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【アクティビストファンド完全攻略】日産、東芝、ファナック、小林製薬、セブン&アイなど大企業はなぜ狙われるのか?エフィッシモ、オアシス、バリューアクトなど、アクティビスト投資手法、動向、過去の事例など解説!【5つの事例と解説あり】

初めまして!
アルファアドバイザーズでアドバイザーを務めております黒岩です。就職活動、転職、留学まで幅広くサポートをさせていただいております。

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日本でアクティビスト投資が活発になるにつれてこのようなご相談を多く受けるようになりました。実際にアクティビストやPEファンドなどの投資は日本で非常に活況になってきており、キャリアとしてアクティビストファンドを目指している方は非常に増えています。

本日はアクティビストに関しても解説記事です。今回のノートではアクティビストの投資手法や実例などを上げていきます。ただ詳しいアクティビストに入るためにはどうすればいいのか、アクティビストファンドへのキャリアパス、必要なスキルなどは以下の記事で詳しく解説していますので是非こちらもチェックしてみてください!

▼【あなたがアクティビストファンドに入るには?】エフィッシモ、エリオット、オアシスマなど投資手法・キャリア戦略を徹底解説!商社、監査法人、FASなど金融未経験者が内定を取るには?
https://www.alpha-academy.com/courses/45/Knowhow/topics/13439

◯アクティビストファンドとは

アクティビストファンドとは、通常の投資家とは異なり、株主としての権利を積極的に行使し、経営陣に対して配当や自社株買いなどの株主還元強化、さらには事業売却などを求めて働きかけを行います。

彼らの目的は、企業価値の向上を通じて投資リターンを最大化することにあります。
日本市場では、アクティビストの日本株保有額が4兆8000億円(時価総額全体の約1%)に達しており、その影響力は着実に拡大を続けています。

◯アクティビストの投資手法

アクティビストファンドは主に以下のような手法で企業に介入します:

1.株主還元の要求
・増配や自社株買いの実施を求める
・過剰な内部留保の活用を促す

2.ガバナンス改革
・社外取締役の増員や刷新を要求
・指名委員会等設置会社への移行を提案

3.事業戦略の改善
・不採算事業の売却
・経営効率化の推進
・資産の有効活用

アクティビストのメインとなる戦略は、株主提案を通じて企業価値の最大化を図ることです。他の株主との連携を深めることで経営陣への圧力を強め、増配や自社株買い、事業売却などを実現し、株価上昇を目指します。

通常のヘッジファンドやアセットマネジメントと異なり、アクティビストファンドは経営そのものの改善を要求する点が特徴的です。

一般的なヘッジファンドは個人投資家と同様、割安な株式を購入して値上がり益(キャピタルゲイン)を追求する投資手法をとります。彼らは通常、経営には直接関与せず、魅力的な銘柄を見つけて投資するという基本的な戦略に徹します。

一方、アクティビストは経営自体の変革を求めます。これが従来型のヘッジファンドとの決定的な違いです。

つまり、経営方針そのものを株主にとって有利な方向へ転換し、株主価値の最大化を追求するのです。言い換えれば、ヘッジファンドが「優良な経営を行う企業に投資する」のに対し、アクティビストは「投資先企業の経営そのものを変革する」というアプローチを取ります。

◯アクティビストの投資事例

それではアクティビストの実際の投資案件を見ていきましょう!

1. ファナック(2015年)


◾️アクティビスト:サード・ポイント
◾️要求内容:自社株買いと配当増額
◾️結果:
・配当性向を30%から60%へ引き上げ
・情報開示方針を「必要最小限」から積極開示へ転換
・5年間で配当増額と自社株買いの実施を約束

サード・ポイントは、ファナックの「株主価値向上に消極的で不合理な資本構造」を問題視。特に、1兆円規模の潤沢な手元資金の有効活用を求め、定期的な自社株買いの実施を強く要請しました。

なお、サード・ポイントは以前、ソニーに対して映画・娯楽部門の分離を求めるなど、日本市場での積極的な活動で知られるアクティビストです。

同ファンドは、ファナックの株価が低迷している主な要因として、「投資家やアナリストとの対話に消極的な企業姿勢」や「将来の収益見通しの不透明さ」を指摘。これらの改善を求めました。

2. 東芝(2017年-)


