医師の高収入の実態とその裏に潜む問題
医師の高収入の実態とその裏に潜む問題
「医師は年収の高い職業」という認識は広く知られています。確かに、医師の生涯年収は、勤務形態や診療科によって異なるものの、30年間勤務した場合、約3.7億~9億円に達するとされています。しかし、その高収入には、過酷な労働環境や多くの責任が伴い、現場の医師たちにとって「割に合わない仕事」と感じられることも少なくありません。
本記事では、医師の高収入が抱える問題点と、現場の実態について解説します。
医師の生涯年収とは?
医師の年収は、勤務医と開業医、さらには担当する診療科によって大きく異なります。例えば、脳神経外科医や産婦人科医は、平均年収が1,480万~3,000万円であり、生涯年収では4.4億~9億円に達するとされています。内科医や精神科医、小児科医なども同様に高い収入を得ることができますが、その中でも、開業医の年収が勤務医を大きく上回る傾向があります。
一方で、一般的なサラリーマンの平均年収は約467万円であり、同条件で計算した生涯年収は約1.4億円となります。この数字と比較すると、医師の年収がいかに高水準であるかがわかります。
診療科平均年収生涯年収(30年)脳神経外科医約1,480万~3,000万円約4.4億~9億円産婦人科医約1,466万~3,000万円約4.4億~9億円外科医約1,374万~2,500万円約4.1億~7.5億円整形外科医約1,289万~2,500万円約3.9億~7.5億円内科医約1,247万~2,700万円約3.7億~8.1億円精神科医約1,230万~1,600万円約3.7億~5.8億円小児科医約1,220万~3,000万円約3.7億~9億円
医師が高収入である理由
医師の生涯年収が高い理由には、以下の3つが挙げられます。
需要と供給のバランス 医師は、すべての人が一生のうちにお世話になる職業です。日本の高齢化社会では、医療への需要がますます高まっており、特に高齢者が増えるほど医師の重要性が増していきます。また、企業が健康管理の一環として産業医を導入するケースも増えています。
大きな責任が伴う 医師の仕事は、人命に直接関わるものであり、その責任は非常に重いです。手術や投薬の判断は、患者の生命に直結するため、その重圧も非常に大きいです。このような責任の大きさが、高報酬の背景にあります。
24時間体制の激務 医師は、急患や患者の容体急変にすぐに対応する必要があります。勤務時間が不規則であり、緊急時には深夜でも呼び出されることが多く、過酷な労働環境が続きます。そのため、多くの医師は慢性的な睡眠不足やストレスにさらされています。
高収入であっても「割に合わない」と感じる理由
医師は高収入の職業である一方、その対価に対して「割に合わない」と感じる人も少なくありません。その理由には、以下の点が挙げられます。
高額な税金 医師の高収入は、同時に高い税負担を伴います。例えば、年収2,000万円の医師は、年間約520万円を所得税として支払わなければなりません。さらに、社会保険料や住民税なども加わるため、手取りは大幅に減少します。
退職金がない 開業医には退職金制度がなく、老後の資金を自ら用意する必要があります。これに対して、サラリーマンには退職金制度があり、一定の安心感があります。
厚生年金による保障がない 開業医は個人事業主であるため、国民年金のみが適用されます。国民年金だけでは、老後の生活に十分な保障を得ることが難しく、医師自身が資産形成を行う必要があります。
医師にとっての資産形成
過酷な労働環境や高額な税金に対する対策として、多くの医師は不動産投資などの資産運用を利用しています。不動産投資は、安定した家賃収入を得る手段として効果的であり、老後の生活資金の上乗せとしても機能します。また、不動産投資は、節税対策としても有効であり、開業医が所得を抑える手段として活用されています。
このように、医師は確かに高収入を得る職業ですが、その背景には過酷な労働条件や高い責任があり、収入以上に多くの負担を抱えています。高収入だけで医師という職業の価値を判断するのではなく、その裏にある実態にも目を向けることが重要です。
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