(95)パルフェリメイク 感想
※この記事はネタバレありです。
ちょうど今プレイし終わったパルフェリメイクの感想をクリア後の余韻に浸りながら書いていきたいと思います。各ヒロイン√の感想を順に書いて、最後に総評を述べたいと思います。
かすみ√
気さくでみんなをたびたびいじってはよく笑い、恋バナ好きなファミーユのムードメーカー。
かすみさんは仁が言うように器用貧乏でオールラウンダーなところが長所であり短所で、お菓子作りの天才、恵麻さんと持ち場が被っていることもあり、ファミーユの2番手であることにずっと自信を持てなかったことを周りにはなるべく悟られないように終始笑顔で周りを笑わせている。それでも心の内には恵麻さんを超えたいという熱い気持ちを持っている、そんなまじめさも兼ね備えているのが魅力だなと思いました。
終盤は、恵麻さんとのスイーツづくり直接対決で、自信を取り戻し、ファミーユの支店を任せられるほど成長してしっかりまとまったお話だと思いました。
かすみさんは、個別√よりも他ヒロインの√でさらに魅力的に映るなと私は他√を読んでいて思いました(里伽子√の最後で、ファミーユに来た里伽子に笑って仁の近況を伝えるシーンはすごくよかったです)。
明日香√
ファミーユメンバーで唯一の高校生で、学校に通いながらファミーユのバイトも頑張るみんなの後輩ヒロイン。
明日香は仁のことを家庭教師のときはセンセ、ファミーユのときは店長と使い分けて接してくれるのですが、それがめちゃくちゃかわいかったです。
学園祭でファミーユの模擬店を出すことになったが、アクシデントが重なり自分の力不足に泣いてしまう明日香。それを見計らって仁含めファミーユメンバー全員が明日香のために頑張るシーンはすごくよかったです。「仲間」のすばらしさを感じました。
終盤、無事に仁のいる大学に進学でき、仁のことを今度はセンパイと呼ぶ終わり方はすごくきれいでよかったと思いました。
明日香√はこの作品の中で一番温かいお話だと思いました。後輩ヒロインすごく好きです。
由飛√
天真爛漫で誰とでも仲良くでき、歌がとても上手な天然ドジっ子ヒロイン。
由飛は歌がとてもうまいので、たびたびアカペラで接客するのですが、声優さんの演技が素晴らしく、私はアカペラシーンすごく気に入りました。
養女として玲愛の家にやってきた由飛はピアノの才能が認められて音大に通わせてもらったのに、玲愛は才能に恵まれず就職の道しかなかったため、姉妹二人の間にわだかまりができてしまう。天才の苦悩が現れた素晴らしいお話だと思いました(ただ一点、玲愛が弾けなかった曲を由飛も弾けなくなったシーンの意味がよくわからなかったです)。
終盤、仁が由飛に告白して振られるシーン。私も仁に感情移入して読んでいたので、由飛のあの態度には仁と同じでかなり落ち込んでしまいました(恋愛感情に無頓着なヒロイン恐るべし)。
玲愛√
ヒロイン唯一のライバル店キュリオのチーフで、他人に厳しく、自分にはもっと厳しいとてもまじめなヒロイン。何かと仁にちょっかいを出して、かまってもらおうとするツンデレの一面も持ち合わせており、金髪ツインテールのお手本みたいな娘でした。
終盤、仁と付き合い始めた玲愛は臨時のキュリオブリックモール支店のスタッフだったため、本店に戻ることに決めたが、離れ離れになった間に仁が由飛と付き合うのではないかと考え始め身動きが取れなくなってしまう。この状況が実は里伽子が発案した計画で、敢えて由飛に気があるように思わせて本店息を阻止すると判明したときは、読んでいて私は里伽子の凄さに恐怖しました(里伽子は敵に回すとマズイ)。
結果、玲愛と仁はお互いを信じあえる恋仲に発展したし、玲愛と由飛は制服交換のイベントがあったりでまた仲直りに成功することができて、すごくまとまったお話で、ここまでで一番心が動かされました。
恵麻√
本作品で一番複雑な関係性にあるヒロイン。幼少期は恵麻と仁は許嫁の関係だったが、恵麻は仁の兄と結婚し、仁は恵麻の家(高村の家)に来ることになり、結果、姉弟となる。また、その後仁の兄は海外でなくなってしまう。こんなに複雑な家庭環境、初めて見ました。読みながら理解するのにすごく時間がかかりました(時系列は間違っていそうだけど、内容はあっているハズ)。
