【サンライズ瀬戸】寝台列車夜話【追憶の寝台列車】
四国、香川、高松駅。
ホームの時計はもうすぐ午後9時を指すところ。
四国を代表するターミナル駅だけあってこの時間も人の流れは絶えず、各地へ向かう列車はあっという間に多くの人を飲み込むと、それぞれの目的地へ行き止まり式のホームから発車していきます。
ども、ゆさっちです。
2日間、四国の旅を存分に楽しみました。
今は高松駅の9番線ホームで、これから一夜の宿となるサンライズ瀬戸の到着を待っています。
発車の約30分前、サンライズ瀬戸が静かに入線してきます。
早速、検札を受け、旅装を解きます。
駅で買ってきたおつまみを広げ、スキットルのコニャックを流し込みます。
出発時刻、かすかな揺れの後、サンライズは静かに東京へ向けて走り出しました。
長い長い停車駅のアナウンス。
やがて列車は夜の瀬戸大橋をスムーズな足取りで駆け抜けます。
児島を出た後、ちょっとしたトラブルに見舞われます。
音楽を聴こうと取り出したAir Pods Proのケースを開いたら中身がないでのです。
高松駅のホームで聴いていて、ケースに戻す時に落ちたか?
Air Pods ProにはGPS機能がついています。早速、追跡。
指した先は・・・・・高松駅・・・・・。
買ってまだ10日経ってないのに・・・。
高松駅の電話受付は20時で終了。
朝まで待っていたらその間にゴミと間違われて捨てられてしまうかも。
あとは車掌さんに相談か。
JR四国の車掌さんは児島で降りてしまっています。
列車はまもなく岡山、サンライズ出雲との併結準備で車掌さんも忙しいはず。
岡山発車後に相談します。
対応していただいたのはJR西日本岡山車掌区のベテランの車掌さん。
優しそうな印象のかたです。
事情を話すと「車掌室へどうぞ、お話を伺います。」
高松駅での足取り等を丁寧に聞いてくださり、どこかへ電話連絡されていました。
その間、ゆさっちは285系の車掌室の装備を見るという好機に恵まれ、意識がそちらにいっていたのは内緒。(´∀`; )
「見つかったらご連絡します。私は姫路までの乗務ですが、後の車掌にも引き継いでおきます。それまでお部屋でおくつろぎください。」
しかし、後続の車掌さんへの引き継ぎは必要ありませんでした。
姫路到着10分前、個室のドアをノックする音、車掌さんです。
「高松駅にありました。明朝にこの番号に連絡してください。最寄りの駅で宅送の手続きをお願いします。」
「あ・・ありがとうございます」
「私はまもなく下車します。あとはごゆっくりお休みください、よいご旅行を」(*> ᴗ •*)ゞ
このタイミングで見つかったということは、高松駅の駅員さんもわざわざ探してくれたのでしょう。
JRのみなさまには感謝しかありません。
いつもみなさんに助けられている、おっちょこちょいのゆさっちです。
( ̄▽ ̄;)
やっと落ち着きを取り戻しました。
流れていく夜の山陽路の車窓を眺めながら、スキットルを傾けます。
往復、寝台列車に乗るのは、初めてブルートレインに乗った時以来か。
酔いもあってか、寝台列車にまつわる様々な思いが去来します。
いくつか寝台列車の思い出をお話させてください。
(回想部分の写真は他サイトからお借りしました)
初めて寝台列車に乗ったのは、大学進学で福島から上京したとき、上京初日に最寄り駅に向かい、長崎行の「さくら」の寝台券を取りました。
「さくら」をチョイスしたのは長崎にいってみたいという想いと、東京発のブルトレの中で1番早く出発する列車で列車番号が「1列車」、ブルトレの中のブルトレというイメージがあったから。
(電車や気動車で「1M」や「1D」は複数存在していましたが、「1」は「さくら」だけだったのです。)
日の光が西に傾き、高層ビルの窓をオレンジに染める時間、東京駅の13番線ホームには深い青色に真白のストライプを巻いた長い長い車体がありました。
ホームで列車を目の前にしても、これからこれに自分が乗るんだという実感が沸いてこなかったですね。
あまりにも、今起きていることが現実離れしていて。
寝台はA寝台の上段でした。
A個室ではなく開放型2段ベッドの寝台です。
下段のかたとは、ベッドメイキングが済むまで向かい合わせに座席に座ります。
下段の方は、小さなお子様連れの女性の方。
これが「女優さん?」って思うほどお美しい方で、田舎から出てきたばかりのおぼこいゆさっちは長崎までめちゃめちゃ緊張しましたね。
今なら「ども、ゆさっちです」とか話しかけるんでしょうけど。(変態)
上段の窓はゴーグル程度の大きさ、そこから朝まで一睡もせずに外を見ていたのは、初めてブルトレに乗った興奮とこの緊張もありましたね。( ˙▿˙ ; )
当時は東京発の九州行ブルトレには、当然のように食堂車がついていました。
夕食はハンバーグというおこちゃまな選択でしたが、おすまししておいしくいただきました。
朝食は山口県内走行中だったと思います。
