「“伝える”が上手くなると、夫婦はもっと楽しい」コピーライター・森下夏樹さん×キャリア/心理カウンセラー・北條久美子さん
様々なバックグラウンドをお持ちの方の「結婚」に対する想いをお聞きするインタビュー連載。
第5回目はコピーライターとして数々の広告制作に携わっていらっしゃる森下夏樹さん(以下、森下さん)と弊社顧問およびキャリア・心理カウンセラーとして活躍されている北條久美子さん(以下、北條さん)にお話を伺いました。
今回のテーマは夫婦間のコミュニケーションに関して。
一番近くにいるパートナーだからこそ、きちんとコミュニケーションを取ることが大切。けれど同時に、距離が近いからこその難しさもありますよね。
コミュニケーションのプロのお二人なら、何かコツをご存知なのでは…ということで今回特別に対談をお願いしました。
言葉で想いを伝えるコピーライター。仕草などその人となり全体で想いを伝えるカウンセラー。やはりパートナーとのコミュニケーションにも、その道のプロならではの、目から鱗のこだわりがありました。
パートナーとより良い時間を過ごすための、ヒントが満載です。
プロが、夫婦のコミュニケーションを真剣に考えてみた
森下さん:
僕はコピーライターという仕事をしているんですけれど、広告にある言葉をさらさらっと書くのではなくて。自分では「言葉でアイディアを定義する」とよく言っています。企画から幅広く手がけているので、広告コミュニケーションのプロという位置づけでしょうか。
妻は学生時代の友達で、10年くらい付き合った末に結婚しました。意気込んだわけではなく、ゆるゆると、結婚しようという流れになった感じです。
北條さん:
私はもともとビジネスマナーとコミュニケーションとキャリアの先生をやっていたんですね。組織の中ではコミュニケーションが一番のキモになってくると思っているので、やりがいを持ってその道に邁進していました。でも自分が年齢を経て、さらに今の主人と出会ったことで、このままマナーとコミュニケーションだけをやってくのではなく、生き方の方にシフトして行こうと感じて。
今はブリリアンスプラスも含め2社の顧問をしながら、笑っている人の数を増やすことをテーマに、「どういう生き方をしたいか」「どういう生き方が自分の理想なのか」を考える場作り、ライフデザインの講座なども行っています。
私の夫はですね、元生徒なんですよ。誰にでも自然体で優しくできる、想いを言葉にできる人だったので「なんて誠実な人なんだろう!」と感動して私からアプローチして。完全に職権乱用です(笑)でもまさか結婚なんて、ここまで来れるとは思いもしませんでした。
森下さん:
僕は妻と一緒で、学生時代は法学部で勉強していたんですけれど、コミュニケーションに広く携わる広告の仕事に魅力を感じて、コピーライターになりました。
コミュニケーションに関する仕事って、終わりがないところに大きな魅力があると思っていて。時代によって人の考え方や価値観ってすぐに変わっちゃう。でもそれを考え続けるのがすごく面白い。最終的に全ては「人にある」と思っているんですけれど、そういう本質的なことを追求できるところが楽しくて、なんかやめられないなって。
北條さん:
本当に終わらないんですよね。それに人と人との関係っていつも形が変わっていくじゃないですか。それを左右するのがコミュニケーションで、どうコミュニケーションを取るかでその関係性が良くも悪くもなる。伝え方一つで相手の反応も全く変わってくる。そういうところが興味深いと思います。
でも夫婦間のコミュニケーションって、ビジネス上のコミュニケーションとは、必要とされることもまた変わってきますよね。
夫婦のコミュニケーションは筋トレ!?
