合同会社の定款における相対的記載事項について個人的に調べたまとめ。
持分の譲渡の要件
【前提】
持分会社である合同会社において、持分(出資分)の権利を他人に譲渡するには、他の社員全員の承諾が必要となる(1)。しかし、業務執行社員ではない合同会社の社員は、業務執行社員全員の承諾だけで、持分の譲渡をすることができる(2)。(2)の場合、定款の変更は社員全員の同意ではなく、業務執行社員全員の同意のみで行う事ができる(3)。
【だが】
以上の規定は、定款で別段の定めをすることができる(4)。このため、社員が持分を他人に譲渡をしやすくすることや(社員の過半数の賛成、代表社員による承諾等)、譲渡しにくくすることもできる(業務執行社員以外の社員でも、社員全員の賛成が必要等)。
業務を執行する社員(業務執行社員)の指名又は選任方法
「業務」と「業務を執行」
「業務の決定」と「業務の執行」は別の概念であることに注意。「会社が行うこと」(業務)と、「「会社が行うこと」をすること」(業務の執行)。
合同会社の社員は、定款に別段の定めのない限り、業務を執行する(業務執行社員である)(1)。つまり、定款で特定の社員のみを業務執行社員とすることができる。
業務を執行する社員には第五百九十三条以下で別途規定があり、相反取引の禁止などが定められている。この内、以下の項目については定款で別段の定めをすることが妨げられていない(相対的記載事項)。
第五百九十三条(業務を執行する社員と持分会社との関係)
民法の該当箇所は委任について規定した箇所の中にあり、4項で準用するとされているのは以下の通りである。事務に係る物品の扱いや費用、報酬についての定めを、ある程度柔軟に(法に反しない限り)定めることができる。
第五百九十四条(競業の禁止)
業務執行社員は、定款に定めのない場合、自分が社員である合同会社の「事業の部類に属する」取りひきを、他の社員全員の承認を受けずに行ったり、同業他社の役員になったりすることができず、もしこれに違反すると、それによって得た利益は会社の損失になる=会社に損失を与えたことになる。ただし、定款に定めがあればこの承認の条件をゆるくすることができる(社員の半数の承認、代表社員の承認、等)。
第五百九十五条(利益相反取引の制限)
これも先の「競業の禁止」と同様に条件の緩和もできるし、反対に厳しくすることもできる(「当該社員以外の社員の過半数」→「当該社員以外の社員の全員」等)。
第五百九十九条(持分会社の代表)
合同会社の社員は定款に定めの無い限り、全員代表社員だが、特定の社員を代表社員として定める事ができる。代表社員は業務に関する一切の裁判上、裁判外の(法律)行為をすることができる。ただし、行為を制限することを定めても、善意の第三者には対抗できない(代表社員=会社を代表していると看做される)。
社員又は業務執行社員が2人以上ある場合における業務の決定方法
合同会社では会社の業務は定款で定めのない限り社員の過半数をもって決定するが、定款に定めがあれば決定方法を変更できる(代表社員が決定する)等。ただし、常務(日常的な管理・作業)は単独で行える。
合同会社を代表する社員(代表社員)の指名又は互選
前述のため省略
存続期間又は解散の事由
合同会社は定款に、会社の存続期間や解散事由を定める事ができる。なお、株式会社も同じ。
その他
記事の冒頭で引用した「法務省:合同会社の設立手続について」に記載の「等」にあたるものを、会社法の持分会社に関する箇所から「定款」をキーワードに検索した。ただし、公告についてはこの方法によらない。
社員の持分会社の業務及び財産状況に関する調査
【前提】
業務を執行する権利のない社員でも、会社の業務と財産の状況を調査できる。
【だが】
事業年度の終了時と重要な事由があるときを除いて、定款で定めればこれを制限することができる。
任意退社
【前提】
定款で
①会社の存続期間を定めなかった
②ある社員の終身の間持分会社が存続することを定めた
場合には、各社員は事業年度の終了時に退社ができるが、6カ月前までに予告が必要。
【だが】
別段の定めをすることを妨げないので、予告の期間について調整したりできる。
法定退社
定款に、社員が退職する事由を定めることができる。なお、言及されている条文は以下のとおり。
・社員の持分を差し押さえた債権者が当該社員を退職させる(六百九)
・会社の精算中にその結了まで会社を継続することに同意をしなかった(六百四十二)
・裁判で会社の設立の無効・取消を容認する判決が確定し、無効・取消の原因が一部の社員のみにあるとき(八百四十五)
相続及び合併の場合の特則
社員が死亡した際に、いわゆる普通の相続人(配偶者等)が持分を継承することを定款で定めることができる。
この定めがない場合、相続人は持分は相続の対象にならない(第611条)。
計算書類の閲覧等
計算書類が電磁的記録(電子データ)で作成されている場合、社員による閲覧する権利を制限することを定められる。ただし、事業年度の終了時に請求することは制限されない。
だから、日常的に会計データにアクセスすることは拒否できても、確定した計算書類の閲覧は当然に請求される。
利益の配当
社員は利益の配当を会社に対して請求できるが、その方法や利益の配当に関する事項は定款で定める事ができる。
社員の損益分配の割合
【前提】
損益分配の割合は社員の出資の価額に応じる。
【だが】
定款で別の分配割合を定めることができる。もちろん、「”損”益」なので、損失の分配もその割合だと推定される。
出資の払い戻し
定款の変更
【前提】
定款の変更は総社員(全社員)の同意による。
【だが】
定款で変更方法を変更することができる(過半数、代表社員の決定等)。
清算人の就任
会社の清算人を定款で定めることができる。予め存続期間が決まっている場合には、決めておいてもいいかもしれない。
清算人の解任
【前提】
清算人の解任は、いつでも社員の過半数をもって決定できる。
【だが】
定款で解任の決定方法を別様に定めることもできる。
(精算持分会社の)業務の執行
【前提】
清算人が二人以上の場合は、業務は清算人の過半数をもって決定する。
【だが】
定款に定めがあれば、その決定方法を変更する事ができる。
残余財産の分配の割合
【前提】
会社が解散した際の残余財産は、各社員の出資が価額に応じて分配する。
【だが】
分配の割合を定款で定めておくことができる。
帳簿資料の保存
【前提】
清算合同会社は清算結了の登記から十年間、清算人が帳簿を保存する。
【だが】
定款に定めるか、社員の過半数で保存者を決めた場合には、清算人ではなくその者が保存することができる。
公告
定款で公告方法を、官報に掲載、日刊新聞に掲載、電子公告のうちから定めることができる(1)。定めがない場合は、官報に掲載になる。