朝日の射す瀬戸内の海を見ながら飲む食後のコーヒーは大人の味で、自分という人間がグレードアップしたと錯覚した気分でした。
長崎駅の端頭式のホームに降り立つと、日差しも風の香りも九州だなと思いました。
路面電車の1日券を買って、長崎の坂道を駆け回った初めての一人旅。
いまだにその風景は心に焼き付いています。
ちなみに帰りは博多から「富士」のA個に乗り、大学の入学式に直行しました。
ただただ夢心地の4日間、寝台列車の旅に魅了されました。
「富士」、「はやぶさ」、「あさかぜ」、「みずほ」、「北陸」、(サンライズじゃない)「出雲」、(サンライズじゃない)「瀬戸」、「北斗星」、
「夢空間北斗星」、「カシオペア」、「トワイライトエクスプレス」
多くの寝台列車に何度もお世話になり、解放B寝台からスイートまでいろんな寝台を体験し、たくさんの素敵な想い出を残すことができました。
もう一つだけ寝台列車の想い出を話させてください。
それは新婚旅行で乗った「カナディアン号」です。
これは、カナダの大西洋岸のトロントから太平洋岸のバンクーバーを4泊5日で結ぶ大陸横断寝台列車です。
もちろん全行程乗ることはかなわず、ロッキー山脈の麓のジャスパーから太平洋岸のバンクーバーまでの1泊2日だけならということで乗ることが実現しました。
そこで感じたのは、あちらの方のおおらかさとフレンドリーさ。
ジャスパー駅で女性の駅員さんから。
「列車はいま3時間遅れで向かってます。あたたたちはラッキーよ、この間は28時間遅れたんだから」
「そ・・・そっすか」(・・;)
列車が入線してきます。
車体を洗う担当の方が洗車します。
ゆっくりと丁寧に。
遅れているから急いでちゃちゃっとやるなんてことはしません。
列車が遅れたのは自分のせいではない。
自分は決められた報酬をもらうために、決められた仕事を誠実にこなすだけ。
これが彼らにとっての仕事に対するプロとしてのプライドなのだなと思いました。
列車はさらに遅れを拡大して発車しましたが。(´∀`; )
そして深夜、家内が鼻ちょうちんを出して熟睡したころ、ゆさっちはこっそり個室を抜け出します。
列車内の探検と当時スモーカーだったのでラウンジで喫煙したかったのです。
ラウンジでくつろいでいると、恰幅のいい、いかにもアメリカの西部にいそうな(実際テキサスからの方でした)おじさんが隣の席に移ってきて話しかけてきます。
「よう、どっからきた?vacationか?」
「日本、honeymoonで来た。」
「おおう、そいつは最高だ、おごってやる。Beerか?Saki(日本酒)か?」
おじさんはウェイターに
「このラウンジにいるみんなにCoke highを回してくれ、勘定は俺に。」
そしてラウンジにいた乗客に
「おおい!彼はhoneymoonで日本から来たんだ、みんなで彼に乾杯しようじゃないか。」
「Cheers!」
ラウンジのみんなと世間話に花が咲きます。
カナダ、アメリカ、メキシコ、香港、スウェーデンそして日本。
国籍を超えて一夜限り、一期一会の友達になります。
この旅の出会いこそが原体験となり、今も旅の人との出会いを愉しみにそして大切にしています。
余談をひとつ、一夜明けて、またラウンジにいるとスタッフの方が話しかけてきます。
「おはようございます!昨日は楽しかったですね。ところでこの列車、定刻より30分早くバンクーバーに到着します。」
「30分・・・早く?」(・・;)
「はい、ではよいご旅行を」(´∀`)
昨日は3時間遅れだったのに・・・。
30分の早着とか日本では太陽が西から昇ってもありえませんよね。
そして誰もそれを聞いても焦らず、バンクーバー駅到着後も、食堂車でゆうゆうと朝食をとっているのでした。
「うーん、おおらかだなぁ」(⊙ө⊙)
さて、すっかり夜が明けましたね。
サンライズの個室に戻ってきました。
列車は三島を通過しています。
次の停車駅、熱海の間には長い長い丹那トンネルがあります。
車窓も真っ暗になるので、この間にシャワーを浴びてしまいます。
シャワーで朝のけだるさを洗い落として、部屋にもどると列車は熱海を出るところでした。
ここからはJR東日本の管轄です。
車窓に流れる駅名標の色もライトブルー(JR四国)、青(JR西日本)、オレンジ(JR東海)と変わり、ここからは見慣れたグリーンとなります。まだまだ福島は遠いけど、緑のストライプの駅名標を見ると「帰ってきた」という感慨があります。
日曜の朝を迎えた横浜駅。
平日と違って、どこかのんびりしています。
東京までは約30分、荷物をまとめます。
東京駅手前、新幹線と並び、ゆっくりとラストランです。
東京駅到着です。
夢の様な寝台列車の旅もここで終わりです。
「おうちに帰るまでが遠足」なのでしょうが、ここからは純粋に帰宅のための旅程です。
新幹線の中で駅弁をパクつきながら、早くも「次はサンライズでどこへ行こう」と考えるゆさっちでした。
(了)
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