◾️アクティビスト:エフィッシモ・キャピタル他
◾️経緯:
・2017年に債務超過解消のため、アクティビストから6000億円の増資
・外国人株主比率が63%まで上昇
・2020年に経営陣と経済産業省による議決権行使への不当圧力が発覚
◾️結果:企業統治体制の抜本的な改革につながる

エフィッシモ・キャピタル・マネジメントは、シンガポールを拠点とする投資ファンドです。いわゆる「旧村上ファンド」であり、創業者の高坂卓志氏と今井陽一郎氏は、東芝の大量保有を公表した時点でまだ20代という若さでした。

彼らの基本戦略は、コーポレートガバナンスに課題を抱える割安株を集中的に取得し、経営陣への改善要求を行い、自社株買いなどの施策を引き出した後に高値で売却するという、いわゆる村上ファンド流の手法そのままです。この東芝への投資は、エフィッシモの代表的な案件となりました。

この東芝買収はエフィッシモの代表的な投資事例として、取沙汰されますが、それはコーポレートガバナンスという側面で、日本企業の変化を促したからです。

実は2020年の定時株主総会で、エフィッシモが提案した取締役選任案をめぐり、一部の議決権行使結果が反映されなかったことに加え、経営陣が経済産業省参与と共にハーバード大学基金に対して議決権を行使しないよう圧力をかけていた事実が明らかになりました。

これは重大なコンプラ違反ですし、株主のことを蔑ろにしているとも捉えられます。

東芝は社内調査結果を開示しましたが、筆頭株主のエフィッシモはその内容を不十分と判断。株主総会運営の適正性について独立調査を求める提案を行い、他のアクティビストの支持も得て可決に成功。この出来事は、日本企業のコーポレートガバナンスにおける「画期的な転換点」として高く評価されました。

この事例を契機に日本企業のコーポレートガバナンスへの注目が本格的に高まったように思います。余談ですが、当時大学院留学中だった私にとっても、この一連の出来事は非常に印象深い記憶として残っています。

3. セブン&アイ・ホールディングス(2024年)


◾️アクティビスト:バリューアクト
◾️要求内容:
・経営改善策の実施
・コンビニ事業の分離に関する提案
◾️背景:同社に対して複数のアクティビストが関与する状況に

バリューアクトは、その投資理念として「投資先企業の潜在力を最大限に引き出し、グローバルチャンピオン企業への変革をサポートすること」を掲げています。同ファンドは通常、非公式な対話を通じて経営陣との建設的な関係構築を重視していますが、その手法が実効性を持たない場合には、株主権の行使も辞さない姿勢を明確にしています。

日本市場におけるバリューアクトの代表的な投資事例として、オリンパスへの関与が挙げられます。
2017年当時、オリンパスは粉飾決算事件の影響で深刻な経営危機に直面していました。バリューアクトによる取締役派遣の株主提案に対し、当初社内では慎重な声も上がっていましたが、モトローラをはじめとする北米での投資実績に関する調査で好評価が確認されたことを受け、最終的に提案を受け入れる判断に至りました。

その後、オリンパスは2023年3月期に売上・利益ともに過去最高を達成し、営業利益率も3%台から20%超へと飛躍的に改善。バリューアクトは「グローバルチャンピオンのメドテックカンパニーを目指す同社の変革を、様々な形でサポートできた」と評価しています。

セブン&アイ・ホールディングスの事例に話を戻すと、バリューアクトの関与により、イトーヨーカ堂やそごう・西武といった不採算事業からの撤退が実現。同ファンドが投資を開始した2020年以降、セブンの株価は2倍以上に上昇しています。

4. 小林製薬(2024年)


◾️アクティビスト:オアシス・マネジメント
◾️経緯:
・保有比率を7.54%まで引き上げ
・臨時株主総会の開催を要求
◾️目的:経営改革の推進

オアシス・マネジメントは、香港を拠点とするヘッジファンドです。同ファンドは、他のアクティビストと同様、割安な株価とコーポレートガバナンスの改善余地を併せ持つ企業を重点的に投資対象とし、株主提案を積極的に行う投資手法を特徴としています。

2024年7月、同ファンドによる小林製薬の大量保有が市場の注目を集めました。
当時、小林製薬は紅麹(べにこうじ)サプリメントによる健康被害問題を受けて社長交代を迫られるなど、経営の混乱期にありました。株価が大幅に下落する中での大量保有という、タイミングの良さが際立つ投資でした。

