ヴィクトリア期の暮らし。ニードルポイント
針仕事はしている最中は楽しく完成が待ち遠しく、作品がやっと仕上がったときは嬉しいものです。
今のように何でもすぐに買える時代と違い、昔の部屋の飾り付けはほぼ女性の手によって作り出されていました。
洋服やベットカバー、カーテンなど大掛かりなものからクッションや衝立、椅子の座面など小さなものまで手作りでした。
多くの図案は花や草など自然を写したものが多く、華やかなもので設われていました。
その中でもヴィクトリア期半ばに流行したニードルポイントは今でも図案集がたくさん再販されています。
フランスではウィーン発祥のプチポワンが流行しましたが、英国ではベルリンからきた毛糸刺繍が流行します。当時一式揃ったキットがベルリン会社から売り出され、気軽さから英国の貴族の間で大流行となりました。
ビートン婦人発行の『英国婦人の家庭誌』でもニードルポイントの手芸図案集を付録にするなど、当時のヴィクトリア期の女性はニードルポイントに夢中でした。またアン・ブロンテの小説『ワイルドフェル屋敷の住人』の中でも”ベルリン毛糸刺繍”の事が書かれていて熱気を帯びていた様子が伺えます。
英国アンティーク屋さんや映画の中で毛糸刺繍で施された椅子やソファなどよくみかけます。また古着屋さんではこのニードルポイントが施されたバックなどがよく置いてあります。なんとも言えないノスタルジックな雰囲気が好きで、スツールを手に入れた時とても嬉しかったのを覚えています。
そのうち、せっかくなら自分で作品を仕上げてみたいと思った時、キャスキッドソンから”ステッチ”という本が売り出されました。せっかく素敵な図案集が手に入ったのにこのニードルポイント用のキャンバス地がなかなかなく、京橋の手芸屋さんで見つけた時は嬉しかったです。
毛糸もアップルトン社のちょっと細いものからアンカー社の太めのものまで売っているので大きさに合わせて選べます。
ニードルポイントはキャンバス生地に毛糸を用いてハーフステッチで刺繍していきます。ハーフなので簡単のようですが背景全面に刺繍をするのでなかなか時間がかかります。木の椅子を買ってきて自分で座面を張って完成させたときは嬉しかったです。
ヴィクトリア期の女性を熱狂させたベルリン毛糸刺繍、ニードルポイントは1930年代の頃にも再流行したようで英国王室御用達のロイヤルアルバートも食器のその文様を使っています。
ピンクの薔薇の文様と黒い背景がなんとも英国らしく素敵です。
方眼の中にきちんとグラデーションされた多数の色彩がとても美しい逸品です。
ロイヤルアルバートは復刻シリーズがいくつかありますが、こちらのニードルポイントシリーズは復刻されておらずなかなか本国英国でも見ることがありません。
いつか、こちらの図案を模してニードルポイントのワークショップなどできたらな。と考えております。
今後も骨董市やワークショップ、お茶会などいろいろ参加したいと考えております。
アンティークや手芸など好きな皆様とお話出来ましたら幸いです。