいい感じで新米っぽいです。

スクリーム(Scream)

スプラッターブームが去ってなんかネタ切れ感が漂っていたホラー映画界にポンと出てきた感じのメタホラーの走り。いわゆるホラー映画のお約束を踏まえてなぞったりスカしたりというネタを織り込みながら一級品のスラッシャー映画に仕上がっている、ウェス・クレイブン監督ものでは「エルム街の悪夢」より好きです。大ヒットして続編も沢山出来ました。

ザ・クレイジーズ(The Crazies)

(オリジナル)

(リメイク版)

ゾンビの父、ジョージ・A・ロメロによるオリジナルと、最近になって作られたリメイク版があります。本筋は同じでバイオ兵器の漏出が原因で町の人たちが次々と狂暴化するという話です。リメイク版はCGなどの技術の進歩によって狂人達が今風ゾンビさながらに急に暴れ始めますがが、オリジナルは見た目普通の人が徐々におかしくなります。オリジナルの方が個人的には好みです。

サマーキャンプ・インフェルノ(Sleepaway Camp)

よくあるタイプの、若者がキャンプで集まった所で連続殺人が起こるという平凡なストーリーなのに、何故かアメリカでは人気が高いらしく続編がいくつか作られています。確かに99%平凡なのですが、最後の最後、エンディングだけが超斬新。というかこれ反則じゃね、確かにネタ振りあったけどさ。

サタニック(Satanic)

割と最近の悪魔儀式もの。若者4人がコーチェラフェスに行く途中にへんな所に寄り道したために悪魔信仰に巻き込まれました、というお話。それほど怖がれるポイントはないですが、結構いろいろ工夫してる感はあります。まぁ、でも平凡ですかね。

人喰いトンネル(Absentia)

邦題が残念な低予算インディホラーですが、なかなかの拾い物です。何年も前から原因不明の失踪者が出ている短い歩行者用トンネルのある町を舞台に夫婦、姉妹、恋人といった人間関係が輻輳して絡み合う都市伝説サスペンス。原題は「(誰かが)いない間に」という意味で、タイトルとしても妙味を出しています。

フッテージ(Sinister)

一発屋のノンフィクション作家がヒットが欲しくて一家惨殺事件のあった家に家族に内緒で引越してきて、屋根裏部屋で8mmフィルムを見つけます。そしてその内容と惨殺事件との関係を調査するうちに色々やばそうなことになるという、お話の展開はやや強引ながら面白味がありました。ただホラー演出がチープ、というか最近ありがちな感じでそれが最後まで残念な感じ。もっとストイックに撮っていれば傑作になったかも。でもそこそこヒットして、続編も作られています。

ポゼッション(The Possession)

イザベル・アジャーニ主演のカルト・クラシックの方ではなく、2012年に公開された、名前の通りの「悪魔憑き」モノです。最近のこの手の映画の常套句である”Based on a True Story"=「実話を基にしています」で、もう題材的にも手垢付きまくりではありますが、サム・ライミが製作に就いてお金も掛かっているのでしょう、それなりに丁寧に作られています。ただ、MRIに悪魔が映るとか、頼る悪魔祓いがキリスト教ではなく、ユダヤ教のラビだったりとか、いくつかのちょっと面白い描写を除けば、名作「エクソシスト」の亜流です。それを踏まえて過剰な期待を持たずに見れば、十分な暇つぶしになります。

MAMA(MAMA)

今っぽいホラーのように装ってはいますが、内容はホラーというよりは、怪談噺のようです。女性が持つ母性の大きさと深さ、子供にとって親の存在とはどういうものなのかを描く人情噺とも言えるかもしれません。ビックリはあるけどグロさはなし、許されるなら家族やカップルで。観終わった後にしんみり語り合えたりするかもしれない、ちょっと変わった作品です。割とおすすめ。

呪怨(The Grudge)

サム・ライミの眼に留まり、清水崇監督が自らメガホンを取ったハリウッドリメイク版の「呪怨」。無理にアメリカ設定にせず舞台を日本にして、飽くまで「あの家」を軸にビデオ版と日本映画版を上手くリミックスした様な作品。シリーズを初めて観る人には本家のビデオ版より表現がソフトで良いかも知れません。

ジョーズ(Jaws)

アニマルパニック映画の金字塔。以降、クマ、ワニ、ヘビ、タコ、イカ、ミミズ、ビーバーと様々な動物が人々を恐怖に陥れてますが、ほぼ全ての映画がこの映画の影響下にあると言っても過言ではない程の名作。恐怖描写と人間ドラマの絶妙なブレンド。スピルバーグ監督の名を一段と高めたのは言うまでもありません。何回観ても面白い。続編、亜流がたくさん出ていますが、真面目に観ていいのはパート2までかも。

