~白と黒と息と灰~
3人用
穂高 鶴羽 (ほだかつるは)(女)
汲沢 流 (ぐみさわりゅう)(男)
鞍月 昌 / 鞍月 朝霧(くらつき あきら/あさぎ)(女性推薦) 1人で演じる
【鶴羽】N
「貴方はいま、息をしていますか…?」
【鶴羽】N
私は穂高 鶴羽(ほだか つるは)高校3年生、受験で毎日時間に追われている。いつもの様に朝起きてご飯を食べ、授業を受けては帰って復習。予習の余裕は無い。
努力しても頑張っても結果が結ばれない悲しい女子高生という事だ。受験のストレスもあってか3年前の記憶が無いの。。
【流】
「おーい!鶴羽。」
【鶴羽】N
彼の名前は【汲沢 流】(ぐみさわりゅう)。
何かとお節介を焼いてくる。
明るくてお調子者の男の子。
【流】
「もう春だよなー!気持ちいい!少し肌寒いけど…って鶴羽、体調崩してないか?なんか顔色悪いぞ?ちゃんと飯食ってるのか?」
【鶴羽】
「おはよ…(はぁ、朝からうるさいなぁ。)
食べてるし寝てるから!」
【流】
「おォ、朝からツンデレですねぇ鶴羽さんは!」
【鶴羽】
「デレてないし朝からお節介全開の流が鬱陶しいだけだから!」
【鶴羽】N
人に付きまとわれて落ち着ける時間なんてない。
これに加えてもう1人厄介な奴がいる……
「鞍月 昌(くらつきあきら)」だ。
物静かで不思議な性格、幼馴染だけど何か関わりずらい小柄な子。いつからか不気味に笑うようになった。何故か好かれている。
双子の姉が居たが今はもう……
【昌】
「ジーっ」
【鶴羽】
「何か寒気がする……っ!まさか……」
「(はぁ、やっぱり)」
「そんな所から観てないで出てきなさい、何してんのよいつも離れた所から。」
【昌】
「いや、鶴羽が流といつも仲良いなって観察してノートにまとめてるだけ」
【鶴羽】
「ノートにまとめるって?!気持ち悪いからやめて!」
【昌】
「……フヒヒ」
【鶴羽】N
これがアタシの日常だ。勉強なんて集中出来るわけが無い。昌に関してはカマッテちゃんがエスカレートして無いだけマシ。
流はお節介が過ぎて、家に帰っても毎日LINEしてくるし……私の日常って… 終わってる!
あ゛ぁーもう!静かに勉強させて!
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【流】N
俺には彼女がいる、だけど鶴羽の事は大事だ。
それとこれとは別の問題で
好き、嫌いじゃなくて。なんて言うか……
そう!友達としてほっとけない!
彼女にもそれは了承済みだし、わかってもらってる。マジでいい彼女だよなぁ。
ってこんな話はいいか、鶴羽とは幼馴染でもないしただ親同士が同級生ってだけで
初めて会ったのは高校に入った時、同じクラスで親同士が顔を合わせた所、そこから俺との関係が生まれたんだ。
何だか妹みたいでほっとけ無くてね、鬱陶しいと思われてるかもだけど俺は鶴羽が大切だ。
【昌】N
私は……フフ…いえ、いつもの事なので気にしないでください。
鶴羽とは幼馴染で私の大好きな人。
私、周りから見たらジメジメして気持ち悪い奴だと自覚してるんですよ。
私、ノートに…フフフ… あぁいえ。
趣味のことはどうでもいいですね。
鶴羽が大好きでよくストーカーと間違われるんです、それに職務質問も日常で大変なんですよね。
何よりも大切で大好きな鶴羽…
私の全てをあげてもいいくらい愛おしい……
そうだ、鶴羽人形でも作ろうかな……
【鶴羽】N
唯一2人とクラスが違うのが不幸中の幸いだ
休憩時間は隠れて、昼のお弁当は一人で食べる。
2人から逃げるのは容易ではない。
朝と夕方は流石に見つかるけど……
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【昌】
「……つーるーはーちゃん」
「あぁ可愛いねぇ、私の事本当は好きなんだもんねぇ。授業サボって作ったかいがあったよぉ」
【流】
「お!もう出来たのか?流石、元手芸部で服屋の娘!相変わらず気持ち悪いけど、昌は鶴羽の事大好きだな!午前中の時間で完成するとは……」
【昌】
「っと言うか、流。私の鶴羽に馴れ馴れしい。
それだけ仲良さげで、流は鶴羽が昼休み何処にいるか知らないの?」
【流】
「それがさ、どこ探しても居ないんだよな。屋上は許可がないと入れないし、1回校内中探したんだけど見つからなくてな。」
【鶴羽】
「今は使われていない旧校舎の倉庫、やっぱりここは落ち着く。流石に見つからないと思うけどね
少しホコリ?臭いけどそれはしょうがないよね!
