おいしいを大事にしよう

「クインルージュ」という、シャインマスカットを越えるブドウが生産されている。
長野県限定で、腕の確かな農家にだけ苗木が販売。
品質の良いものだけが、今のところ販売されているらしい。

お金持ちのファンがおり、市場に出るや否や買い占めてくれるから、ますます貴重品になっている。
一房1万円くらいで取引されているのだという。
何とかこのブドウが、安くならないこと。
うまく作れなかったものは、クインルージュと名乗ることを禁止して、本当においしいものだけを流通させてほしいと思う。

ブランドの価値は、ダメな農産物を混ぜないことによって守られる。
長野県内で生産していても、おいしくないものが生まれることがある。
おいしくないものが育ってしまう樹がある。
その時には、その樹を切り倒す勇気を持ってほしい。
おいしいを守るために、おかしな妥協は禁止だ。
 
せっかくシャインマスカットという、作りやすくて、おいしいブドウを開発した。
普通に手間をかければ、おいしい房ができる。
でもこの苗木を大切にしなかったために、質の悪いシャインマスカットの生産を許してしまった。
大玉になっていない、こつぶのシャインマスカット。
皮の硬いシャインマスカット。
甘くないシャインマスカット。

結果として、シャインマスカットという名称で、市場に玉石混交した製品があふれてしまった。
こうなると、悪貨は良貨を駆逐する現象が起きる。
安いけれど、必ずしもおいしくないシャインマスカットばかりになってしまう。

そういうシャインマスカットが、名前を汚していく。
一房2000円出して、おいしくないシャインマスカットをつかませるくらいなら、一房5000円のままで質を保証したほうがいいだろうと思う。
誰でも作れるようにすることは、農家を守ることに繋がらない。
消費者は安物を欲しがる。
安物を欲しがるくせに、質の良いものを欲しがる。
お金を出すつもりのない、金のない消費者をまともに相手にしてはいけない。

おいしい農産物を作るためには、それだけの手間がかかる。
その手間と技術に対して、きちんとお金を払うつもりのある人に、いいものを届ける。
手間のかかっていない、そっくりさんでもいいから、それらしいものが欲しい人には、そういうものが届くようにする。
そうすれは、本物と、そっくりさんはやはり違うということが認識されて、本物の価値がきちんと認識されるようになる。
 
日本は、食べないとわからないものに、平気で偽物を混ぜる文化が育ってしまっている。
安いけれど、味から何から違う、見た目だけそっくりなもの。
「かにかま」のように、偽物を謳って、その良さをPRしているものは、その分野の本物だ。
でもおいしいものを作る手間を惜しんで、大量に二流品や、三流品を一流品のようにして市場に流通させる行為は、結果として一流品をなくしてしまう。

ナショナルブランドと違って、農産物の一流品は食べてみればわかる。
おいしい時期を逃さず、わかる人の手元に届ける。
その当たり前のことが、一流料亭に行かなくても手にできる世の中にすることが、結果として、多くの人を幸せにすると思う。
おいしいものが、おいしくないものと混ざらずに流通されることを本気で願っている。

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