ザ・フライ(The Fly)

オリジナルの「蠅男の恐怖」ではなく、デヴィッド・クローネンバーグ監督によるリメイク版の方です。とりあえずオリジナルの発想は素晴らしい。技術的な制約でオリジナル時は身体は人間、頭は蠅みたいな事にしかできませんでしたが、リメイク版では徐々に蠅男とは言えない別の何かになっていく、筈が最後に出て来たアレは何だい?人間成分少なすぎねぇ?
とはいいつつ、海外では「ボディ・ホラー」(恐らく肉体損壊系の描写の多いホラーのことを指すのでしょうか)というカテゴリーで傑作扱いされています。個人的には疑問ですが。

鮮血の美学(The Last House On The Left)

(オリジナル)

(リメイク版)

ウェス・クレイブン監督のデビュー作でホラーというよりは復讐モノのハードコア・スリラーみたいな感じでしょうか。娘を凌辱して殺したキ○ガイ集団をそうと知らずに家に招いた夫婦の顛末。娘の仇、とわかってからの夫婦の無双振りを楽しみましょう。近年のリメイク版もありますが、スッキリ度はオリジナルの方が高いかな。

発情アニマル(I Spit On Your Grave)

(オリジナル)

(リメイク版)

日本公開当時は洋物ポルノとして公開されたため、邦題がナニですが、若い女性のレイプ復讐劇です。これもやはり復讐モードになってから男どもがエゲツなく成敗される様を楽しんでスッキリする映画です。リメイク版があり、こちらは復讐の仕方が殺人ピタゴラスイッチみたいで、それが功を奏したかヒット作となり、数本続編が作られています。オリジナルからリメイク版まで30年以上経過しており、両方観ることで、その30数年間の世の中の価値観の変化ぶりや変化してなさぶりを感じ取ることもできます。

ホステル(Hostel)

世の中的に人気のある"ソウ"シリーズとともに拷問系ホラーの代表格で、イーライ・ロス監督の名を一気に世に知らしめた作品。美人なお姉ちゃん達とやりたい放題らしいな場所らしいという噂に乗って、旅行に行った野郎どもがたどり着いたのは筋金入りのサディストサロンのような場所だった(但し自分がやられる側)というお話。イーライ・ロスの映画はどうしても画面描写のどぎつさに眼が行きがちですが、そこを何とか乗り越えてちゃんと観ると、人間の欲深さや欺瞞だったりを暴き出すようなドラマにちゃんとなっています。決してただのグロ好き監督ではないのであります。

サクラメント 死の楽園(The Sacrament)

ある宗教の教祖が世俗との接触を断ち、信者と生活を共にする共同体。そこで生活をしている妹からの連絡を受け、ジャーナリストの友人とともに足を踏み入れる兄目線でお話は進みます。ご想像通り、最初は友好的な団体が実は段々怪しくなって行きます。1955年にアメリカで実際に起きた「ジョーンズ・タウン集団自殺」をモチーフにタイ・ウエスト監督をイーライ・ロスがプロデュース、グロさやドッキリはなく、かの事件現場の様子をその場で見せられている気分にさせられます。ジワジワとくる薄気味悪さをひたすら味わいましょう。

死霊館 エンフィールド事件(The Conjuring 2)

大ヒットとなった前「死霊館(The Conjuring)」に引き続き、「史上最も長期に渡って発生したポルターガイスト現象」として記録にも残されている実話に基づいた作品で、今回もウォーレン夫妻が活躍します。話の内容に新奇さや意外性はないし、ストーリー自体も前作と比べる唐突感が否めない部分が無きにしもあらずですが、一方これも前作同様、話そのものをとても丁寧に描写していくので、観ていても飽きたり、冷めたりはさせません。やっぱりジェームズ・ウォン監督は腕アリます。

ネスト(Musaranas)

昔「ザ・ネスト」というゴxブリ映画がありましたが、それではなく、とある姉妹を巡るスペイン&フランス産サイコスリラー。姉妹の初期設定に対する説得力が少し弱い気がしますが、それに目をつぶればなかなか楽しく壮絶な姉妹喧嘩。ミザリー的な姉役の女優さんの演技が見事、っつーか、その華奢な身体でパワーあり過ぎ。

7500(Flight 7500)

清水崇監督がハリウッドで「呪怨」絡み以外で初めてメガホンを取り、飛行中の旅客機内での恐怖体験を扱った作品。映画としては短く、お金を掛けて作った「世にも不思議な話」的なお話。予告編などで煽るほどホラー要素はない。よく出来ていると思うけど勘が良い人だと途中で結末が読めるかも。だからこその「短さ」なのかな。どうでもいいですが、CAさん役の女優さん2人が綺麗でよいです。