でも何だろ。前から気になってた、何かホコリと言うかなんと言うか。。
まぁいっか、ここから見る景色好きだし。
ご飯も食べるのに支障はない、それだけで私は十分だし…って!!もうこんな時間!教室戻らなきゃ!」
【流】
「あーやっと授業終わったよ。マジで今日は面倒臭かった。体育とかさ、音楽、美術とかそういうのだけにして欲しいよなぁったく。」
「なぁ昌もそう思うだろ?ってもう居ねぇや。」
【昌】
「流は面倒臭いからな、今日は残念だけど鶴羽とも一緒に帰れない。
本当は私は知っているんだ。鶴羽の事。
だから今日は行かなくちゃ行けない。
……フフ。私だけの秘密、だから知られちゃいけないんだよ。 フフ……あははは…」
【鶴羽】
「今日は、何にも起こりませんように。。
ってあたしバカみたい…
普段が起こり過ぎてるだけなのに、本当なら何も起きないのが正解なのに。考えすぎかな?」
「疲れてるのかな…
でも何でだろ、こういう風に考えていると何も起きない。考えて毎日帰れれば良いけど、そんな事したら私のメンタル持たなくなるしな。」
【流】
「おーい!鶴羽!」
【鶴羽】
(はぁ……言ってる側からこれだ。無視無視)
【流】
「聞こえてるんだろ?まったく。
昌知らないか?普段ならお前のところ行くと思ったんだけど。」
【鶴羽】
(無視無視!…ん?昌?そう言えば視線も寒気も感じないなぁ)
「昌がどうしたの?別に良いでしょ?用事でもあるんじゃないの?」
【流】
「いや、そうなんだけどさ。今思うとあいつ毎月決まった日にちに直ぐ居なくなるんだよ。
3日の日は必ず。」
【鶴羽】
「考えすぎじゃない?気になるなら直接聞いてみれば良いじゃない。」
【流】
「考えすぎなのかなぁ?まぁそれなら良いんだけど。何か思い詰めてる感じがあったからさ、なかなかそう言うの聞けないじゃんか。」
【鶴羽】
「流って本当そういう所メンタル弱いわね、いつもはガツガツ聞いてくるくせに……」
【流】
「うるせーなぁ、別に良いだろ?俺だって気遣いくらい出来るし!」
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【昌】
「フフフ…私の愛おしく可愛い妹ちゃん、大好きだった学校に一緒に居れて嬉しいねぇ。
連れてきてあげてほんと良かった、ホントに良かった。
大好きな大好きな【鶴羽】ちゃんも一緒だし私は本当に嬉しくて悲しくて涙が出るよ。フフフ…
大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな!! あははははは!!」
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【鶴羽】N
家路を急ぎ私は帰宅後シャワーを浴びて机に向かった。だけど今日はペンが進まない。
流が言った「3日の日に」という言葉が何故か頭から離れなかった。
流のせいだ、急にあんな顔で真面目なこと言うから調子が狂ったんだ。なんか疲れたな…
私はそのまま机の上で寝てしまった。
am 2:00 汲沢家
【流】
(もうこんな時間か)
「明日休みで良かった!思ったより配信で盛り上がったからな!趣味で始めた配信も今は普通に楽しいしキリよく終わらないと……
ん?!誰だよこんな夜中に石投げてくるやつは!」
「あ、昌?ん?いや気のせいか?
