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エッセイ:悲しき着ぐるみ

ㅤつい先日、朝からスロット抽選に並んだ時のこと。再整列が終わり、開店まで10分の間が空いた時のこと。棒立ちしてスマホを弄る無職達の前に暴君ハバネロ似の着ぐるみが現れ、音楽に合わせて踊り始めた。
ㅤ当然、誰もこの踊る着ぐるみには目もくれない。この光景を前にして、僕は泣きそうになってしまったんだな。必死で堪えて狙い台をもう一度確認したりなんかして。
ㅤこの着ぐるみの中の人間も、ただ仕事だからと割り切って踊っているのだろう。客(スロプー)の目に入らぬことを知りながら。時たま顔の整った男性店員が、着ぐるみとじゃれあったりなんかして。着ぐるみもそれに応じる。
ㅤ僕は卑怯だ。この着ぐるみの中の人間がどう感じているのかは全くわからぬのに、勝手に自分の悲哀を投影しているのだから。
ㅤパチ屋のマスコットキャラクターの着ぐるみ以上に悲しい着ぐるみは他にあるんだろうか。テーマパークの着ぐるみなんかは客との交流があるけれど、パチ屋ではまず無いだろう。ただ店が客の頭に印象を残すためだけに存在する着ぐるみ。現に、こうして僕は覚えている訳だから効果はあるんだ。
ㅤしかしこの中の人間は一体?ㅤ企業兵士の切実さを勝手に感じ取ってしまった。-8K

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