シャッター(Shutter)

ホラー映画人気の高い国、タイで製作された映画のハリウッド・リメイクで監督が「感染」の落合正幸監督。奥菜恵や宮崎美子など見慣れた女優陣の顔も出てきます。オリジナルのタイ映画の方を観れていないのですが、少なくともこのハリウッド版は展開が雑すぎで怖さは全くありませんでした。描写にJホラーの雛形のような箇所が多く、オリジナリティに欠く凡庸な演出が多いような気がしました。それは多分時期的にも制作側からの要望だったんだと思いますが、監督はどんな想いだったのでしょうか。意外と落合監督は職業的に淡々とこなすタイプの人なのかな。

ウイッチ(The VVitch - A New England Folktale)

2015年のサンダンス映画祭で監督賞を取り、日本での公開が長く待たれていた魔女映画がやっと2017年に公開となりました。イギリスからアメリカに移り住んできた敬虔なクリスチャン(ただ、どうも周りとは少し違う独特な信仰っぽさを匂わせています)の一家5人が少しずつ不幸な陰に覆われ始め、やがて家族は「長女が魔女なのでは」と疑い始める...。自然光を活かした全体的に陰鬱でかつ美しい画、1600年代前半の文献から忠実に再現されたというセリフ(英語が古語で聞き取りにくい)、随所に出てくる聖書的表現や隠喩、ということでなかなか平均的な日本人にはハードル高い映画ではあります。観る前に少しでもキリスト教というか聖書を予習しておくと、これが何故「ホラー映画」として外国の評論家筋から絶賛されたのかが何となくわかりますし、「恐怖」の根源はどこから来るのか、という興味から2度3度と観たくなる傑作だと思います。

ライト/オフ(Lights Out)

(本編予告編)

(元となった短編動画)

気鋭のデヴィッド・F・サンドバーグ監督が作った2分少々の短編を元に、今や売れっ子監督であるジェームズ・ウォンがプロデュースして製作されたサンドバーグ監督の長編デビュー作。「暗闇が怖い」という万国共通の感覚を巧く使って、グロ表現なし、ビックリ沢山、話も怪談っぽくありながらも妙な説得力というか、それなりの論理で巧みに仕上げています。デートムービーとしては最高かも。変に続編を匂わすようなスケベ根性がなく、スパッと終わっているところも好感が持てます。(と言いつつ既に続編の計画があるそうですが。)

悪魔の存在を証明した男(The Possession Of Michael King)

奥さんを事故で亡くした無神論者の映像作家が自分を実験台にして悪魔憑きの真偽をカメラに収めようとするPOV的、ファウンド・フッテージ的な映画。「的」と書いてあるのは、「そんな都合のいいアングルで映るかよ」という場面が多すぎるので、恐らくPOV的なものを撮ろうとしている主人公を俯瞰で描いているものと思われるため。エクソシズム系のホラーとしては至って平凡だけど、ちょくちょくアイディアが面白いところはある。まぁ、もうちょっと脚本よく練ってから撮ればよかったんじゃないかと。

インビテーション/不吉な招待状(The Invitation)

ホラーよりはサスペンスとかスリラーとかに分けられる映画ですかね。元妻とその旦那から唐突に送られてきた同窓会的なパーティー招待状に今カノと向かう主人公。当然居心地悪いんですが、どうもそういう意味の悪さだけじゃなく、なんかおかしい。で、実際おかしい訳ですが、想像通りでオチももう一つ弱い。一応、由緒あるシッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリだそうですが、個人的にはあと3捻りくらい欲しい所です。

羊たちの沈黙(The Silence Of The Lambs)

言わずと知れた近代サイコ・スリラーの金字塔ですが、アンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターの二人芝居の部分がこの映画の楽しみ方の核でしょう。愛情とも憐憫とも、尊敬とも倒錯とも違うレクターとクラリスの間の微妙な感情のバランス、それが崩れるらしい事を聞いたせいで、続編の「ハンニバル」は未だに観れていないです。

危険な情事(Fatal Attraction)

日本がバブリーな一時期、エロい中年の二枚目といえばマイケル・ダグラスな時期がありましたが、その印象を決定付けた作品です。嫉妬によるストーキングをホラー的に扱うという意味ではもしかするとハシリなのかも知れません。映画のジャンルとしては「スリラー」ということになるのかもしれませんが、グレン・クローズのあの素晴らしい狂演っぷりは本当に「モンスター」でしたし、十分にホラーだと思います。

チャイルド・プレイ(Child's Play)

