主治医を決めないリスク
病院にかかる時、主治医を決めた方がいいというけれど、主治医を決めるのは面倒くさいと思ってはいませんか。
「時間がないから、どの先生でもいいよ。」
「薬だけ貰えればいいから。」
「医者なんだからどの先生になっても毎回しっかり診察してくれれば、
いい訳でしょ?」
「色々な先生に診てもらえた方がいいじゃない。」
私が勤務する地域の中規模病院では、こんな風に言って、毎回診察してもらう医師がバラバラな患者さんが、ちらほらいます。
風邪などで1回限りで病院にかかる分には、主治医を決めなくても、そこまで問題ないかもしれません。しかし、高血圧や糖尿病などの持病がある人や高齢の方は主治医を決めた方がいいと思います。
主治医を決めると診察日が限定しているため、患者側が予定を合わせる必要があったり、医師によっては待ち時間が長かったりと、大変なこともあります。だから、「主治医は決めなくていいや」という思考になる訳ですが、主治医を決めないでいることにはリスクがあります。
今回は、主治医を決めないリスクについて、次の3つの視点からお伝えしていきたいと思います。
1 大事な病気を発見してもらえない
こんな事例が最近ありました。
初診で胸部CTを撮影し、その時診察した医師は特に大きな異常は認められないと判断し、電子カルテにもそのように記載していました。6か月後に健診で胸のレントゲンを撮った際に異常があると言われ、定期受診の際に患者は医師に相談しました。そこで担当医は6か月前に撮ったCTの検査を確認すると、「読影」の報告書に「胸部大動脈瘤」と記載がありました。「読影」は画像を読む専門医である放射線専門医がCTやMRI画像を読み診断をすることを指します。そして放射線専門医は診断した結果を報告書にしてくれます。医師は自分が担当する診療科のCT画像を読むことは得意としていますが、その他の分野については苦手としています。そのため「読影」を依頼することが多いです。私が勤務する病院では「読影」の報告書は1-3日後に送られてきます。最終的な結果は、次回に持ち越しになります。
検査を依頼した医師が、次の診察も担当していたなら「読影」まで確認していたでしょう。しかし、次の医師はカルテに記載があった所見は確認しましたが、その所見は正常範囲の所見と記載されていたため、「読影」までは確認していませんでした。その結果、発見が遅れてしまいました。
医師が全てのカルテをすみずみまで確認し、読み込むべきだったと言えばそうなのかもしれません。しかし、医師にも診察できる時間には限りがあり、効率が求められます。また医師同士がその患者一人のために、毎回対面でコミュニケーションができれば防げたことかもしれませんが、記録のみのコミュニケーションでは、些細な部分が見落とされることもあります。今回のことは、医師を変えずに同じ医師が診療を続けていれば、防げたことだったのではないかと思います。
※最新の医療カルテの場合、医師が必要な項目を確認していなければ、「確認してください」と教えてくれるシステムになっていたりします。最新の電子カルテにアップデートできる病院の場合は、今回のようなミスは起こらなかった可能性はあります。
2 相談しても「分からない」と言われる
初めての医師の場合は、お互い手探り状態で診察が始まります。前回と変わらない場合は問題無く終わる場合が多いですが、相談内容によっては、「私、あなたに初めて会ったので、前と比較ができないんです。だから、それを言われても分からないです。」と言っている医師を見かけます。医師に相談すれば解決できると思って来た人は軽いショックを受けるかもしれません。ですが、調子がいい時の状態が分かっている主治医であれば、調子が悪い時の相談も親身になってもらえる可能性が高いですが、初めての場合はやや素っ気ない対応になることもあります。
3 医師から軽く見られる
治療方針は医師によって、さまざまです。どの薬を使うか、いつ検査をするか、症状は同じでも医師によって違いが出ます。ある時、診察する医師が毎回バラバラな患者さんが来た時、その時の診察医が患者さんに会う前にボソッと「なんで主治医決めないんだろうねー。その程度なんだろうね。」と言っていました。他の医師も毎回違う医師にかかっている患者さんを担当すると、「薬出すだけでいいんだよね」というような簡単な診察をすることが多いです。その人の健康のためというよりかは、間違いが無ければそれでいいというような診察に感じます。その結果、定期的な評価の検査がされていなかったりします。
医師も人間なので、自分の患者さんだと思えば、いい加減な診察はしないことが多いです。自分に合う医師が見つかったら、できればその医師にかかり続けて欲しいと私は思います。
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