
【ヘッジファンドとHFTの違いは何か?】シタデルとブリッジウォーターの違い、わかりますか?ビジネスモデル、収益構造、求められる人物像など解説!
アルファアドバイザーズでアドバイザーを務めております黒岩です!
就職活動、転職、留学までサポートしています。
私自身、以前はボストンのヘッジファンドに在籍していた経験があります。
現在アドバイザーとして活動する中で、アセットマネジメントやヘッジファンド、そして近年注目を集めているHFT(高頻度取引)業界への転職・就職相談が急増しています。
私の経験から申し上げますと、これらのバイサイドは魅力的な報酬に加え、知的刺激に満ちた環境で専門性も身につけられるため、非常にオススメの業界です!
しかしながら、ヘッジファンドとHFTを同一視されるケースが少なくありません。
確かに、両者とも金融市場での運用を生業としており、外観は似通っているように見えるかもしれません。しかし、収益構造やビジネスモデルには本質的な違いがあり、それに伴って求められる人材像やスキルセットも大きく異なります。
そこで本日は、ヘッジファンドとHFTの特徴と違いについて、詳しくご説明させていただきます。
ヘッジファンドとHFTの収益構造の違い
ヘッジファンドとHFTは、金融市場で利益を追求する点では共通していますが、その収益構造には本質的な違いがあります。最も大きな違いは、ヘッジファンドが投資家としての立場で市場に参加するのに対し、HFTはマーケットメーカーとしての役割を担っている点です。
マーケットメーカーとは何でしょうか?
マーケットメーカーとは、金融市場の流動性を支える重要な存在です。彼らは特定の金融商品に対して常時、売り買い両方の価格を提示し、市場参加者がスムーズに取引できる環境を整えています。
HFTのビジネスモデルの本質は以下の3点に集約されます:
1. 超高速取引による裁定取引
- 取引所のメインコンピュータの至近に自社の発注用サーバーを設置(コロケーション)
- ミリ秒、マイクロ秒単位の超高速取引を実現
- 複数市場間での価格差を瞬時に捉えて利益を獲得
2. マーケットメイク活動
- 伝統的なマーケットメイカーに代わり、売り買いの気配値を提示
- 売買スプレッド(売値と買値の差)から収益を得る
- ただし、従来のマーケットメイカーと異なり、特別な義務は負わない
3. 高度なアルゴリズム活用
- コンピュータプログラムを駆使した自動売買
- 市場の微細な価格変動を捉えて、頻繁に売買を繰り返す
- リスク管理も含めて、すべてをアルゴリズムで制御
HFTの収益性は非常に安定しています。それもそのはず彼らがやっていることはほぼ先回り取引による短期売買なので、理論的には必ず勝てるようになっています。
具体例として、米国のオンライン証券会社ロビンフッドのビジネスモデルを見てみましょう。
ロビンフッドは、手数料ゼロという画期的なサービスで多くの個人投資家を惹きつけました。その収益源となっていたのが、個人投資家の注文情報をHFT業者に販売するビジネスでした。

例えば、個人投資家がトヨタ株を100株100円で購入しようとする注文を出すと、その情報を入手したHFT業者は市場で99円で同株を購入し、その後に個人投資家の注文に対して売り注文を出すことで差益を得る仕組みです。
このビジネスモデルには批判も多く、特に以下の点が指摘されています:
- 複数市場での注文到達タイミングの差を利用した「先回り取引」の問題
- 市場の公平性や透明性への懸念
- 急激な相場変動(フラッシュ・クラッシュ)を引き起こす可能性
様々な問題はありますが、HFTはマーケットへ流動性を提供しているという点で多大な貢献をしています。投資をしているとわかりますが、流動性がない(買いたい時に買いたい値段で買えない)市場だと、投資意欲は激減し、結果的に大きく下落します。
ヘッジファンドの収益構造
ではヘッジファンド収益構造はどうなっているのでしょう?
