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『まじる』水谷怜 感想
はしがき
『まじる』が初めて世に出されたのは2022年4月17日 のライブ Knockout FES でした。Knockout FES は下北沢のライブハウス群で実施される室内型ライブフェスで、多くの音楽ファンが集まるものです。そのため、水谷怜ファンとしては、水谷怜さんの音楽を沢山の人に知ってもらえる喜ばしい企画ではあります。その一方で、こうしたフェスは動画配信が無いため、私達遠方勢はライブを見ることができず、切ない時間でもあります。
当然ながら、2022年4月17日 Knockout FESでも動画配信は無かったので、ライブを観たSNSの相互フォロワさんにセトリを聞いてみると、、、、、、
『世界(新曲)』の文字が…。
「ぬあああにい?!新曲演奏あったのか?!」驚きと喜びと歯痒さが同時に湧いたのを覚えています。
そして待つこと約二週間、2022年4月28日 大阪南堀江knave で行われたブッキングライブ。
「今回は現地参戦できる!!!」
「新曲歌うよね?!新曲どんなだろう?!」
この二週間、溜めに溜まった溢れんばかりの期待でライブに臨んだのを覚えています。
(大阪南堀江knaveのライブレポはこちら👇)
そんなこんなで悲願の末、ライブの生ボーカルで『まじる』の初視聴を迎えたのですが、その直後から、歌詞好きの私は、歌詞を読みたくて仕方ない病が発症しました。それからというもの、ライブで『まじる』が演奏される度、配信アーカイブで歌詞聴き取りをやろうかと迷ったのですが、やはり、「水谷怜さんの書いたもので読みたい」と我慢し続けました。
そして、初お披露目から6ヶ月。2022年10月22日、待望の!切望の!YoutubeMVが発表されました!!!👏👏👏
うおお、早速聴き込むぞーー!!!歌詞読解するぞーー!!!と、前のめりに聴き始めたのですが、、、、
歌詞が難解、、、、
ぼんやりとは解るのですが、自分の言葉にする事ができない、、、、
それから、かれこれ4ヶ月、やっと歌詞を自分の言葉にすることができたので、ここに感想を書かせていただきました!
稚拙な内容ですが、お時間ありましたら、読んでいただけますと嬉しいです!
楽曲概要
Vox / Guitar / Cho:水谷怜
Drums:しょーち。(One to Free)
Bass:ダケ(あのQUINTET)
Guitar:いくを(つぶGUY)
Pf / Rhodes / Strings / Arrangement:清水"Alan"哲詩(flagship FUNABASHI)
Record / Mix / Master:清水"Alan"哲詩(flagship FUNABASHI)
Cam / Video Edit:水谷怜、清水"Alan"哲詩
On location at:Studio98k、Saitoh Creative Studio
Supported:flagship FUNABASHI
『まじる/水谷怜』のYoutubeMVはこちら👇
歌詞
今回の新曲『まじる』。発表に当たり、水谷怜さん自身👇の様な‘言葉’を添えています。
「色んな人の色んな気持ちがまじった世界で、自分は自分で大切にしてあげようねという思いで出来た曲です」
過去の楽曲を振り返ってみると、水谷怜さんの歌詞は隠喩的、擬人的な表現が詩的で、その一言一言が醸す雰囲気でぼんやり抽象的・間接的に楽曲の世界観を伝えてきます。この感じがまた好きなんですよねえ。
また、楽曲に込めた思いについても多くを語らず、聴き手の受け取り方に委ねている様に感じます。
こうした中、今回の『まじる』は曲に載せた思いについて比較的明確に語られた方だと思います。
私は初めてこの曲を聴いた時、「寛容、慈しみ、博愛、友愛」という言葉が浮かびました。今まで、あまり書いてこなかった、誰かに当てたメッセージの様な歌詞。歌詞をよくよく読み込んでいくと、ネガティブなワードも散りばめられていますが、上述の'言葉'の通り、「そうしたネガティブな世界の中でも、自分自身を大切に」というポジティブなメッセージが込められているのが伝わってきます。
また、人称代名詞として、「私、あなた」が出てきます。ですが、その人称が、私、あなた、あの人、世界のどこかの誰か、に無次元的に変化し、自分自身に向いているかと思えば、いつの間にか聴き手や世界のどこかの誰かに向いている。小節毎の歌詞の対象が変化し、入りまじっていて、場所も身の回り、隣の街から世界のどこかという様に無次元的にまじっている。正に、「まじる」「世界」が暗示的に醸されている様にも感じました。
同時に、読めば読むほど捉え方が変わっていく歌詞だとも感じました。(これによって、歌詞読解がどんどん派生してまとめるのに時間が掛かってしまいました汗。が、その分めちゃくちゃ楽しくて、まとまった時の嬉しさったら最高でした!)