人形ホラーの代表格、人気者チャッキーくんのデビュー作で世界的な大ヒットとなりました。人形絡みの怪談は日本でも昔から多くありますので、よりウケる題材だったと思います。やっている事はマイケル・マイヤーズくんやジェイソンくんとさして変わらんのですが。もうこれも呆れるほどに続編が出ています。続編が出てくれば出てくるほど、CG技術の発展によりチャッキーくんの動きがよりリアルになりましたが、逆に人形っぽさが無くなり、個人的には逆効果じゃないかと思っています。人形らしく、ちょっとカクカクしてるくらいが丁度いいというか。ちなみに2019年のリブート版ではスマホアプリで設定して、AI連携までできるチャッキーくんでした。

ドールズ(Dolls)

「死霊のしたたり」「フロム・ビヨンド」のスチュアート・ゴードン&ブライアン・ユズナのコンビによる人形モノのホラーファンタジー。不遇な少女が嵐の晩に道に迷ってお人形だらけの古い一軒家に辿り着く、というこのお二人の割には珍しくメルヘンチックなお話。ホラーな描写はそこそこあるものの中身的には本当にお伽話で「子供のように純真で真っ直ぐな心を持つ者が救われる」なラストはスッキリ爽やかですらあります。

ABC・オブ・デス(The ABCs Of Death)

AからZまでのアルファベットで始まる単語にちなんだ「死」に関する26編の短編、それぞれを26人の気鋭の監督達が紡ぐオムニバス。全般的にホラーというよりはエログロ満載のアングラなアートムービーな感じで教育的な意味合いでX指定な映画。かなり観る人を選ぶ作品ですが、26もあるので中に好みの作品が1個くらい見つかるかも。オレは"D" for Dog Fightと"T" for Toiletが気にいりました。パート2もあります。

スナッチャーズ・フィーバー 〜喰われた街〜(There Are Monsters!)

カナダ産のSFホラー映画。映画専攻の大学生が卒業制作でドキュメント映画作るために取材に行った街の人たちがなんか変、見た目は人間だけど中身はもしや?という話をPOVで描いた、SF映画の古典「ボディ・スナッチャーズ」と「ブレア・ウイッチ・プロジェクト」をくっ付けたような作品。POVが過ぎて手振れが酷く見てて疲れるのとクライマックスに向かって話がワンパターンに堕してしまうのが残念。前半の緊張感とか、なかなかワクワクさせてくれるんですが。

ファウンド(found.)

カナダ産のちょっと変わった青春(?)ホラー映画。自分の兄が部屋に生首を隠し持っていることを告白する主人公の少年のモノローグで映画は進行していきます。ちょくちょくゴアなシーンが出てきますが、基本いじめられっ子の主人公と両親を含む周りの大人の無理解を軸に唯一の理解者である(生首持ってる)兄との生活を淡々と描いていく、ちょいとミニシアター系のおしゃれ映画のような展開が続きます。それ故にストーリーの展開起伏は少なく、そこで好みが分かれる映画かもしれません。主人公の感情の機微を自分に引き寄せて観るタイプの映画が得意で、かつホラー映画のアブノーマルさも許容できるという方には唯一無二の映画となるでしょう。個人的には傑作だと思いました。

テイキング・オブ・デボラ・ローガン(The Taking Of Deborah Logan)

POV型の悪魔祓い系の映画は沢山作られているのですが、これは少し変化球です。認知症の老女の様子を医療研究の一貫として記録映画として撮影するクルーが、撮影している間に老女の奇行が認知症によるものなのか、別の何かなのかがわからなくなってくるという、着眼点がなかなかユニークな作品です。POVにつきまとう「いつまで撮ってんだよ」というツッコミに対しても割と自然な言い訳ができるようにうまく撮っているのには好感が持てますが、ストーリーがもう一つ説得力に欠けるのと大オチに向けて紋切り型っぽい展開になるのがちょっと残念。でも細かいところに目をつぶれば十分楽しめます。

ヘッドレス (HEADLESS)

映画「ファウンド」で主人公の兄がレンタル屋からパクったホラー映画のビデオ、という設定で劇中劇的に出てくる映像を「1978年製作の実際の作品」風にフル尺の映画として作ったスピンオフ作品。グロさ120%のゴア・ムービーですが、余興的なスピンオフとして真面目に遊んでいるのと、本体である「ファウンド」を解釈するヒントも散りばめられていて侮れない作品です。

グロテスク(Grotesque)

白石晃士監督が作った全力ゴア・ムービー。理不尽なストーリーと容赦ないエログロ描写。ただそれだけで終わらないのが白石晃士作品。作品の中で使われる「感動」「頑張る」という言葉の白々しさや図々しさを極端な映像描写で嘲笑しているように感じました。故に多くの残酷映画がそうであるようにこの映画はその凄惨な表現にも関わらず「笑えて」しまえます。何が「グロテスク」なのか、というところを手繰ってみるがこの作品の楽しみ方の一つかなと思います。レンタル版ではエンディングが一部カットされているようです。

