【R6年診療報酬改定】【生活習慣病管理料(Ⅱ)】予想通りに混乱中
1.外来機能における生活習慣病にかかる疾病管理の見直し
「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症」の三大生活習慣病が、【特定疾患管理料および特定疾患処方管理加算】の対象から外され、新設される【生活習慣病管理料(Ⅱ)】の対象となりました。これは再診回数に占める特定疾患管理料の算定回数割合が高いため、特に内科系のクリニックや病院に大きな影響が出ています。今まで算定が簡易だった特定疾患管理料から外されると、外来診療単価が約2,800円減り、大きな収益ダウンになるため、自己防衛的に少なくとも検査が包括されない生活習慣病管理料(Ⅱ)の算定が必要になります。患者さんにとっては、今までは、高血圧、脂質異常、糖尿病で通院していても、口頭での指導はあっても文書での指導はほとんどされてこなかったことから、ほぼ同じ自己負担で今までより質の高い指導を受けることができるようになるというメリットがあります。さらに、指導の中で適切な検査が定期的に効率的に行われれば、新型コロナ感染症等で遠のいた患者の足も適切なサイクルに戻り、医療機関の経営を安定させる狙いもあるでしょう。結果的に、予防的措置により健康寿命が延びれば、医療費削減にもつながるとの見込みもあるでしょう。
けれど、残念ながら、現場は厚労省の思惑通りには動いていません。
2.地域医療に悪しき影響が出る?
R6年診療報酬改定に係る議論と調整段階において、「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症」の三大生活習慣病を【特定疾患管理料および特定疾患処方管理加算】の対象から外すことについては、大きな抵抗が医療機関側にありました。「外す理由が「【特定疾患管理料】と【生活習慣病管理料】との疾患が重複しているから」で、「代替案が総合的管理なので非常に手間で大変な【生活習慣病管理料(Ⅰ)】か、新設された簡易版だが診療単価が約半分の【生活習慣病管理料(Ⅱ)】である」と考えている為です。
つまり、「楽して稼げていたのに、簡易版でも面倒な手間のかかるものにしたら、うまくいかない。うまくいかないと算定が減るので、結果的に地域医療に悪い影響を与える。すべて医療費削減の為に無理を通した厚労省が悪い」という理屈です。現に、6月からの算定開始ですが、各医療機関ではいろいろと課題が出ているようです。
3.なかなか軌道に乗らない理由
①文書での指導はなかなか手間がかかる
電子カルテであろうが手書きであろうが、やはり療養計画書の作成はとても面倒です。医師の負荷を減らす工夫を準備すべきでした。
②療養計画書のひな型の出来が悪い
【生活習慣病管理料(Ⅱ)】用の療養計画書ひな形が提示されていますが、残念ながら、あまりよく練られていません。【生活習慣病管理料(Ⅰ)】用の療養計画書から、項目を絞って、患者さんにわかりやすくしたつもりなのでしょうが、例によって指導に至る前提や診察室の中での医師と患者さんのやり取りおよび今後の診療計画等を想定していないので、枠だけ作っときました的な雑な仕事、やっつけ仕事です。
③多職種連携がうまく理解されていない
生活習慣病管理の質の高い指導において、医師の診察と検査に加え、多職種の連携により指導に厚み(血液検査・栄養指導加算・リハビリテーション等)を出すことが望まれています。
計画段階で医師と多職種か協業し時間をかける生活習慣病管理料(Ⅰ)と違って、(Ⅱ)はまず医師が達成目標と行動目標を患者さんと握ることからのスタートです。
しかし、指導に手間がかかり、療養計画書が書きにくいため、医師から多職種に丸投げしてしまう状況が早くも始まっているように思います。
医師による指導という軸がしかりしていてこそ、多職種の厚みが成立します。
最初から看護師が事前準備と問診をして、医師はサインだけして、また看護師が患者のサインをもらうような手順では厚みがでませんし、継続性も担保できません。無理やり医師は話すだけのレベルに下げることは避けるべきです。
④質の高い指導の意図が浸透していない
医師のやり方に属人的に依存するのは医療の性質上致し方のないことです。しかし、患者さんの状態にあった指導を継続的に行うことが、最も重要です。当該の生活慣習病にかかる疾病管理の見直しは、これを実現するよい機会でもあります。質の高い指導の実現という意図をしっかり医師及び医療従事者が理解することが肝要です。
引き続き、計画書のひな型を検証する記事で、上記の視点を証明していきます。