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YAYACO YONEYAMA|フランスガム|今日ここに来りぬ

 身を切るように凛烈でおまけに霧まで出ていたモーヴ街。
 
潜伏していたブライオニー荘にふと月明かりが差し込んで参りました。

 今日は満月だったでしょうか?

 いいえ。

 濃菫色の闇夜に黄金色のリボンを煌めかせながら
クリスマスの亡霊が舞い降りてきたようです。

 フランスガム様が届けてくださったのはディケンズ『クリスマス・キャロル』から着想を得た連作。シリウス紙にフランスガム様特有のけぶるような筆致で描かれた神聖なるクリスマスの亡霊の絵姿です。

 頭のてっぺんから豊かな光を称えた御髪は無限に湧き出す泉のように輝いています。闇夜が深いほど光はまばゆく輝きます。

 さあ、純白の長衣の裾をそっと掴んでクリスマスのロンドンを空高く飛んでみましょう。瞬く冬の星座をくぐり抜け亡霊は何処へと誘ってくれるでしょうか。

 亡霊が連れてきてくれたのは蝋燭が灯った大広間。仄かなあかりは金唐革紙の壁紙ちらちらと瞬かせます。大きなアーチ窓の前に佇む亡霊がそっと菫色のチュールカーテンを開けてくれました。
 なんと美しい光景でしょう。クリスマス・イヴの宵に雪が降ってきたのです。

 すべてを見透かされているような、ふと立ち止まって気づくきっかけを与えてくれるような深遠な眼差し。
 亡霊に「なぜきたの」と尋ねると「きみの幸せのためだよ」と答えてくれます。

 昨今のクリスマスといえばスクルーズ宜しく「メリー・クリスマスなんてくたばっちまえ」と冷笑的になりがちではあります。ディケンズが『クリスマス・キャロル』を書いた頃の英国では家族でクリスマスを祝う習慣が廃れ始めていたのですが、この作品を機に復活したのだそう。

 自分にとっていちばん幸せなクリスマスとは、あなたのすごく近くにあるかもしれないし遠くにあるのかもしれません。通俗的な概念にとらわれることなくどこかにあるかもしれない場所へと導いてくれる、クリスマスの亡霊とともに迎える聖夜はいかがでしょう。

フランスガム|イラストレーター →HP
小林晃(aki kobayashi)という名前で雑誌や書籍、広告、パッケージなどの媒体で活動しています。フランスガムという名の元に、展示や様々な創作活動を行っています。
あなたのすごく近くにあるかもしれないし遠くにあるかもしれない、どこにもないかもしれないしどこかにあるかもしれない世界、を創作しています。

ヨネヤマヤヤコ|イラストレーター・ライター →Blog
香りの世界を偏愛するイラストレーター兼ライター。カルチャー・ソロリティ《菫色連盟》にてサロン「香水談話室」を主催。現在はモーヴ街6番地にあるブライオニー荘に隠匿中。
Twitter|@yoneyacco



作家名|フランスガム
作品名|クリスマスの亡霊

アクリルガッシュ・シリウス紙
作品サイズ|23cm×16cm 
額込みサイズ|28cm×23cm 
制作年|2021年(新作)

作家名|フランスガム
作品名|クリスマスの亡霊 - deux

アクリルガッシュ・シリウス紙
作品サイズ|14cm×9cm
額込みサイズ|17cm×12cm
制作年|2021年(新作)

作家名|フランスガム
作品名|クリスマスの亡霊 - trois

アクリルガッシュ・シリウス紙
作品サイズ|6cm×4.5cm
額込みサイズ|8.5cm×6.5cm
制作年|2021年(新作)

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