ザ・ボーイ ~人形少年の館~(The Boy)

金持ち老夫婦の家に子守のバイトしに行ったら子守するはずの子供が人形だったよ、でも老夫婦はマジ、という所から始まる人形モノスリラー。何となくチャッキー君的な方面に行くものと思いきや、意外と別方面へと話が流れて行く。結構面白い捻り方だったので、逆にせっかくそこで上手く捻ったのに、最終的に割とありきたりな所に着地してしまったのがちょいと残念。そうなってしまうと目をつぶってスルーして来た数々のツッコミどころが許せなくなるよ。

マザー!(Mother!)

新婚の夫婦のせっかくの新居生活に見知らぬ人がどんどんやって来て、何故か旦那はどんどん受け入れて奥さんがキレる、と書くとそれホラーかい?という感じなのですが、「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー監督が理不尽な展開に追い詰められていく奥さん(監督の元カノ、ジェニファー・ローレンス)をジリジリ虐めるように撮っています。米国ではホラーにカテゴライズされているようですが、感覚的にはサスペンスかなという感じです。この話も聖書が下地というか前提にあるのでそれが分からないと逆にドタバタコメディに見えてくるかも知れません。

ゲット・アウト(Get Out)

ジョーダン・ピール監督の2017年アカデミー賞ノミネート作品。黒人の青年が白人の彼女の実家にお呼ばれ、彼女の両親の差別意識を警戒するも、両親共にいい感じの人で一安心、でもこのウチなんか変だな。
という事で米国の黒人差別をキーにした作品ではあるけど想像の斜め上の展開で驚かされます。平均的な日本人が想像する黒人差別よりもう数段エゲツない世界かも知れません。ある種「優生思想」とつながるようなエゲツなさ、本当に「人」を「人」だと思っていない「人」がいる。これがもしかすると米国黒人差別のリアリティにより近いのかも、と想像するに、これは立派な「ホラー」です。

クワイエット・プレイス(A Quiet Place)

いわゆる「ディストピア」もので、音を出すと「何者か」に抹殺されてしまう世界で生き延びている親子4人の家族を中心にしたお話。すごくヒットして世間の評判も良かったが、いざ見てみると、その「何者か」が割と目に見える形で出てくるのが興ざめなのと、話の根本のところの設定がそれほど盤石じゃない(というかガバガバな)のが気になってイマイチでした。人間の可聴域周波数範囲内のハウリングレベルでそんなんだったら、そもそも地球上に降り立った時点で最早さ・・・、ってやめときます。パート2もあります。オレはきっと観ないです。

輪廻(Rinne/Reincarnation)

清水崇監督が「呪怨」で大ブレイクした直後に撮った前世もの。かつて起きた大量殺人事件を題材にした映画の主役に抜擢された女優がそれ以来不思議なデジャヴに悩まされる、その原因は何かというのが次第にわかるミステリー仕立て。「呪怨」のようなキャッチーなキャラが出てくるわけではなく、かつ主役の優香を始めキャストが妙に(ネームバリュー的に)豪華なのでもう一つ話に入り込めないのですが、観客に巧くミスリードさせて気持ちよくどんでん返すのは清水監督流石だなぁと感じました。

ソウ(SAW)

謎のゲームマスター、ジグソーが仕掛ける究極の残酷ゲームに翻弄される超人気シリーズの記念すべき第一作。誘拐されて気付いたら変なゲームに強制参加させられる系の作品はこの作品以降圧倒的に多くなりましたが、オレどうもこの手の設定に乗れないんですよね。なんかいくらなんでもご都合主義が過ぎるというか。ただこの一作目はワン・シチュエーションものの舞台芝居として、オチの付け方まで本当に見事な作品だとは思います。

ザ・ウォード 監禁病棟(The Ward)

ホラー映画界ではレジェンド級のビッグネーム、ジョン・カーペンター監督が久々にメガホンを取った作品で、邦題の通り主人公が若い女の子ばかりがいる精神病院に監禁されるんですが「この病院、なんかおかしくね?」となるところからのスッタモンダ。御大作品としては薄味小粒感は否めませんし、オチももう一つありきたりかな、と思ったり。

インブレッド(Inbred)

英国産の残酷鬼畜系映画の逸品です。基本的な物語の構造自体は「悪魔のいけにえ」と同じで、悪ガキ更生のための社会奉仕活動で先生と悪ガキ御一行がやってきた村はキ〇〇イの巣窟でした、というお話です。とりあえず残酷描写が容赦なくイキ切っているのでグロ耐性のない方は鑑賞厳禁ですが、耐性のある方はそのあまりの非現実さに逆に笑えると思います。作り手側もコメディ性をちゃんと意識しており、かなりエグい描写の割にはカラッとドライに見れてしまいます。劇中に出てくる、村のテーマソングみたいな歌が割とクセになる能天気さで脳内ループします。