森下さん:
コミュニケーションにまつわる仕事をやっているのに、僕プライベートは全然ダメで(笑)やっぱり意識しないとなかなか難しいというか、夫婦間のコミュニケーションは筋トレのようなものと言えるかもしれないです。やっていないとおろそかになってしまうので。そのための時間を意識してちゃんと取ることが大切だと思っています。
無理にでも時間を確保する。僕の場合は火曜日と木曜日は早く帰るってスケジュールを押さえているんですよ。実は話すのも人の話を聞くのもあまり上手じゃないと思っているんですけれど、でも「やるぞ!」と意識して臨んでいます。
北條さん:
私もまさに筋トレとおっしゃっているのと似ていて、夫婦間のコミュニケーションは“質より量”だと思っているんです。ビジネスでのコミュニケーションは「結論から言う」など、効率を考えた質のいい話し方が求められます。けれど夫婦の場合はどんな些細なことでもいいので話すという、質よりも圧倒的に量が大切で。夫婦だから面白くオチをつける必要もなくて、とにかく自分の中でためずに話すということ。
そうすることでお互いへの理解も深まりますし、さらに話題をシェアすることで悲しみを半分にして喜びを倍にすることもできます。
森下さん:
エーリッヒ・フロムという心理学者の方が書いた『愛するということ』という名著があるんですけれど。そこで「愛することは技術である」という話をしていました。それは生まれつき備わっているものじゃなく、教えられないし、勉強するものでもない。でもそれにはやっぱり技術が必要で、トレーニンングしていくものなんだなって。
北條さん:
技術ってありますよね。
最近私が発見したのが「好きって言っていると好きになる」というもので。旦那さんのことが大好きであるということを世の中の色々なところで言うんですよね。例えばこの前「どのくらい旦那さんのことが好きですか」って面白い質問をされて。「走って帰りたいぐらい好きです」って答えたんですけれど、そう言うからどんどん夫を好きになるし、自分の言葉が自分の中に浸透していく感覚がすごくあったんです。
大好きだということを彼に言うのももちろん大事だけれど、周りの人に伝える。「バカじゃないの」って言われるんですけれど(笑)みんなそうなったらいいのにって感じます。
森下さん:
いいですね。やっぱり恥ずかしいから隠しちゃうとか、周りから変な風に取られたら嫌だなとか気にしがちですけれど、僕はストレートに伝える・伝えられることっていいなと思います。
伝え方で全てが変わる
森下さん:
妻とコミュニケーションを取る時、僕はコピーライティングの基本である「相手の言って欲しいことを言ってあげる」ということを意識するようにしています。同じ物事を目の前にしても、この状況でどう伝えたら、どうしてあげたら相手が喜んでくれるのかなって。
以前夫婦で喧嘩した際、妻に「私を喜ばせられないとあなたはいいコピーライターにはなれない。もし私を言葉で喜ばせられて幸せにできるなら、あなたはきっといいコピーライターになれるよ」って言われたんです。
人との本質的なところを僕は仕事にしていると思うので、一人の人をコミュニケーションの中で幸せにできないと、結局仕事でも同じことになるという話がすごくガツンときて。「いや、そうだよな」って。それ以来ずっと心に留めるようにしています。
北條さん:
私は怒りを、怒りのままぶつけないようにしています。怒りは第二の感情と言われていて、一つ目に引き金となった別の感情があるんですよね。なるべくそちらを伝えるようにしていて。
例えば「なんでこんなに帰ってくるのが遅いの!」って怒りのまま彼に伝えたら、彼の楽しかった時間は台無しになってしまいますよね。私がなんで怒っていたかというと、彼と早く会いたくて約束していたのに、そうできなくて悲しかったから。そこを中心に話せば、喧嘩にならずこちらの要望を伝えられます。
二人の時間を、意味のあるぶつかり合いにするのは全然いいと思うんです。A案とB案があって、二人で議論した結果C案にするのはすごく素敵なことですよね。ただ自分の感情やイライラを解消するためだけに二人の時間を割くのはもったいない。
二人の時間って限られているじゃないですか。あと100年以上一緒にいられる保証があればそれすらもしたいと思うけれど、私と彼の人生があと数十年しかないと考えると、今から泣きそうになるんです。二人の時間はすごく大事だし無駄なことには使いたくないです。笑っていたい。ブーブー言っている日もあるんですけれど、想いとしてはいつもそうです。
あと私は挨拶フェチで、挨拶がすごく好きなんですよ。だから朝起きた時に「おはよう」私が出かけるのが後だったら「いってらっしゃい」は絶対に言うんですけれど、その時にはどんなことがあっても最高の笑顔をするって決めているんです。表情といった体の動作をポジティブなものにしていると、気持ちもついてくるから。これはどのカップルにもおすすめです。