イタズラかよ…ったく。昌が居るはずないよな、そもそも俺の家知らねーし、俺も疲れてるんかな…
シャワー浴びて寝るとするか。」
【昌】
「流、おやすみなさい…私を詮索しないでね。」
「だって流は関係ないもの」
「私と鶴羽の事だから…フフフ」
「さてとここから反対側だよね、鶴羽の家」
「フフフ…フフフフフフ…」「今から会いに行くね、鶴羽」
am 2:30 穂高家
【昌】
「鶴羽…こんばんは。エヘヘ…
来ちゃった… 電気付けたまま寝ちゃったのかな。
机にうつ伏せてる影がまた可愛い…
この人形も可愛くてたまらないし、、
もっと早く作っておけばよかった…」
「ねぇ、鶴羽」
「鶴羽は今どんな夢を見てるのかな…」
「私はね、ずっと鶴羽の事みてるからね…フフフ」
「ずっと一緒……ずっとね」
am 3:45
【鶴羽】N
……あなただれ?……これは?夢?
ここはどこなの?白と黒の天井?床?
解らない、見回しても何も無いのに足下には膝くらいまでの薄いグレーの粉。ねぇ、あなたはだれ?
小さな女の子が佇んでる。
粉に埋もれて足が動かない。こっちに向かってくる少女。とても怖い。
顔が見えない。マジックでぐちゃぐちゃに描かれて塗りつぶされてる顔。
【鶴羽】
「!? ……はぁ,なんだったの今の夢…」
「変な汗かいちゃったな、今何時?4時前か……
明日は休みだし、明るくなる前に汗を流してもう一度寝よう。」
【鶴羽】N
私はその後、高熱を出して1週間ほど休んだ。
その間の2人と来たものの……
【流】
「もしもし?元気かー?
風邪ひいたって珍しいな、悪いものでも食ったんか? あーそれは無いか!あのさ、お前のクラスの奴からノート預かってんだわ。だからこれから行っていいか?
もし無理ならまた明日行くけどどうする?
おーい!聞いてるかー?」
【鶴羽】
「聞こえてるよ、そんなに大きな声出さないで…
頭痛いの… 解ったからノート持ってきて。
少し熱下がったから」
【流】
「了解!んじゃ今から行くわ!」
ピンポーン
【鶴羽】
(?だれよこんな昼間に。)
【流】
「おーい!来たぞー!大丈夫か?上がるぞー?」
【鶴羽】
(え?もう来たの?ってか家の前からかけてきた?)
「待って!あたし今部屋着だし鍵かかってるから!そもそもなんでこんなに早いのよ!」
【流】
「え?何でって目の前で電話してたから!
その方が大丈夫な時直ぐに持ってこれるだろ?」
【鶴羽】
(ほんと馬鹿!馬鹿にも程がある)
【鶴羽】N
流とはこんな感じだ、、
馬鹿過ぎて呆れを通り越す事が有りすぎる。
普段と変わらず鬱陶しいけど
私はたまに、流のお節介が助かっていた。
【昌】
「ジー」
【鶴羽】
(……寒。いやこれは悪寒だ)
【昌】
「ジー」
【鶴羽】
(何か解るけど解りたくない
恐る恐るカーテンを開けて玄関先を見てみる)
「はぁ……何やってんのそんな所で……」
【昌】
「鶴羽こそ何してるの?寝てたんじゃないの?」
「寝てなきゃダメでしょ。ねー【ツルハちゃん】」
【鶴羽】
(何か人形に話しかけてる……)
「少し良くなってきたから友達のノート見ながら復習してるの!その前に……
何その人形… いつから持ってんのよ。」
【昌】
「え?可愛いでしょ…?これ先週授業中に作ったの。【ツルハちゃん】て言うの。」
「こうやって持っていればずーっと一緒に居れると思って……フフ、フフフ…」
【鶴羽】
「キショ!
