鉄の精神、鋼のリーダーシップ
前代未聞、アメリカ大統領を提訴したこともあって、日経で日鉄の橋本会長について記事が出ていました。
大統領と合わせ、買収を違法に妨害したということで、全米鉄鋼労働組合会長、米製鉄業のクリーブランド・クリフスとゴンカルベスCEOも訴えています。
「鉄の交渉人」日鉄・橋本氏、因縁のクリフスCEOと対決:日本経済新聞
このゴンカルベスCEOの記者会見の様子をテレビでやっていましたが、日鉄、そして橋本会長への敵意剥き出しの発言は、映画でしか見られないような迫力がありました。迫力、というと何かポジティブにも響きますが、何かこう、もっと野蛮な感じです。
きっとテック企業のトップの会見ではまずやらないパフォーマンスでしょうし、やったとしても何かしら計算があってのものでしょう。しかし彼のあれは威嚇そのもの。「オレの方が強い男なんだ!」という野獣の世界を感じました。
一方、橋本会長は自ら正しいと考えたら最重要の顧客であるトヨタ自動車の提訴も辞さない、という大義の人です。記事でも取り上げられていましたが、海外事業が長く、厳しい交渉ごとを通じてタフ・ネゴシエーターとして知られるようになりました。
このあたりは、先日紹介した『日本製鉄の転生 巨艦はいかに甦ったか』に詳しいです。
ブラジルの鉄鋼大手の経営権をめぐってアルゼンチン企業と訴訟になった際は、宿泊先で身の危険を感じる場面もあったようです。それでも自らが正しいと信じたものを貫き、ナメられないようにケンカ用の英語も仕込んで交渉したのだとか。
座右の銘は「事上磨練(じじょうまれん)」、王陽明の「行動や実践を通じてしか知識や精神は磨かれない」という格言だそうです。机上の空論で終わらせず、決めた実行あるのみ。どんなタフな状況でも正しいと信じたことは曲げない。シンプルですが、これを貫くことはいかに難しいか。
長時間労働とかパワハラで肉体的・精神的な危険に晒されることはあっても、実際に危害を加えられるリスクを感じる場面は私にはありません。日々結構大変な仕事をしているつもりではあるものの、まだまだ自分は小さな世界で踊っているんだなと感じます。
さて、自分はどうなりたいのか。自分は何者で、何者になりたいのか。そんなことを考えさせられた朝でした。