森下さん:
体を動かすと気持ちも後からついてきますよね。落ち込んでる時に変なダンスを踊るとハッピーな気分になったり(笑)
北條さん:
私もやります!言葉より動作の方が脳をだませるからいいんですよね。
例えば愚痴っぽくなっちゃいそうな時も先に笑っちゃったり。心の中では怒っていても笑顔で冗談っぽく「なんで電話してくれなかったの〜」とかいうと、怒りよりも笑いがまさってくるんです。
ただうちの場合はあまりにもテンションが高くなっちゃって、聞かれたら困るレベルの会話になってしまっているんですけど(笑)
相手を想う機会を持つ大切さ
森下さん:
実は僕はプロポーズをちゃんとできなかったんです。ご飯食べながら「これからどうしよう」みたいな話をして「じゃあ結婚しましょうか」となったので。彼女も僕も改まったことが得意じゃないという理由もあったんですけどね。
でも今はもっとちゃんとやれば良かったって、すごく思っています。僕はあいのりとかテラスハウスとかそういう番組が小学生の頃から好きなんですけれど、誰かのことを考えて言葉をしたためてまっすぐ伝えるって、これは素晴らしいことだなと思っていて。
北條さん:
私もそう思います。
森下さん:
普段忙しなく色々やっているから、ちゃんと意識しないと相手のことを何も考えなくなっちゃうんですよね。しかも近い存在だと全然言葉にしない。改めて伝えることってだんだんなくなって。余計なことを言っちゃうことはすごく多いんですけどね。
だから形はどうあれ、その人のことについて一生懸命考えてあげる時間を取ることって、すごく素敵なことで。プロポーズはできなかったものの、普段からこれは結構意識していることなんです。
伝えるのも伝えられるのもすごく素敵な行い。だからプロポーズも、それに暦上にある例えばバレンタインデーだって、せっかく機会があるのであれば、それを使って改めてお礼などの気持ちを伝えるのはすごく素敵だなって。
北條さん:
私もプロポーズは絶対にやった方がいいと思っています。私の主人はハワイで、ブリリアンスプラスのスタッフにも協力してもらって壮大なサプライズプロポーズをしてくれたんです。その時の映像とかを見ていると、驚き過ぎて私むちゃくちゃつまんない反応しかしていないんですけれど(笑)人生で一番嬉しかった瞬間はって聞かれたら、絶対にプロポーズのタイミングって答えます。
それくらい人生で忘れられない日になりますし、一生懸命プロポーズを用意してくれた彼の優しさは濁りのない透明なものだと実感したから、むしゃくしゃすることがあっても婚約指輪を見て「ね!」って思える。プロポーズのおかげでその感覚がずっと続いているんです。
▲北條さんが旦那様から贈られた婚約指輪はヘイロー ガーランド ダイヤモンド エタニティタイプ リング、結婚指輪はミルフィーユ トリプル 5.0mmです。ちなみに、森下さんに「今もし改めてブライダルリングを選べたら、身に着けてみたいデザインなどありますか?」とお伺いしたところ「今している指輪はお互いに真剣に考えて、働いて高いお金を払って買った大切な指輪です。モノそのものの価値というよりも、その間のプロセスやこれからの約束事をぎゅっと形にした印みたいなものなので、『好きなものを選んでつける』アクセサリーともまた違ったものだと考えています。お互いが納得して、考えて積み重ねた時間を知っているモノ。そしてこれからの時間を見守ってくれるモノなので、他のものを選ぶことはできません!」とのこと。ブライダルリングとの付き合い方にも、想いを大切にされる森下さんの、ぶれない姿勢が感じられます。
森下さん:
僕一回サプライズをしようと思って、クリスマスプレゼントとしてこっそり、妻が欲しがっていたオーブントースターを買ったんです。それでサンタクロースの要領でベッドの脇にそっと置いておこうと思ったんですけど、大き過ぎて置けなくて。それで灯台下暗しだと、ベッドのすぐ横にしまってある洋服の中に隠したんです。頑張って服を巻きつけたりして。でも速攻で見つかっちゃって、全然サプライズになりませんでした(笑)
けどそのエピソードは今も語り継がれていて、二人を和ませてくれる。失敗はしたもののやったことに意味がある、相手のことを思って行動することが一番大事なのかなと思いました。
“しあわせな結婚”をカタチにするために、未来に視点をずらしてみる
森下さん:
僕には理想の夫婦像があって。それはお互いが個としてインディペンデント(独立している)であるということです。一人の人であることを尊重するというのはすごく大事だなと感じていて。お互い依存し合うとうまくいかないんだろうなということはなんとなく思っています。