(思わず声が出てしまった)
やめてよそう言うの!心配して来てくれるのは嬉しいけど、そんな事しなくても一緒に居るでしょ?
何考えてんのよ、もう!」
(はぁ、また具合悪くなりそう……)
【鶴羽】N
こんな感じだ。
昌に関しては気持ち悪さが際立って来てる
それにあの人形、私呪われるの?
本当ああいう所が無ければ、まだ良いんだけど
ノイローゼになりそうになる。
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【流】N
そしてあれから3週間が過ぎようとしている
そう、【 3 】だ。
また3の日が近づこうとしていた。
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【昌】
「アハハ……あれから3年。三回忌も終えて……エヘヘ」
「!?、誰だ!!」
「気のせい…?いや…まさかね」
【流】
「昌のやつ、やっぱり何かおかしい。。」
「後をつけてみるか……」
【鶴羽】
「あれ?今日はあの2人何もしてこないな、
どうしたんだろ…って何言ってるのよあたし!
でも、何か調子狂うな。これはコレでなんか腹立つ!見つけ出して文句言ってやる!」
【昌】
「フフ…フフフ」
「さぁ私の可愛い妹ちゃん、逢いに来たよ。
……え?何で荒らされてるの?
最近誰かが入った?なんで?どうしてこんな所に…
有り得ない、誰も近付こうとしなかったのに!
ここは老朽化が酷くて立ち入り禁止のはず……」
【流】
「昌、なんで旧校舎の方に行ってんだ?
立ち入り禁止だから何も無いはずだけど、とりあえず様子を観るか。
ん?倉庫?倉庫に何の用だ?
ますます怪しいな…
何か持ってるけど…ポリタンク?
あいつ何する気だ?何かヤベー事に巻き込まれてるんじゃないよなこれ。 ……ヤベッ」
【鶴羽】
「もー、どこ行ったのよアイツら!
流石にこれだけ探したんだからもう居ないよね…
部活してる子にでも聞いてみようかな。。」
「ねぇ、あなた。汲沢と鞍月の同じクラスの人でしょ?2人見なかった?
っえ?旧校舎の方に行った?
まさか、私の事探して旧校舎に向かったとか?
……まさかね。でもあそこは私のお気に入りの場所、もし見つかってお昼の時間も邪魔されたら…
よし、行ってみよう。」
【昌】
「誰!?そこにいるのは!
あなたでしょ?ずっと私の後を付いてきてるのは。何か気配がしてたけど、見当たらないから無視してたけど。出てきなさい!
ここまで来たなら逃げられないからね!」
【流】
「ごめん、俺だって。隠れて付いてきて悪かった。
昌が3日になると、授業終わって直ぐに消えるから気になって付いてきたんだ。
だからその手に持ってるナイフを下ろしてくれないか?」
【昌】
「フフフフ…アハハ……アハハハハハ!
まさか流に付いてこられるとは思わなかったよ…
鈍臭いのにそういう事は得意なの忘れてたわ…フフ
これはね、私にとって大切なことなの。だから邪魔しないで?……オネガイ」
【流】
「お願いって、何しようとしてんだよ!
(ヤベェ、脚が震えてきた)」
【鶴羽】
「ちょっと2人とも!こんな所で何してるの!」
「ちょっと、えっ?本当に何してるの?」
【鶴羽】N
昌の右手にナイフ、左手にポリタンク
その前で足がすくんでいる流
何この状況、なんなの、どうなってるの?
私はパニック起こす寸前だった。
【昌】
「あらあら、鶴羽ちゃんも来ちゃったの?
私の可愛い可愛い大好きな鶴羽ちゃん…エヘヘ
せっかくだから教えてあげようかな……フフフ」
「鶴羽…ちゃん。3年前の事覚えてる?覚えてないよね?覚えてたら私が誰か解るもんねぇ…フフ
私の妹を殺した張本人の鶴羽ちゃん。」
【鶴羽】
「何言ってるのよ…
あれは事故だったんでしょ?
