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2023年度IVR専門医試験 解答・解説

2023年度に行われた第22回IVR専門医試験 (放射線カテーテル治療専門医)の解答・解説です。全80問です。

1.「国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告(Pub.103)」で組織加重係数が高い組織(臓器)はどれか。2 つ選べ。
a.脳
b.胃
c.乳房
d.甲状腺
e.生殖腺

[解答] b, c
[解説]
組織荷重係数は、各臓器に割り当てられたリスク割合である。
全身の組織加重係数を足し合わせると1になる。

0.12: 乳房・肺・骨髄・胃・結腸
0.08: 生殖腺
0.04: 甲状腺・肝臓・膀胱・食道
0.01: 脳・皮膚・骨皮質・唾液腺
0.12: 残りの組織

2 . 確率的影響はどれか。
a.脱毛
b.発癌
c.不妊
d.奇形
e.白内障

[解答] b
[解説]
確率的影響は、発がん・遺伝的影響に着目したものである。
線量の増加により発生確率は高くなる。低い線量でも、線量に比例して発生すると過程する「直線しきい値なしモデル (LNT)」が使用される。

3 .放射線診療従事者の線量限度で正しいのはどれか。3 つ選べ。
a.皮膚の等価線量限度は300mSv/年である。
b.妊娠可能な女子の実効線量限度は5mSv/3 月である。
c.男子の実効線量限度は100mSv/5 年かつ50mSv/年である。
d.眼の水晶体の等価線量限度は100mSv/5 年かつ50mSv/年である。
e.妊娠中の女子の腹部表面の等価線量限度は、本人の申出等により病院または診療所の管理者が妊娠の事実を知った時から出産までの間について、5mSvである。

[解答] b, c, d
[解説]
職業被ばくは、業務従事者の職場起源の被ばくを指す。
健康に影響が生じうる線量の1/10未満を目安に規制している。

皮膚の等価線量限度は 500mSv/年 である。
妊娠可能な女性の全身の実効線量限度は 5mSv/3月 である。
男子の全身の実行可能線量限度は 50mSv/1年 かつ 100mSv/5年 である。
眼の水晶体の等価線量限度は 50mSv/1年 かつ 100mSv/5年 である。
妊婦の腹部表面の等価線量限度は 2mSv/妊娠期間である。妊娠を申し出た時から出産までを妊娠期間として取り扱う。

4 .血管造影の患者被ばくの低減策で正しいのはどれか。2 つ選べ。
a.照射野を絞る。
b.拡大透視を用いる。
c.パルスレートを下げる。
d.X線管を患者にできるだけ近づける。
e.検出器を患者からできるだけ遠ざける。

[解答] a, c
[解説]
患者被ばく低減策の例は以下がある。

照射野を絞る。
透視時間を最小限に抑える。
検出器の拡大機能を最小限に抑える。
パルスレートを下げる。
X線管を患者から出来るだけ遠ざける。
検出器を患者に出来るだけ近づける。

5 .医学研究についての記述で正しいのはどれか。2 つ選べ。
a.利益相反が生じるので企業から研究費の提供を受けるべきではない。
b.学会や雑誌での症例報告は必ずしも倫理委員会の承認を得る必要はない。
c.過去の症例をまとめた研究は必ずしも倫理委員会の承認を得る必要はない。
d.前向き研究のデザインを決めるために過去の症例の臨床情報を参考にした。
e.前向き研究では統計学的有意差が得られた任意の時点で研究を終了してもよい。

[解答] b, d
[解説]
a. 研究の資金源は、関係企業等から資金や資材の提供等を受けている場合、その旨を記載する必要がある。禁止はされていない。b. いわゆる症例報告は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する 倫理指針」でいう「研究」には該当しない。e. 前向き研究では、あらかじめ定められた期間または期日をもって観察を終了する。

6 .「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」で、造影剤腎症のリスク因子でないのはどれか。
a.加齢
b.片腎
c.慢性腎臓病
d.NSAIDsの継続内服
e.ループ利尿薬の予防的投与

[解答] b
[解説]
2022-11の類似問題。
造影剤腎症 (contrast-induced nephropathy: CIN) 発症のリスクファクターとして、"CKD・加齢・糖尿病"が挙げられている。"予防的利尿薬使用・NSAIDs"は使用を推奨しないとされている。"片腎"はCIN発症リスクを増加させるというエビデンスは明らかではないとされている。

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