ゾンビ(Dawn Of The Dead)

こちらは本家ロメロ監督によるゾンビ三部作の二作目にあたり、日本でも「ゾンビ」の認知を決定的なモノにした記念碑的な作品。ゾンビ達が生前の記憶から巨大なショッピングセンターに集まってくるという設定はホントに天才的。そのショッピングセンターを砦にした人間とゾンビの攻防戦が、後のバイオハザードを始めとしたゾンビ系ゲームの動きや描写の雛形となった事は一目瞭然。公開当時、エレベーターの扉からなだれ込むように襲ってくるゾンビが出てくる予告編が怖くて怖くて、テレビで流れると目を閉じてやり過ごしてました。

死霊のえじき(Day Of The Dead)

本家ロメロの三部作の三作目で、地上がほとんどゾンビに制圧された後の世界を描いています。人類は地下に逃れつつ、この期に及んでそれぞれの立場の違いによる勢力争いがあり、人間はホントにしょうがねぇな、一致団結してるゾンビを見倣え、とでも言いたくなります。白眉は人間と意思を通じる事のできるゾンビ「バブ」の存在。このバブくんが義理堅いヤツで泣かせます。この画期的なキャラは後に「ウォーム・ボディー」や「ショーン・オブ・ザ・デッド」に出てくる「友達ゾンビキャラ」の原型になったんじゃないかと個人的には思っています。

へレディタリー 継承(Hereditary)

201x年代で恐らくホラー映画最高傑作という呼び声も出てくるであろう、アリ・アスター監督の傑作モダン・ホラー。なんかどうもカルトにどっぷり浸かっていたっぽいおばあちゃんの死をきっかけに、娘であるお母さん、旦那さんであるお父さん、そしてその息子と娘の家族の歴史とカルトとの関係がだんだんと詳らかになっていきます。驚かせ系の仕掛けは少なく、あちらこちらに深読みを誘う仕掛けが沢山。見終えたあとに「うへぇ、なんかエライもん見ちまったな」という後味の悪さを嫌というほど味わえます。

ヴィジット(Visit)

M.ナイト・シャマラン監督ものは当たり外れが激しい事で有名で、オレ的には正直に言えば「シックス・センス」以外は全部微妙な感じでしたが、本作はなかなか楽しめました。おじいちゃん&おばあちゃんの家にお泊まりに行く孫2名(お姉ちゃん&弟)。お母さんは何かの理由で同行できないので子供たちだけのちょいとした冒険。ともあれ無事到着し、おじいおばあは大喜び、楽しいね。でもこのおじいおばあ、なんかちょっとオカシクね?というところから話が展開します。他のシャマラン作品と同様オチが命の作品です。

サプライズ(You're Next)

邦題がある意味ネタバレになっている珍しい作品。両親の結婚35周年を祝う為に実家に集まった子供達夫妻。ところが家族団らんの場で突然一人が頭を矢で貫かれて死亡、一家パニック、とサスペンス・ホラー的に始まる映画ですが、途中主人公の女性(子供達夫妻の中の嫁の一人)のプロフが明らかになる辺りから徐々に(悪役側のとっての)サバイバルアクションにジャンルが変わっていきます。ちょっといくら何でもと思える様な都合の良さは否めないものの、スカッとジャパン的な爽快感があります。スカッとジャパンはあんまり観たことありませんが。

フーズ・ウォッチング・オリバー(Who's Watching Oliver)

日本未公開のド直球R指定のサイコもの。文字通り、かのヒッチコック監督の名作「サイコ」を現代版に再解釈したかのようなマザコン殺人鬼オリバーの日常とそこに現れた一人の女性との間の出来事を淡々と描いています。息子オリバーをSkype越しに操り、精神を支配する超絶に下品なオリバーの母親のイカれっぷりと、その母親の支配から何とか逃れようとするオリバーの葛藤。出てくる描写は相当エゲツないのに何故かほのぼのとすらする瞬間もちらほら出てくるオフビート感覚のとても不思議な作品です。

セルビアン・フィルム(A Serbian Film/Српски филм/Srpski film)