2024年のアクティビストの動向を見ると、このように株価が急落した企業を狙った大量保有の事例が増加傾向にあります。
後述する日産のケースでも、決算発表を受けた株価の大幅下落局面でアクティビストファンドが大量保有を実施し、その後株価が急騰するという展開がありました。

5. 日産-ホンダ案件(2024年)


◾️アクティビスト:エフィッシモ、オアシスなど
◾️状況:
・日産の経営危機に際し、経産省がホンダに救済を打診
・アクティビストファンドによる株式取得と統合圧力
◾️特徴:業界再編を促す新しいタイプのアクティビズム

ホンダによる日産の救済買収は皆さんの記憶に新しいと思いますが、この裏にも実はアクティビストがいました。2024年11月12日、旧村上ファンドであるエフィッシモ・キャピタルが大量保有を行い、株価は20%以上急騰しました。

当時の日産は深刻な経営危機に直面していました。
2024年4~6月期の営業利益はわずか10億円(前年同期比99%減)にまで落ち込み、続く4~9月期も営業利益が前年同期比9割減、自動車事業のフリーキャッシュフローは4,483億円のマイナスを記録。
内田誠社長は生産能力2割削減や9,000人規模の人員削減などの再建策を打ち出しましたが、仏ルノーから信託会社に移管された自社株買いや巨額の社債償還の期限が迫る中、資金繰りへの懸念が急速に高まっていました。

当時PBRが0.2と、東証プライム上場企業で一時最下位になったことを覚えている方も多いかもしれません。

このような状況下でのエフィッシモによる大量保有は、同ファンドが既に保有していた日産車体株式29.68%と合わせ、親子上場解消への圧力を強める狙いも含んでいました。さらに、オアシス・マネジメントもエフィッシモの動きに追随する形で大量保有を公表しています。

日産はいわば「アクティビストの格好の標的」でした。
業績悪化に加え、カルロス・ゴーン事件に象徴されるコーポレートガバナンスの課題、社債償還期限の切迫、逼迫する資金繰りなど、再建か売却かの分岐点に立たされていました。

ただ日産は、その規模と技術力から見て、単純に倒産させるわけにはいきません。多数の従業員を抱える中、日産が倒産してしまうと多くの人が路頭に迷います。下請け会社も連鎖的に倒産する可能性が高いです。そうなると、日本経済全体に大きなネガティブインパクトを与えることになります。

また、日産の技術は、多くの企業にとって魅力的な買収対象となり得ます。アクティビストファンドはまさにこの点に着目し、戦略的な株式取得を進めたと考えられます。

実際、台湾のホンハイが買収に強い関心を示しました。自動車産業への参入を目指す同社にとって、日産の技術基盤は垂涎の的だったはずです。しかし日本政府は、国内の重要な技術基盤が海外に流出することを懸念。その結果、ホンダへの救済買収の打診という形で事態の収束を図ることになりました。

アクティビストファンドは、このような展開をある程度予測していたと考えられます。彼らの戦略は明確でした:

「日産株式の大量取得により交渉力を確保し、ホンダとの買収価格交渉を有利に進める。」

さらに、ホンハイという対抗馬の存在を巧みに利用し、「条件が合わなければ他社への売却も辞さない」という圧力をかけることで、買収価格の上昇を促すというものでした。結果的にババをつかんだのはホンダでしたね笑

◯まとめ

これまで、代表的なアクティビスト投資の事例を見てきました。もちろん、ここで紹介した以外にも数多くの重要案件があります。例えば、村上ファンドによるニッポン放送の買収は、日本のアクティビスト投資の歴史に大きな影響を与えた象徴的な事例として知られています。

2024年は特にアクティビストの活動が顕著に活発化しており、企業買収や敵対的TOBなど、その動きは多岐にわたっています。市場環境や規制の変化を考慮すると、2025年はさらに活発な展開が予想されます。
今後もアクティビストの動向を注意深く観察していくと、非常に面白いと思います!

また、キャリアの観点からも、アクティビスト投資は非常に魅力的な選択肢となっています。アクティビストファンドへのキャリアパスについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください!

▼【あなたがアクティビストファンドに入るには?】エフィッシモ、エリオット、オアシスマなど投資手法・キャリア戦略を徹底解説!商社、監査法人、FASなど金融未経験者が内定を取るには?
https://www.alpha-academy.com/courses/45/Knowhow/topics/13439


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