【事務長業務実践書を作成してみる】第1章その3 トラブルバスターとしての事務長のお仕事
「事務長のやるべき目的的テーマ」記事で、事務長が推進する目的別の経営・運営テーマについて述べましたが、今回はトラブル分類で何をすべきか述べます。
少しややこしいかもしれませんが、目的的なテーマは全体を俯瞰して進める中長期テーマ、トラブル対応は喫緊の課題を解決する短期中期テーマと考えてください。
日々さまざまな問題が生じるため、その都度、現状を把握し問題発生の要因を分析し、あり姿とのギャップを埋めるために計画した上で、リーダーシップ、チームビルディング、組織改善、業務プロセス見直し、情報システムの改善など、総合的なアプローチをもって、効率的に進めます。
① 財務的な問題
問題
収益不足、コスト管理の不備、保険診療報酬の遅延、外注費用増大
対応業務
・財務モニタリング(月次)と部門別収益分析による原因究明
・収益最大化の実効性の高い策の実行(自由診療拡大等)
・コスト削減の実効性の高い策の実行(予算修正、助成金活用等)
・保険請求事務の効率化と適正化
・医療系人材紹介会社との連携整備
② 人材関連の問題
問題
コミュニケーション不足、離職率の上昇、採用難、ハラスメント
対応業務
・会議やITツールを活用したコミュニケーションの促進
・スタッフの再配置、業務再編
・要員充足(異動、採用、派遣スタッフ導入)
・業績目標管理、人事制度の導入
・職場環境改善(設備・機器の更新、福利厚生充実)
・業務標準化、ITや設備・機器活用による業務負荷軽減
・スキルアップ支援とキャリアパスの明確化
・メンタルヘルスサポートとハラスメント対応体制の整備
③ 患者満足度の問題
問題
患者対応・接遇の質の低下、待ち時間の長さ、院内サービスへの不満
対応業務
・患者、家族の声を集約
・業務ルール見直しによるサービス向上
・待ち時間対策を検討し迅速に実施
・情報提供方法・手順・内容の改善
④ 法的・規制遵守の問題
問題
医療法や労働法、個人情報保護法など法規制遵守の必要がある
対応業務
・患者、家族の声を集約し対応する体制の整備
・業務ルール見直しによる患者サービス向上
・待ち時間対策を検討し迅速に実施
・患者、家族への情報提供方法・手順・内容の改善
⑤ 競争力の維持と戦略立案
問題
周辺病院との競争激化、患者減少、地域医療ニーズの変化
対応業務
・自院及び近隣医療機関の強み弱みを知り差別化戦略をたてる
・地域連携の強化を図る
・実効性の高い患者数増加策を実行する
・実効性の高い診療単価増加策を実行する
・HPやSNS活用した情報発信を実践(マーケティング戦略)
このように、事務長は、経営方針に基づいて計画的に目的的なテーマを推進するとともに、日々生じる課題解決に取り組み、収益や組織体制・業務等の健全化を継続的に進めます。 つまり、前項でも述べたように、日々のトラブルへの取り組みのその向こうに目的的テーマが自ずと見えてきますので、その目的を強く意識して事務長業務に適正に取り組んでいくことが要となります。
最後に、これらの日々のトラブルの解決手法を経営コンサルに依頼しては無駄です。具体的な解決には体制と計画を組んでプロジェクトとして進める必要がありますが、コンサルの領域ではそこまでやりません。
また、病院の特性やゴールが異なる他院の成功事例の導入で、課題がきれいさっぱり解決されるなんてことはあり得ません。
まず、事例情報を集め、すぐ取り入れられること、前提や目的が違うので改変が必要なこと、捨ててもいいことに分類して、自院の課題にあうやり方を考え、トライアンドエラーで手法を研鑽しましょう。