ヘッジファンドの収益構造は、本質的に「投資」という行為を通じて価値を創出します。彼らは市場における価格の非効率性を見出し、その変動から利益を生み出すビジネスモデルを展開しています。
具体的な収益源は以下の通りです:
1. キャピタルゲイン
市場の非効率性を見つけ出し、割安な資産を購入して価格上昇を待つ(ロング)、あるいは割高な資産を売り建てて価格下落を待つ(ショート)ことで利益を得ます。保有期間は数週間から数年に及ぶことも珍しくありません。
2. 運用報酬
投資家から預かった資産に対して、一般的に以下の2種類の報酬を受け取ります:
- 管理報酬:運用資産残高の1-2%(年率)
- 成功報酬:利益の20%程度
この収益構造の特徴は、市場の方向性に対する「予測」と「判断」が重要な要素となることです。市場がどちらに動くかを予測し、それに基づいてポジションを取ることで利益を追求します。
つまりやっていることはほとんど個人投資家と変わりません。
徹底的な分析に基づく予測と、それに従った投資判断という基本的な流れは、個人投資家であっても機関投資家であっても大きな違いはありません。
ただし、ヘッジファンドは豊富な情報源へのアクセス、証券会社や銀行による詳細な市場分析レポート、さらには精緻な需給動向の把握など、より優位な立場で投資できる環境があることは間違いないです。
ただ私もそうでしたが、基本的にはGoogle検索で会社や市場のことを調査し、セルサイド(証券・銀行)の情報は補足程度に留めておくことが多いです。
ヘッジファンドとHFTに入るには?
結論から言うと ヘッジファンド とHFTに入るには テックを学ぶことをおすすめします。確かにヘッジファンドは伝統的な運用、つまりファンダメンタルズ分析に基づく中長期投資、を行うところも多いので、その場合はテックというよりファイナンス知識が重要になるかもしれません。
ただ、最近のヘッジファンドは運用方針が変化してきています。
ヘッジファンドは前述したように、個人投資家とほぼ同じ投資手法を用いるため、ファイナンスや会計のスキル・知識が重視されます。そのため、投資銀行や証券会社のリサーチ部門出身者、MBAホルダーが数多く在籍しています。
一方でHFTは ほぼ エンジニアの集団です。
取引はすべてコンピューターで自動化され、個人投資家の注文に対して最適な価格を瞬時に提示し、それを高速で繰り返すビジネスモデルだからです。シタデル、Jane Street、DEショー、日本のダルマキャピタルなどのHFT企業では、コンピューターサイエンスやファイナンシャルエンジニアリングの修士号・博士号保持者を中心に採用しています。
ただし、テクノロジー人材の需要はヘッジファンドでも高まっています。従来型のロング・ショート投資においても、テクノロジーを活用した分析や投資戦略の立案が不可欠となっているためです。
そこで、ヘッジファンドやHFTへの就職を視野に入れている方には、テクノロジー系の大学院進学をお勧めします。目指す業態によって必要な専門性の深さは異なりますが、テクノロジーの知識は必ず役立つでしょう。
ルネサンス・テノロジーズのジム・ロジャーズが残した名言を紹介します。
「 数学者にファイナンスを教えることは簡単だが、 経済学者に数学を教えることは難しい」
つまり、テクノロジーや数学のバックグラウンドがあればファイナンスは習得可能ですが、その逆は難しいのです。この認識が、テック人材を採用してファイナンスを教育する現在の潮流を生み出しています。
ただ、文系バックグラウンドを持つ方々が、どのようにしてテクノロジーのスキルを習得し、大学院や博士課程を経てヘッジファンドを目指すのか?そのための方法はあるのでしょうか?
その具体的な道筋については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください!
▼【ヘッジファンドとHFTの違いとは何か?】年収・スキル・採用条件を比較解説!ブリッジウォーター、シタデル、Jane Streetなどに入るにはどうすればいいのか?
https://www.alpha-academy.com/courses/46/Knowhow/topics/13454