「この映画を観た」という事実だけで、場合によっては他人から軽蔑されかねない、いろいろな意味でインモラルな映画。全盛期を過ぎて安定した家庭を築きつつあるベテランポルノ男優が、昔の仕事仲間の紹介でとある映画の仕事を引き受けるところから話は始まります。とにかく最底辺レベルの道徳的タブーを平然と蹂躙してくる映画なので、そういう意味で「ホラー」といってよいかもしれません。そんな感じで自分の倫理観を揺さぶられる感覚を楽しめるような奇特な方のみ向け、ゆえにそういう映像描写が与える心理的ストレスに相応の耐性のない健全な嗜好の方は絶対に近づくべきではない映画です。怖いもの見たさで観て良いようなものではありません。

アンチクライスト(Antichrist)

夫婦でセックスに夢中になったあまり、生まれて間もない我が子が窓から身を乗り出していることに気付かず転落死させてしまった事をきっかけに精神を病んでしまった妻。その治療のためにと妻とともに人気(ひとけ)の全く無い森の奥深くでの生活を始めるセラピストでもある夫。妻はその森を「エデン」と呼ぶ。このあたりにタイトルのヒントがあったりしますが、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でパルム・ドールを獲ったラース・フォン・トリアー監督らしく、えげつない描写と難解で哲学的な問いかけを交互に絡ませながら、最悪のラストへとなだれ込みます。世間的にもかなり賛否の分かれた作品です。

アス(Us)

「ゲット・アウト」で映画界に旋風を巻き起こしたジョーダン・ピール監督の第2作目は、また前作とは異なるアプローチで社会問題をホラー化してみせています。黒人の4人家族を突然襲うのは「自分たち」、この「自分たち」はいったい何者で、何処からやって来たのか。話としては(またしても斜め上からの展開で来る)ファンタジーなのですが、そこに何重にも暗喩や仕掛けを施して、割と最初から最後までテンション高めで一気に見れます。登場人物の行動、来ている服、乗っている車、聴いている音楽、いろんなところに仕込みがありますので、その辺も掘り出していく楽しみもあります。ジョーダン・ピール監督は社会の分断をストーリーに織り込むのが実に巧みです。

ミッドサマー(Midsommar)

「へレディタリー 継承」で衝撃的なデビューを飾ったアリ・アスター監督の2作目。この作品を直球で「ホラー」と称してよいかはちょっと迷うところですし、正直かなり「作品側が見る人を選ぶ」タイプの作品のように感じます。ただ個人的には自分史上三本の指に入る「恐怖」映画であったことは間違いありません。家族に起こった唐突な悲劇によって天涯孤独となった女性がボーイフレンドとその友達とともに、スウェーデンの奥地で90年に一度行われる特別な夏至祭に赴く事から引き起こされる数々の出来事。のっけからアクセルべた踏みの緊張感、出口の見えない閉塞感、得体のしれない不気味さに捕らわれて(映画館では特に)動けなくなる、得難い映画的体験です。もちろん前作同様、あちらこちらにストーリーのヒントや暗喩が散りばめられており、それを掘り出す事で何度でも味わい直せる傑作だと思います。

トールマン(The Tall Man)

パスカル・ロジェ監督が大傑作「マーターズ」に続いてメガホンを取った作品。ある町で子供が次々と拐われる事件があり、その犯人の足取りは杳として知れず、世間も犯人を「トールマン」と呼び、ほとんど都市伝説状態。そんな中、主人公の息子が拐われて...、というお話から「ドンデン+ドン」くらい返されるストーリー展開です。何となくホラー風味ではありますが、ホラーというよりはサスペンス・ミステリー、よってグロさとかは全然ありませんので、ホラー苦手な人も大丈だと思います。でも、なかなか唸らされるお話です。脚本も手掛けたパスカル・ロジェ監督、流石、やります。

ジェーン・ドウの解剖(The Autopsy Of Jane Doe)

解剖医を営む父子の元に運ばれてきた身元不明の女性の死体が運ばれてきます。(※ 米国では身元不明の女性死体は「ジェーン・ドウ」と呼ばれます。同じく男性は「ジョン・ドウ」と呼ばれ、映画「セブン」の犯人がその名前を名乗ってましたね)外見は驚くほどキレイな女性は解剖してみるとありえないような内部損傷の数々、父子共々「なんじゃこりゃ」と思っていたら解剖室内で次々と起こる怪奇現象。何かありがちかな、と思っていると意外なところにオチを持っていってくれる佳作です。監督のアンドレ・ウーヴレダルさんは映画「トロールハンター」や本作での技量を認められてか、ギレルモ・デル・トロ監督のプロデュースの下、2020年公開の大作「スケアリーストーリー 怖い話」の監督にも抜擢されています。

キャビン・フィーバー(Cabin Fever)