まずはそれぞれ自分のあり方や人生をちゃんと確立して、お互いの夢や目標を持って取り組むべき。一人でも生きられる状態で、でも一緒でいたいと寄り添うのが夫婦なのかなって思います。だからお互いの夢や目標を共有して、それをするためにはどうしたらいいだろうって二人で探していく。そんな時間を大切にしています。
北條さん:
私も全く同感です。一緒に夢や目標を共有することは絶対に大事だと思うんですよね。
我が家は「家訓を作る」ということを習慣にしています。その家訓は永遠に完成しないんです。いつもアップデートして何がいいのかなということをずっと話し合っていく。変わらないものもありながら言い回しを調整したり、ずっと一個のプロジェクトとして続けています。
お互いにちょっと仕事がハードで二人の時間が取れていない時に「今日家訓やろうよ!」ってあえて待ち合わせをして。どちらの話でもなく二人のあり方の確認をする。二人の未来を一緒に作っていく、そんな夫婦の形が理想だし、それを形にするために続けています。
森下さん:
多分足元とか細かいところを見ちゃうと嫌なことっていっぱい出てくるんですけれど、その先の話を共有すると「頑張ろう」って思えますよね。
北條さん:
未来の話はいいですよね。ほとんどの人が、ネガティブにイメージしないことですから。
困ったらとにかくシンプルに
森下さん:
どうやって夫婦でコミュニケーションを取ればいいか迷ったら、基本に立ち返るのが大事なのかもしれません。例えば対面で顔を合わせて思っていることを話す。嘘をつかない。
難しいかもしれないですけど、相手に抱えているもやもやを自分に問いかけて整理して、うまく言語化して、ちゃんと時間を取って相手にまっすぐ伝える。シンプルなことが一番大事かもしれないです。
北條さん:
本当にそれが大切だと私も思います。
言葉にしていない人が多すぎるし、分かってくれているのか確認することを省略してしまうんですよね、お互いに。でもそれは本当にもったいなくって。なんでもやもやしているのかとか、あなたのおかげでこんなに幸せな気分になったよとか、自分の中の変化をちゃんと言葉にするのは大事だと思います。
あと、相手に興味を持つこともきっと大切です。相手が今日はどんな1日を過ごしたのかということに興味を持つと、質問が出てきますよね。そのやりとりがだんだん対話になっていくとお互いがもっと知り合える。逆にそういうことをしなくなると、どんどん離れて行ってしまいます。
今日という日を生きていない人はいないから、そこから始めてみてもいいのかなって思いますね。
森下さん:
明日いなくなっちゃうかもしれませんからね。
北條さん:
本当にそうです。言えなかった「ありがとう」や「ごめんね」があったら嫌じゃないですか。思った時になんらかのアクションを起こすことは大事かもしれない。親しき中にも礼儀ありで。
昨日の言い方がきつかったと思ったら「ごめんね」、あとは大げさに感じるかもしれないけれど「洗濯物入れてくれてありがとう」とか、思ったことはラインなどのツールもうまく使いながら伝えてみる。
その一言があるだけで全然違いますよね。二人の日々をモノクロにするかカラフルにするかは、自分次第だと思います。
森下さん:
上手くやろうとせず素直にまっすぐ想いを伝えれば、きっと大丈夫です。
森下夏樹
コピーライター。カラス/エードット所属。
ことばを使ってアイデアや思想を定義しています。
Twitter:@natsukilog
北條久美子
東京外国語大学を卒業し、ウェディング司会・研修講師を経て、2007年 エイベックスグループホールディングス株式会社人事部にて教育担当に。2010年にキャリアカウンセラー・研修講師として独立。と同時にダイヤモンドジュエリーを販売するBRILIANCE+を運営する株式会社キューの顧問に就任。
「愛される社会人になる」「その人にとってベストな方法でキャリアを積む」ためのわかりやすいレクチャーが人気を博し、『ビジネスマナーの解剖図鑑』『仕事が楽しくなる 働き方のセブンマナー』などビジネスマナーに関する書籍を多数出版。最新刊は『仕事で差がつくコミュニケーション・敬語のきほん』。
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BRILLIANCE+では2020年3月31日までnoteと一緒に「 #あなたに出会えてよかった 」というお題企画を行なっています。
あの人がそばにいてくれることは、決して当たり前のことではありません。
日頃から伝えている人も、恥ずかしくていつもはなかなか伝えられない人も、この機会にパートナーへの思いをnoteで綴ってみませんか?
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