濁点の使い方がめちゃくちゃ好きです!
突然何を言い出したんだ?ですねw
聴き始めのころ、歌詞の語呂が心地いいなあと感じる箇所がありました。そこで、傾聴してみたところ、その箇所は濁点を持つ仮名がリズム良く配置されている事に気づきました。
1Aメロ
「あなたが何色なんて 私が真っ白なんて
神様がふざいの世界では」
1Bメロ
「栞がきざむだん落を駆ける 瞳がにじむ
よごされることのない気持ち」
2Aメロ
「藍色に鳴りひびく 縁どるべくなぞる
小さな生き物の足音 あるべきば所 さがしつづける」(一番好きな所ですw)
2Bメロ
「間ちがいを嫌う ぎょう間がにごる」
これがまたABメロのゆったりメロにめちゃくちゃ合うんですよね。
水谷怜さんこれ狙ったのでしょうか!?
濁点ほんと好きです!
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メロディ
イントロから使われる一つのメロディが何度も繰り返されています?オスティナート?リフレイン?というのでしょうか?
それなのに一つの曲としてちゃんと成り立っている不思議な楽曲。平歌部ではこのメロディが心地よく、優しく、安らぎます。ゆったり世界を揺れる大海原の波の様に、また、その波に揺られる帆船の様に、「のんびり穏やかに行こう」という印象を受けます。
そして、サビでは、このメロディが壮大に色を変え、大空に解き放たれるかのような印象に変わります。
このメロディが様々に色を変え、幾重にも重なることで、全体としてのメロディのイメージを「寛容、慈しみ、博愛、友愛」に仕立てているように感じます。
また、歌詞がそうである様に、自己の内側から世界まで、音のスケール、フレームがグラデーション的に変化し、まじり合うことで、空間スケールがまじり合っているかの様な、無次元な印象を受けます。
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ボーカル
今回のボーカルには「抱擁、思いやり、またそのメッセージを伝える」という感情を感じました。
歌詞の内容に寄り添い、
Aメロは善悪について穏やかに語りかける様に。
歌詞に心情が感じられるBメロではボーカルにも感情が入る。
サビでは「あなた」にメッセージを伝えるかの様に歌詞に込められた思いを感じます。
落ちサビに入ると更に柔らかく、まるで時が停まっている様な、静寂すら感じます。
からの、ラスサビは落ちサビで反動をつけて最も力強くダイナミックに!
落ちサビからの「全てののーぞみが」で一気に音階を駆け上がる所が鬱屈としていた物をブワーっと吐き出すかのようでめちゃくちゃ痛快です!
そして、最後は包む様に暖かく優しく「自分を大切にして、あなたなら大丈夫」という安心感を感じます。
落ちサビの「Ah Ah Ah Ah Ah〜」も言葉にできない心の叫びの様で、歌詞に込められた思いに引き込まれ、とても好きです。
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楽器隊
ドラム
「ドン ダッツドン ドン ダドン♫」これを繰り返す平歌部の単調なリズムが電車の車輪音の様で車窓からの街並みの映像との相性でめちゃくちゃ好きです。
そして、単調なんだけど、ドラムが跳ねる事で曲の印象をポップにして、ややもすると後ろ向きに捉えられがちな歌詞のイメージを前に向けている様にも感じます。
サビでは、これまでの単調なリズムを崩して乱す事で、サビをドラマチックさをより強く感じました。
EGt
イントロやアウトロの弦楽器リフ、EGtとストリングスが交互に前に出て奏でるリフ、一つのリフを異なる楽器で構成しているのにちゃんとメロディとして成り立っているのが凄い。
アウトロでは、ストリングスのみの構成に変化させてる辺りも、一筋縄では行かないところが「らしさ」ですねえ。
また、小節終わりのボーカル後の余韻Gtメロ「チャラリーチャラリー♫」が女性の髪から見え隠れするような、長いイヤリングの様に主張しすぎないのだけれど、しっかり印象に残る感じがめちゃいいです。
そして、その中の一つとして、1Aメロで使われているバイオリン奏法。テルミンの様な無段階のサイケな音がとても好きです。
ピアノ エレクトリックピアノ
今回もひたすらバッキングに徹してる印象ですが、A・Bメロ等の平歌部とサビで担当分けしている様に感じました。
平歌部はエレピの優しく、懐かしいサウンドで「身近さ」を感じ、物思いに耽っているような感覚を覚え、サビではピアノに替わることで壮大でダイナミックに感情をあらわにしている様に感じます。併せて、思考の領域が身の回りの狭い空間から世界に変わる様な感覚を覚えます。
アウトロでは、初めてエレピが前にでてきます。音楽療法にも使われるという癒しのサウンドのエレピ。「自分を大切にして」と慰め、安らげてくれているようです。
Bass