私何もしてないし、あの現場には居たけどアタシ何もしてないって…!
っえ?!今なんて言ったの?妹?え?何を言ってるの?」
【流】
「さっきから何の話しをしてるんだよ。」
【昌】
「流は黙ってなさい!そのうち解るわ!
これから私が話すことになるからね。」
【昌】M
3年前の春、私と妹の昌はいつもの様に学校から家路に向かう途中だった。
鶴羽と3人で通って、帰りも3人で帰って。
事故があったその日は、私と妹の昌で先に駅に着いていた。そう、鶴羽、貴方は忘れ物を取りに行って後から追いかけてきたの。
夕方、人が多い時間帯の駅に走ってきた!
人を掻き分け私たち2人の元へと駆け寄ってきた。その途中、貴方に押された人が昌にぶつかり……
昌はその反動で線路に落ちた!
タイミングが悪かったと思う人もいた、だけど違う!私は横目に電車が来るのが見えた、その時の昌の顔を今でも忘れない!そう、鶴羽。貴方が走ってさえ来なければ!
どうせ同じ駅で降りるはずだったでしょ!
私の昌を返してよ!2人で1つだった私の妹を返してよ!
【鶴羽】
「……」
「貴方、朝霧なの……?」
【昌/朝霧】
「だから言ってるでしょ?私は姉の朝霧、昌はあの時死んだ!貴方は眼を伏せていたから分からないでしょうね?
あの子が2つになる所を!唯一2人で産まれてきた私の妹、誰でもない掛け替えの無い人が目の前で裂かれる所を!
私は発狂し、泣き叫び、声が出なくなるまでその場から離れられなかった。いや、離れることが出来なかった。」
【流】
(そんな事があったのか……
何も知らない俺が口を挟んで良い問題では無いな…)
【昌/朝霧】
「私は昌の半分になった身体から、首から上を切断して隠した。一緒にいたかったから。
どんな姿になろうとも私はあの子といたかった!
学校が好きだった昌のために、入学予定だった同じ高校のこの場所に頭を埋めたの。
そして、ここにある灰は昌そのものよ。
墓を掘り返し、頭を埋めた上に灰を残した。」
【鶴羽】
「それってやっぱり……」
【昌/朝霧】
「なに?何か知ってそうだけど?」
【鶴羽】
「私、私……」
「私、2人に邪魔されない様にここに来て一人でお弁当を食べてたの。その時ホコリでも石灰でもない、この粉に気づいたの。
でもそんな…人骨だなんて…しかも…しかも…」
【昌/朝霧】
「貴方がまたあの子を!昌を!」
【流】
「昌やめろ!!」「うっ…」
【鶴羽】
「流!!」
【昌/朝霧】
「あーあー。また関係の無い人を巻き込んだの?
アハハハハハ!何その顔、貴方が刺されていればこんな事にならなかったのにね!」
【鶴羽】
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
(私は現実から目を背ける為に記憶を失っていたんだ。でも……)
「私が悪かった、ごめんなさい……」
「だから止めて!こんな事しても昌は……」
【昌/朝霧】
「馬鹿じゃないの?今更謝ったって、謝っても何も返ってこない!
私はここであの子と灰になろうと決めているんだ
誰にも邪魔はさせない!」
「鶴羽、ここに来た貴方も道連れだからね?」
「フフフ…フフフフ……アハハハハハ!」
「また3人で一緒に居ようよ鶴羽、ねぇ大好きな3人でまた同じ時間を過ごそうよ?」
【流】
「止めるんだ2人とも…頼むから止めてくれ……」
(そんな過去があった事も知らず、俺は何も出来ずにこのままアイツらを見ながら死ぬのか。
そんなのは嫌だ、だけど…
俺は出血量が多く意識が遠のいて行った。)
「頼む、鶴羽、昌、いや朝霧。。頼むから……」
【昌/朝霧】
「ほら、これが昌の顔半分よ。見なさい鶴羽!