仁にとって、恵麻は初恋の相手でありつつも、今は姉として(家族として)接しなければいけない。直接的に愛は伝えられないけど、恵麻の事をすごく想っているんだなというのがすごく伝わりました(恵麻の結婚相手である兄の代わりになるためにタバコを吸い始めたり、毎月二人で食事をしたり)。
読んでいてこの先どういう展開になるんだろうと思っていたら終盤に、実は恵麻はもともと仁が好きで、恵麻にゾッコンだった仁の兄は、仁の代わりだったと告白したシーンは、正直ちょっと驚きました(兄弟の愛情だと思って読んでいたので、男女の愛情だとは思わなかったです)。
内容的には、かなり重めで仁の兄の視点の過去話はほとんど出てこなかったのでそこだけちょっと気になる点ですが、恵麻と仁と里伽子でファミーユを再始動させる終わり方はとてもよかったと思いました。
里伽子√
共通√でたびたび現れてはファミーユ初期メンバーとしていろいろな知恵を授けてくれたり、仁の元カノで仁が困ったときには「しょうがないなあ」と言って何かとおせっかいを焼いてくれる優等生的ヒロイン。
と思っていました。最初は。
恋愛ADVの多くは男性主人公なので、どうしても男視点でヒロインの行動を解釈してしまいがちで、それこそがこの√の面白いところだと思いました。仁の行動に対して、里伽子がどう思っていたのか、本当はどうしてほしかったのか、それがしっかり描写されているので、ヒロインがただの記号的な登場人物ではなくて、本当に生きている人間のように感じました(人間の多面性の描写が上手い)。
ファミーユが火事になったときに、仁のために何とか店内から位牌を持ち出すことに成功した里伽子だったが、代償に左腕に大けがを負ってしまい動かなくなってしまった。料理を右手で食べていたり、料理を右手で作ったり、左利きの里伽子が右手を使っている描写はたくさんあったのに全くこの真相に気づけなかったので、種明かしがあったときにめちゃくちゃ驚きました。頑なにファミーユに復帰しないことやその一方ではファミーユの助けになろうといろいろ裏で手を回したり、そういった今までの里伽子の行動が理解できた時、思わず涙が出ていました。
特に泣いたのが、ファミーユが火事に遭って、恵麻と里伽子は二人とも失意のどん底にあったとき、仁は里伽子はしっかりしているからと言って恵麻の方に行ったっきり一週間も里伽子のことを放っておいたシーンです。あのシーンの里伽子の、本当は叫びたかったのに、仁に頼られる存在である自分を曲げないために心の中でつぶやくだけにとどめたのが本当に悲しかったです。里伽子だってただの人間で、完璧人間ではないんだなと痛感しました。
里伽子√はバッドエンド→ノーマルエンド→トゥルーエンドと進める必要があるので、だんだんと変化する仁と里伽子の関係性を見ていると、ヒロインの中で里伽子が仁に一番お似合いだなと思いました。
総評
スコア
95/100 圧倒的高評価で幅広い人におすすめできる作品
感想
最初から最後まで会話のテンポ良くて、各ヒロイン√をそれぞれ印象の違ったお話で、途中で飽きることなくとても面白い作品でした。
この作品のシナリオ担当、丸戸史明さんの作品は「冴えない彼女の育てかた」を以前に読んでいたので存じ上げていたのですが、相変わらずの完成度ですごかったです。丸戸さんの魅力は、キャラクターを記号化しないことと、人間の多面性をより濃く表現できる文章を書くことだと私は思います。一見地味だと思っていたヒロインが読後には裏ボスのように感じられたり、パッケージヒロインがそれに比べて影の薄い印象になっていたりするのが丸戸史明作品あるあるだと思いました。また、今作では、それに加えて伏線回収というギミックが加わっていたので、完成度がすごかったです。改めて丸戸史明さんが好きになりました。
丸戸史明作品で私がまだプレイしていない作品のうち、丸戸史明さん本人が最高傑作と言っていた「White Album2」をこの冬にいよいよ触ってみようと思います。すごく楽しみです。