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人生を遊ぶ?遊ばない?|エッセイ


今までだいたい、手のひらに転がされて遊ばれやすいほうでした。


「からかって遊ぶひと」はタイプが決まっています。
普段は人を構わなくて、ドラスティックに考えるひとが多いです。
そしてこちらを軽く考えているのか、ほぼ全員が「お前」呼び。


前でちょろちょろしているのを目の端に入れていて、何かにんできたら
ひょいっとつまんで退屈しのぎに使われます。



猫なら良いけれども。


高校の時が一番からかわれました。
私が面白いことが好きなのと、変に真面目な部分をしっかり見抜いて、確信犯的に遊び感覚で扱われました。



✢クラスメイトの男子


リーダー格の男子が、私にどちらの話が面白いかという競争を仕掛けてきました。(どういう競争?)



彼はクラスで目立っていたので、私には構いそうにないのに、席が近くなってから何故か気が合って、色んな会話を楽しみました。


観客がいるわけではないので面白さの決着がつかず、その日は終わったかと思ったのですが、帰り道になって。



何かいつもより重いな…


と不審に思いながら電車に乗り、さらに自転車に乗って家に着きました。
自分のボストンバッグを開けたとき、重かった原因が分かったのです。


黒く大きな学級日誌が、丸まま入れられていました。いつの間にバッグを開けて入れたのか、まったくそんな様子は見せませんでした。きっと気付かないように、そおっとやったのでしょう。

(やられた!負けたな…)


学校で必要だろうのに、思い切って入れるのが彼らしくて、笑ってしまいました。

✢生物の先生


生物の先生はいつも白衣を着ていて、高齢のために、高校の先生というよりは大学の名誉教授のような風格がありました。


その先生にもどういうわけか気に入られて、
「〇〇!次の質問に答えろ」
などとよく授業中に当てられました。


隣の子と偶々たまたま私語を交わしていたとき。


「〇〇。…その後ろに立っておけ!」


と指を差して注意を受けました。
でも、もっと他に話していた子は居たはず。


(そんなに目に余ったのかな…)


と不服に思いながらしばらく立ち、ふと横を見て、何故その場所をあえて指定したのか分かりました。

骸骨の標本と双子のように、横並びに立たされていたのです。

(先生。授業に飽きたんだな…)


まったく、と思いながら骸骨と並んでいました。
そのとき先生は、素知らぬ顔で授業を続けていました。


✢高校3年生の担任


大学の合格発表後。
合格圏外だった志望校以外に、私はいくつかの大学に受かりました。


「〇〇。受けた大学全部、1点差で受かってたぞ」


職員室で、真面目な顔で打ち明けるように言われました。
実直で情に厚いタイプの体育教師だったので、冗談だと思えず。
また私も、後半かなり受験勉強を追い上げたので、ぎりぎりだった自覚がありました。


(良かった…運に恵まれてた!)


と喜んだのですが…


果たしてそんなことあるのでしょうか?おそらく何年も本気で騙されていました。



✢会社の上司


振り返れば、からかわれるのは枚挙にいとまがありません。


高校よりはましになりましたが、社会人になっても同じようにからかわれたのです。


会社のデスクでお茶休憩をしていたときのこと。
連休に高知へ行くことを話していると、突然部長がこちらへ近づいて来て言いました。


「お前、はりまや橋は立派で有名だから、一度は見ておいたほうが良いぞ」
そうしないと一生の損、みたいに言うのです。



部長はこわいと思っていたので、私は指令を受けたように真剣に答えました。

「そうなんですか。
わかりました、行ってきます」


友人と四国に渡ってあちこちまわり、「はりまや橋は大きくて立派らしいよ」と話して、わざわざ街なかにあるはりまや橋を探して訪ね歩きました。


すると…


通り過ぎてしまうくらいの、ほんの小さな橋だったのです。※よさこい節で歌われている綺麗な橋です。


(部長……)


笑いを噛みころしながら観光しました。



✢家族


では今。家族はどうかと言うと、遊ばれはしませんが、残念ながら羽根より軽い扱いです。


夫が帰宅して出迎えたとき。
その日起こったことを「報・連・相」のつもりで話していました。
上着を脱ぎながら黙っていたあと、


「わかった。――後で聞く。しばらく静かにして」


まるでペットに「HOUSE!」と言うようにすげなく拒否されます。


また別の日。夫から注意されて(上司みたいなのです)
2階で大人しくしていると、息子が上がってきて。


「お母さん、対策を3つ考えようか」


と言われ、どちらが親かわからないな、と思いました。


✢✢✢


まあ、それでも良いのです。先日夫が息子に言っていました。


「結婚するなら、自分と似てなくてきりきりしない相手が良いよ」と。


仕事や日常に疲れたとき、あれでもちょろちょろしながら生きてるんだな、と緩んでくれたらそれで充分かな、と思いました。


過去を振り返って、必死になったり、辛かった時期もあったけれど。
今のところは、人生の休憩の時期なのかなと考えています。


これからは、子育ても一段落したので、新しいページをひらいて知らない自分を見付けようと思います。


昔とは違い、100歳まで生きる時代なのですから。



人生を、遊ばせないで、遊びたい。
――と思う、今日このごろなのです。



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