貴方が昌をこんな姿にさせたんだ!」
【鶴羽】
「……うっ うぅ 」
(私は耐えきれず嘔吐した、腐敗が進んではいるが定期的にここへ来ては手入れをしていたのだろう姿。見るに耐えない姿の昌。
ガソリンの匂いが立ち込める、きっとポリタンクの中身だろう。)
【昌/朝霧】
「さぁ鶴羽、あの時昌の首を切ったナイフで貴方も死にましょう。」
【鶴羽】
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
(私は痛みと絶望に埋もれて行った。
痛い、だけど暖かい。溢れる血がこんなにも暖かいなんて。これが死ぬって事なのかな。
昌もこんな感じだったのかな……
違うかな、ごめんね…ごめんね……)
【昌/朝霧】
「鶴羽、綺麗だよ。その白い首から流れる赤い血。とても綺麗で儚くて私好みのドレスのよう。
さぁ、私が怖くないように抱いていてあげるからね?」
【鶴羽】
(その瞬間、目の前が赤く燃え上がった)
【昌/朝霧】
「あの子の夢を見るんだよ、電車に引かれる時の映像が私の頭の中に入ってくるんだ。
あの子が見た景色、死ぬ間際に見た景色が。
裂かれた半分は真っ白で、もう半分は真っ黒。
この意味が分かるかい?
半分は光、半分は影。まるで私たち
兄弟∥姉妹(きょうだい)の様じゃないか。
陰と陽、その中にある灰色の景色
鶴羽、貴方は光。私は影。その間にいる昌は私たちが居ないと姿さえ表さない。私達はずっと一緒に居ないとダメなんだ。」
【鶴羽】
(っ……まだ声がでる……)
「朝霧、気が付かなくてごめんね。今までずっと独りで居たんだよね……?ごめんね。
もう、大丈夫だから。私ももう終わり。
だから、朝霧。私も貴方が大好きだった。
ちゃんと伝えたかった。」
【昌/朝霧】
「なんで、なんで今そんな事を言う!
私は……私は。うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ごめんね、ごめんね…
鶴羽の事が大好きだから、私は人形を作って一緒になろうと思ったの。鶴羽の事を殺そうとなんて思ってなかったの!
こんな事になるなんて思ってなかったの!」
「暖かいね… 熱いね… 痛いね…」
「私も一緒に居るから。離さないで居るから。」
【流】
そうして鶴羽と朝霧は俺の前から焼かれ消えていった。その後、消防や警察、救急車等のサイレンが響き渡り俺はかろうじて一命を取り留めた。
後遺症は無いものの、内蔵に傷がつき回復するのに時間がかかった。
警察からの事情聴取、思い出したくなかった。
大切な人達が目の前で傷つけ合い、焼かれ、消えていく。
俺はショックで喋れなくなっていた。
誰とも関わらず暮らした方が幸せだと思った。
あんな辛いこと、もう二度と嫌だ。
だから手紙で彼女に別れを告げた。
それと、両親にも。
鏡に映る、ヤツれきった自分を見て思った。
「あの時助からなければよかった」と……
それも今日で終わりだな。
今日は3月3日。
「ふっ ははは。」これも何かの縁なのかな。
全ては【3】という数字から始まったのかもしれない、終わりもまた【3】とはな。
鶴羽、朝霧だった昌、それにまだ会ったことの無い本当の昌。
まだ、息をしていますか?
死んでもなお、息はしていますか?
また、仲良くしてくれますか?
逢いたいと思ってはダメですか?
また皆で笑って話したいな。。
何も出来なくてごめん、何も知らなくてごめん。
助けられなくてごめんね……
俺は、ふらつく身体を震わせ歩き始めた。
皆で見た景色、綺麗なこの夕陽を俺は今誰と見ているのだろうか。
最寄り駅が見えてきた。そうか、俺が今出来ること
せめて解ってあげたい気持ち。
俺はその後ホームから飛び降りた。
本当の昌と同じような状態に引かれた、、
その一瞬、俺は3人が笑顔で手を差し出している
景色が見えた。
暖かく、優しく、そして切なく。
今度は4人で笑おうな……