「キャビン(Cabin In The Woods)」とちょっと混同しがちではありますが、こちらはイーライ・ロス監督が一躍ホラー映画界隈で名を売った2002年の作品。若者グループが森深いところに遊びに行く、というありがちのシチュエーションから謎の感染症に襲われ、地元住民も巻き込んでの(文字通り)ドロドロぐちゃぐちゃ劇が展開してされていきます。本作時点で既にイーライ・ロス監督の得意とする、グロを装いつつ、その実、登場人物の人間関係の上っ面さがどんどん醜く崩れていく様を巧妙に描写するスタイルが確立されている佳作です。続編や前日譚など派生作も作られ、かつ2016年にはイーライ・ロス監督がプロデューサーに回ってリメイクが制作されています。

呪怨 〜呪いの家(Juon Origin)

Jホラーの世界的拡がりの両翼の一旦である「呪怨」が実際の事件から着想されて作られたものである、という設定で制作されたNetflixオリジナルドラマシリーズのエピソード1、全6話です。プロデューサーに一ノ瀬隆さん、脚本に高橋洋さんというJホラー黄金の布陣で、オリジナルの「呪怨」の設定と、1980年代から90年代に日本で実際に起こった重大事件を虚実巧く絡ませながら作り込まれたリコンストラクション・バージョンのような作品です。1話30分程度でテンポよく見れますし、1話1話丁寧に作ってあり楽しめます。但し、妊婦さんには絶対お勧めしませんし、妊活中といった方々にもあまりお勧めはできません。個人的にはスクリーミング・マッド・ジョージさんのお仕事が久々に観れてちょっと嬉しかったのと、蓜島邦明さんの音楽が流石だったです。後は自分は本作をきっかけに初めて知った、アイヌ音楽をベースにしたコーラス・グループ、マレイレウによるエンディング曲がもう素晴らしいのなんの、そんかいのー。

私はゴースト(I Am A Ghost)

一部ホラー映画ファンに絶賛されていたH.P.メンドーザ監督の2012年作品。題名の通り、幽霊譚を幽霊側の視点から描いています。そう聞くとニコール・キッドマン主演の「アザーズ」(アレハンドロ・アメナーバル監督)を思い出す方もいらっしゃると思いますが、本作は少々趣を異にします。昨今流行りのループものの要素、オカルト要素と精神医学の要素を巧く組み合わせた脚本、低予算ながら非常に丁寧に作られています。75分と時間も短いので観やすいと思います。序盤かなり淡々としていますが、そこをしっかり観てこそ、の映画です。観終わった後にいろいろと解釈する余地もあり、そういうニッチな所を勝手に深堀りして楽しめる要素もあります。傑作と言って良いと思います。

スキャナーズ(Scanners)

ここまでホラー映画の事を書いていてかなり今更感がありますが、この作品は何となく書きそびれていました。鬼才デビッド・クローネンバーグ監督の代表作です。かつてビートたけし氏のギャグで「すきゃなーーーず、頭がぽん」というのがありましたが、そんなギャグに採用されるくらいに有名な頭部爆発シーンが上記の予告編にも使われるほどの代表的なショッキングシーンなため、ホラーというような位置づけにされることが多いですが、どちらかというとSFというか、スターウォーズのジェダイとダークサイドの対決のようなお話です。悪役であるところのマイケル・アイアンサイドの演技が抜群にいいです。

イット・カムズ・アット・ナイト(It Comes At Night)

何らかの感染症が蔓延し、崩壊した世界で生き残った家族を描いたディストピア映画で、時期的に先に紹介したディストピア映画「クワイエット・プレイス」と公開時期が近かったので何かと比べられがちだった作品です。夜にやってくるという「それ」って何さ、という事ですが、自分的には過剰にハイプされ過ぎだと感じている「クワイエット・プレイス」よりは本作の骨太さの方により好感を持ちます。ただ本作は本作で、ストーリーとして描きたかった事の解釈の余地を観る側に委ね過ぎて、結果として「で?」という作品になっている気がします。「人間の深層」に拘り過ぎて「謎」の部分の置き去りにしてしまった印象です。

ハッピー・デス・デイ(Happy Death Day)

パリピ(死語)的に派手な学生生活を過ごしている主人公が自身の誕生日であり、母の命日でもある日に突然ゆるキャラマスクを被った何者かに襲われて命を落とした、と思ってたらその日の朝に逆戻り、そしてまた殺されては朝に逆戻りを繰り返す、いわゆる「タイムループ」に囚われてしまった、さて自分を襲う犯人は誰?、そしてどうやったら「ループ」から抜け出せるか?という昨今またあちこちのジャンルで採用されている「ループもの」の一作。「ホラー」という枠で扱われていることが多いですが、ちょいとラブコメ要素もあるスリラーという趣きで、グロもエロもなく、どなたでも楽しく観れると思います。米国では大ヒットし、続編「ハッピー・デス・デイ・2・U」も公開されています。

(続く)