遅刻記念日
起床時刻9時15分。
家を出る時間の15分前だった。朝の準備に90分かかる私にとってそれは絶望を意味した。
「2限に行くのは諦めるか。」いつもなら一瞬の躊躇もなく諦めていただろう。まるではじめから2限など存在していなかったようなそぶりで。
ただ今日だけは違った。この1年間で1番好きだった授業、すなわち今日の2限。この授業は今日で最後だったからだ。
私は悩んだ。今日は補講日。2限以外の授業は休みだ。たった1コマ90分のために90分かけて学校に行って90分かけて帰ってくるのか。
しかも現時点でどんなに急いでも遅刻は確定している。それに世田谷ボロ市にも行きたい。期末レポートも溜まっている。
2限に行くのを諦めて、午前中はボロ市に行って午後にレポートを書く。これが綺麗な1日の構成だと思った。
しかし1年間で1番好きだった授業の最終日、先生は非常勤。最後にお礼を言わなくて良いのだろうか。自分の先週のコメントに対するレスポンスもあるかもしれない。行かなくて後悔しないだろうか。
私は悩んだ。遅刻しながら2限に行って、遠回りして世田谷ボロ市に行く。夕方に帰ってきてレポートを始める。うん。まったくスマートじゃない1日の構成だ。しかも今日はミスチが届く日だ。受け取れなかったらどうするんだ。
考えれば考えるほど、2限に行かない言い訳は溢れてくる。私の頭の中のよくわからん経営者Aも「時間を効率的に使わないのは二流だ」と私を笑っている。
私の決断。
私は自転車を走らせ、電車に飛び乗り、学校へ向かった。
15分遅刻してしまう。学校からボロ市へ向かうのは遠回りだ。レポートも進まない。ミスチだって今日食べられるかわからない。
それでも私は学校に行くことを選んだ。この1年間で1番好きだった授業の最終日のために。
これを書く時間があるならレポートのための本を読めばいい。そんなことにうすうす気付きながらも筆を走らせた今日は、大好きな授業の最終日。15分遅刻して行ってきます。