ヒースコートの赤ワイン
メルボルンから北へ車で約1時間半のところにあるHeathcote(ヒースコート)は、今オーストラリアで最も注目されている赤ワイン産地である。ヒースコートは聞いたことが無くても、ジャスパーヒルなら耳にされたことがあるかもしれない。シラーズ種(Shiraz)・カベルネソーヴィニヨン種・ピノノワール種に加えて、最近は良いネッビオーロ種が栽培されている。
ヒースコートの中央から北部にかけての鉄分を多く含んだ古代カンブリア紀の赤い痩せた土壌と、雨が少なく寒暖の差の大きな内陸性気候が極上のシラーズを生みだす。
ワイン好きのオーストラリア人同僚から、シラーズならヒースコートという話を聞いた。その週末、たまたま、ブロンプトンで行こうと思っていたレールトレイルの起点がヒースコートだったので、数か所のブティックワイナリーに立ち寄って試飲したところ、あまりにおいしかったので仰天、その後、何度か買い出しに出かけることになった。
ヒースコートでいつも訪問していたお気に入りのワイナリーをご紹介する。尚、いくらご紹介しても日本では多分売っていない。皆、小規模なワイナリーで、且つ、おいしいので、メルボルンとその他オーストラリア国内でほぼ飲みつくされてしまうのだ。
Sanguine Estate (Hunter Family)
地元の同僚に「どこ行くべき」と聞いたらすぐ名前が出てきたのがここだ。
1997年に家族経営のワイナリーをスタートした。
オーストラリアワインのレーティングで最も信頼されているジェームズ・ハリデイで常に5つ星にランクされているなど非常に評価が高い。ヒースコート地区ではJusper Hill(ジャスパーヒル)が別格の大手だが、それを除いた中では比較的規模の大きいワイナリーだ。もしも日本で買えるとしたらこれか。
実はここが一番気に入っている。
白、ロゼ、赤・・・といろいろ揃えているのだが、やはりシラーズがうまい。
Sanguine Estate (サングイーン・エステート)のオーナー家族はハンター・ファミリーというが、ワイナリーの名前でわかる通りイタリア系である。オーナーのご先祖様(my great great great grandfather)は1868年にイタリアから移民してきて、この付近のマルドンという金鉱の町に住み着き、小規模なワイン醸造をしていたようだ。マルドンには当時ビーハイブ金鉱会社というのがあって、町は1万人以上の昼間人口があったのでそのような需要もあったのだろう。
ちなみにそのグレートグレートグレートグランドファザーの姓であるD'Orsaを冠したシラーズである。
Downing Estate
小規模だがここも評判のワイナリーだ。こちらもジェームズ・ハリデイで5つ星だ。100%自家農園産の葡萄で、シラーズ、カブサブ、カベルネ/シラーズブレンド、メルローなどを生産している。
このセラードアは土日は空いているはずなのだが、結構きまぐれで閉まっていたりする。
オジサンの蘊蓄が長いのだが、どれも買って損のないワインだ。2015年シラーズのレゼルブはもちろん唸るほどの美味さだったが、最もおいしかったのがシラーズとカベルネソーヴィニヨンのブレンド。驚く私にオジサンがウインクして、言った通り美味いだろ、と。
Merindoc (Shelmerdine family)
メリンドックを所有するシェルメルディン・ファミリーは、1950年代から3代にわたって、ビクトリア州でワイナリーを経営してきた。さまざまな新しい試みを行っている葡萄栽培者としてビクトリア州内でも有名だ。オーストラリアでは比較的最近始まったネッビオーロ種(バローロのあれ)の栽培にも熱心だ。
メリンドックのセラードアはヒースコートの南隣りのTooborac(トゥーボラック)地区のメリンドックに位置する。一方、葡萄畑はセラードアのあるここメリンドックと、ヒースコート北部のWilloughby Bridgeの2か所にある。
メリンドックの花こう岩質土壌(真砂土)と寒冷な気候はキリッとしたドライな白ワインとなる葡萄栽培に向いている。一方、Willoughby Bridge(ヒースコート)の鉄分を多く含んだ古代カンブリア紀の赤い痩せた土壌は、深い味わいの赤ワインとなる葡萄をはぐくむ。全く異なる性質を持つ二か所の畑で地質と気候に合った高品質少量生産の葡萄づくりを追求することで、この地区の新しいワイン造りを常にリードしてきた。
直売所(試飲コーナー)にこじんまりとしたカフェレストランを併設している。奥さんが料理しているようだ。
試飲させてもらったネビオッロの赤の美味しさに感嘆したところ、園主はウインクしながら、「我々(オーストラリアのワインメーカー)はまだ学習中だ。来年はさらにおいしくなるだろう。」と謙虚である。
Heathcote Winery(ヒースコート・ワイナリー)
街中にある。ワインストアのようだが、実はヒースコート地区の老舗ワイナリーHeathcote Wineryの直売所だ。
もちろん試飲ができるのだが、レストラン併設なので、持参した食事が無い場合、ここで食事をするとよい。(ヤラバレーやモーニントンと違って素朴である。このレストラン目当てに来るほどではない。)
Heathcote Wine Hub Cellar Store
ヒースコートには知っているだけでも20か所ぐらいセラードア(ワイナリー直売所)があるのだが、セラードアのないところもあるし、家族経営の小さなワイナリーだと、セラードアも開いていた閉まっていたり。アポが必要なところもある。一番お目当てのところ以外を毎回全部訪れるのも面倒だ。
そんな時に重宝するのがHeathcote Wine Hub(ヒースコートワインハブ)だ。ヒースコートの中心にある。
実はここに来れば、セラードア限定の珍しいワイン以外は一通りそろうのだ。
このワインハブには併設の軽食カフェもあるし、上で紹介したヒースコートワイナリー直売所にあるレストランもすぐ近くなので、二回目以降の買い出しには手間を省けて便利だと思う。
ちなみに私の場合は、一~二か所だけセラードアに立ち寄って、オキーフレールトレイルでブロンプトン・ライドを楽しみ、帰りに休憩がてらワインハブに寄って、サイクリングついでにワインを買い付けて帰るのが習慣であった。
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オーストラリアに住んでいたときは、モーニントンやヤラバレーは行きたいと思わせる魅力的なレストランが沢山あるのでどうしてもそっちへ行ってしまいがちだったが、日本に帰国した今となっては、ヒースコートにもっと行っておけばよかった・帰国前にヒースコートの希少赤ワインを大量に買い込んでくればよかったと後悔している。とりわけメリンドックのネッビオーロ赤がまた飲みたいものだ。いつになったらいけるようになるのだろうか。
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