#25 ルッキズム、何が悪い
前回の話を続けてみたい。
某ファンサイトで見つけた、決して人気があるとは言えない私の推しの男の娘。
オカマの弱者ぶりをアピールしてあざとく振る舞う彼に、単純な私はつい騙されて色々貢いで沼ってしまったが、彼が別の名前で利用しているSNSでの様子は打って変わったいわゆる万垢で、大勢からチヤホヤ。
そのSNSで私は、天狗に上から目線で邪険にされた様に感じたので“なんだよそれが本性かよ、じゃあもう好きじゃないもんね!”とソッポを向きたかったが(やっとモヤモヤしてた事をシンプルに言語化できた)、ファンサイトへの新しい投稿で、私の入れたコメントにハートマークを付けて貰っただけで舞い上がってしまったのであった。
だがその投稿は後日の投稿に対する告知に過ぎず、本題が投稿された時に私は一体どう なってしまうのか⁈
さて後日、予想していた日の予想していた時間に予想通りファンサイトへ投稿があった。
“君の思考パターンはもう予想が付くゼ!”
投稿を開く。
彼はSNSではファンサイトの存在を内緒にしているクセに、最近ではファンサイト用のちょっと刺激的な写真をSNSで一部チラ見せしていいねを稼ごうとする。
“おかげで今回のネタも前もって分かっていたから感動も薄いゼ。
有料のファンサイトの価値を自ら下げる行為で浅はかだゼ。
これじゃあコメントなんて入れる気にはならないゼ。
まだまだ甘…あ!“
ちょっと抗えない動画が登場。
悩殺ズッキュン!
もう我慢できない!
たまらなくなってつい可能な限りの数、コメントを入れてしまう。
いつもコメントを要求するクセして記入してもなかなか見てくれやしない彼なのに、今回は直後にコメントにハートマークが付いてさらにコメント返しも付いた。
しかもセクシーで刺激的なコメント!
たったそれだけの事でキュンキュンになってしまう単純な私。
投稿の内容よりもこういうコミュニケーションが嬉しくて、また舞い上がる。
もうゼンゼン彼の事好きじゃないのに、コメントにいつの間にか“大好き“とか書いてるし…!
ぎゃー‼︎
コメントはいつも彼が望むと思われる言葉、かつそれを見た他のファンが彼にもっと興味を持ってサイトが盛り上がる様な内容をそれなりに良く考えて書く。
いつもと何か変わっている点を見つけたら、それについて触れると喜んでくれる。
だから写真も動画も注意深く見る。
SNSの内容と照らし合わせて、すると何か色々心境やら悩みやら、見えてくる気がする(でも彼に”考え過ぎです”とよく言われる…)。
いつも病んでいる彼なのだが、最近は加齢によるルックスの劣化に不安を感じている様子だ。
承認欲求の強い彼は劣化や飽きによってフォロワーに相手にされなくなるのが夢に見るほど怖いらしい。
今回は“メイクの出来が良かった“とご機嫌だったから、そのあたりの評価が気になってすぐにコメント閲覧したのだろう。
ゲイ界隈では若さ至上主義によるルッキズムのはびこりが生き辛さを助長しているとよく聞くが、男の娘もルッキズムに囚われていて辛そうだ。
男は所詮ルッキズムから逃れる事はできないのか?
女性のルックスを評価する際に使われる“奇跡の〇〇歳“という言葉が嫌いだ。
翻訳すれば“歳の割に綺麗”で若見えするから価値がある、という意味でしかない。
結局のところ若さ至上主義で加齢を否定する言葉だ。
そうじゃなくって!
万物は流転するのだ。
若いままでいられるものなど無いのだ。
年齢なりの良さに目を向けなければ歳を重ねる自分を受け入れ難くなり、結局将来自分も生き辛くなるのだ。
“顔は人間の履歴書だ“という人がいるが、人には顔から滲み出る生き様を見て貰いたいのだ。
ルッキズムに囚われていると、やがて自分も迎える加齢という未来に希望を持てなくなってしまうのだ。
確かに私も鏡に写った自分の老け込み様に生理的嫌悪感を感じた事で、見た目や服装に注意を払う様になったので、加齢を恐れる気持ちはよく理解できるし、美意識を欠く汚い中高年は嫌いだ。
だからこそ単純なルッキズムに囚われる事無く、若い人が見て”これなら歳を重ねるのも悪くないかもね”と思われる人間を目指したいよね。
という意図をもって、“大丈夫だよ”という意味を込めたちょっと遠回りなコメントをそっと忍ばせたのだが、そこにはハートマークが付かなかったのでどうやら要らぬお世話だった様だ…
(そんなだから彼に嫌われる?)