全体を通してゆったりと流れるベースライン。大海原の波の様に優雅に上下して、メロディを暖かく力強く抱擁しているかの様。まさに安心感。
Gt
終始他の楽器の裏側でメロディを奏でているのですが、2Aメロの時だけ、一瞬前に出てきます。音をGtとボーカルと僅かなストリングスに絞ることで、歌詞の「小さな生き物」にフォーカスされ、その非力さ、素朴さを印象付けられます。同時にギターの暖かい音色で「見守られている」様にも感じます。
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映像
今回の映像には、白いシャツを着て公園を歩く水谷怜さんと黄色いワンピースを着て駐車場、ベンチ、木陰に座る水谷怜さんが登場します。
それぞれ別の国に住む二人が、それぞれの思いを胸に空を仰ぎ、その思いが一つの空でまじり合っている。「全ての望みが重なり合う世界 まじった空気」を表現しているかの様で、素敵な演出ですねえ。
細かく見ていくと、歌詞と映像がリンクする、たくさんの遊び心が散りばめられています。
イントロで映る、電車から見た町並みには住宅地やマンションがあり、「そこに住む人々の思いがまじっている」を演出しているかのようです。
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「同じ色に染まりゆく」では空を映し、世界のいずれの場所でも空の色は同じであり、「宇宙(そら)の手に掛かれば直ぐに 同じ色に」染まる事を演出している様に思います。
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「神様が不在の世界では」では無人のベンチが映ります。
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「栞が刻む」
栞は「山道などで、目じるしのために木の枝を折って、道しるべとすること」という意味を持ちます。この映像ではこれを示唆している様に感じます。もちろん、自然に優しい水谷怜さんは枝を折ってはいません。
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「藍色に鳴り響く」の瞬間藍色の閃光が走ります。
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「小さな生き物の足音」が聴こえてきそうです
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同じく「小さな生き物の足音」で映像が爆破を受けた瞬間の様に映像が赤く焼ける演出…があるのですが、ここが何を示唆しているのかは解りません。
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「瞳を逸らす」で水谷怜さんが瞳を逸らしてます。
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「見慣れた交差点 知らない滑り台…」の落ちサビでは、水谷怜さんのボーカルにフォーカスして、音のトーンが下がります。これに合わせて、色彩のトーンも下がり、モノクロ映像となります。
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ここが凄いんです!
落ちサビから一気に音が駆け上がり「全ての望みが重なり合う世界」に入る所、黄ワンピの水谷怜さんから白シャツの水谷怜さんに映像を重ねるかの様に一瞬で切り替わっていきます。
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「まじった空気を吸って」でめっちゃ吐き出す映像になってる所好きです。
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最後、アウトロでは、「この空の色を知ったあなたなら」と同時に遠くを無邪気に歩く水谷怜さん。憂いから解放されたかの様な印象を受けます。
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あとがき(曲名ではありません)
水谷怜さんは今回の『まじる』について、成田あよりさん(音楽仲間)のとある楽曲に象徴される「優しさ」にもインスパイアされたと言っています。
この楽曲を、私自身の言葉で表すなら「自分らしく生きていく事が難しい世の中だけど、自分を大切にしてあげられるのは自分だけ。自分を大切にして欲しい」という、聴き手に優しく寄り添うメッセージの様な楽曲。歌詞最後の言葉「この空を知ったあなたなら」に、そこはかとない安心感をもらいます。
自分を見失った時等にも聴いていきたい曲です。
PS:因みに『あとがき』という水谷怜さんの曲はこちら👇