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しゃべる画像/ショートショートに挑戦

この家には父親、母親、娘、息子の4人の人間と「犬」と呼ばれる私が住んでいる。

人間は知らないが、我々犬にとって人間の言葉は音だけでなく色もついている。確かに私にだけ話す時には彼らの言葉は温かい赤だったり、怒りのこもった黒だったり、秘密めいた紫だったりする。

だが家族が互いに話す言葉は私にはただの音のやりとりにしか聞こえない。まるっきり無色なのだ。

不思議で犬仲間に訊いてみたところ何の感情も込めず話される人間の言葉には色がつかないらしい。

ついさっき、父親が帰ってきた。
「ただいま」と父親は笑顔と疲れが混ざった声で言う。
「お帰りなさい」と日中よりちょっと高い音で母親が応える。
「お帰りなさーい」娘が一生懸命作った優しい声で言っているのが聞こえた。

誰の言葉にも色がついていない。

ただ一人、息子の部屋からは音は聞こえないが黒い溜息が見えた。

毎日、白黒の画面で言葉がやりとりされている。
私にはまるでしゃべる画像のように見えている。

(409文字)

*たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
今週のお題は「しゃべる画像」


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