シェア
葉桜照月 はじめに この作品はフィクションであり、実在の人物・地名・団体とは一切関係ありません。また、実在の人物・地名・団体を想起させるような表現や、あるいは誹謗・中傷するような表現を使ってもいません。もし想起した場合は称号「コロネ疲れ」を獲得してください。 世界は元に戻らない。 まず最初にしなければいけなかったのは、閉ざされたドアを開けるために鍵を探す事だった。わたしはついさっき、そこのソファーの上で目覚
今田 拓見 一 大東京、東京のどこかと申しませぬが、大金持ちの御夫妻がいたのであります。何をもって大金持ちといえるのかと申しますと、このご夫婦の家はとても大きい。四階建てのビルディングで、尚且つ、エレベーター付き。勤勉な旦那様に献身たる奥方。いやあ、とても羨ましい。 奥方はおっしゃった。 「あたくし、孫に会いたいわ」 旦那様はお答えになる。 「おお、そうか。」 それから以下のような会話が続きます。 「おおそ
織葉 黎旺 定期的に刻まれる心地よい揺れを身に感じながら車窓を眺める。といっても何が見える訳でもなく、そこには黒い闇がぽっかり浮かぶばかりだ。ほとんどの場合はむしろ、反射した車内の光景の方が映る。疲れ顔のサラリーマン、舟を漕ぐ老人、単語帳と睨めっこする女子高生、中には自分と同じような旅行客の姿もある。僕は何をするでもなく、ぼんやりとそれを見続けていた。することがないからというのも理由の一つではあったけど、何より車窓を