イカレポンチとポンチ絵

 たまに官公庁のサイトで、制度説明のために使われる「ポンチ絵」というものがある。例えば、下記サイトには法律概要の「ポンチ絵」が掲載されている。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/pss/page22_003958.html

ポンチ絵

 私は初め、この「ポンチ絵」という文言に少々戸惑った。以前から知っている言葉に「イカレポンチ」というものがあったからだ。官公庁でそんな言葉使っていいの? と思っていたのだが、改めて意味を調べてみた。

 まず、「ポンチ絵」の意味だが、これは明治時代に流行した1コママンガで、そこからわかりやすく示した絵/図を示すようになったらしい。語源は、『パンチ』というイギリスの風刺漫画雑誌→それを範に外国人居留地向けに発行された『ジャパン・パンチ』の「パンチ」らしい。

漫画史における「ポンチ絵」とは、日本の明治時代に流行した絵の一種である。主に新聞や時事雑誌に掲載された、滑稽な風刺画で、現代で言う1コマ漫画の一種に相当する。大正時代には「コマ割り」や「キャラクター」などの革新的な手法を取り入れた漫画が「漫画」の名称で普及したため、昭和初年になると、「ポンチ絵」とは昔の古臭い単純な漫画のことを指すようになった。
そこから転じて、製品設計の現場において、工業製品の構想や設計図の下描きなどを単純な漫画のような絵で示したものも「ポンチ絵」と呼ぶ。
また、官公庁で使用される文書において、文書の内容などを解りやすく単純な漫画のような絵で示したものも「ポンチ絵」と呼ぶ。(「ものすごく複雑な絵のような何か」であることがネタにされるが、本来は解りやすいものである)

ポンチ絵 - Wikipedia

 一方、イカレポンチは若旦那を意味する「ぼんち」の音が変化したものだそう。

「ぽんち」は、若旦那(わかだんな)の意の「ぼんち」の音変化しっかりした考えのない軽薄な男。

「イカレポンチ」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書

 つまり、「イカレ”ポンチ”」と「”ポンチ”絵」は何の関係もなかった。そもそも語源が違う。残念(?)

 ついでに、「イカレポンチ」の「イカレ」の方についても考えてみたが、これは「イカレタ」「ポンチ」だろう。ただ、「イカ」が「行く」なのはわかるが、「レタ」は尊敬の助動詞なのだろうか? だとするとちょっと皮肉な表現である。

 そういえば、芸人のナダルさんが「いっちゃってるー」という決め台詞をよく使っているが、「イカれてるー」ではないのは、あえて尊敬の念を言葉上で示すというアイロニーを外して、純粋に客観的な立場から対象を叙述するという科学的な態度を表現しているのかもしれない。態度の悪さを売りにされているので、あまり好きではなかったのだが、ストレートな物言いをするという姿勢に私の中での好感度が少しあがった。

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