21歳 退職物語in沖縄 第2話 ふわふわした現実
前回の続きです。
お昼頃に沖縄上陸。始まりにふさわしい晴天だった。降りた瞬間にぶわっと生ぬるくて嫌な感じがするような湿気が体を包んだ。その時は初めて「沖縄来たんだな」という実感を無限耳鼻舌身意、全身で感じれたのでそこまであまり悪い気はしなかった。空港の出口に行くと大きな沖縄模様の看板が迎えてくれた。
「めんそーれ」
飛行機恐怖症とこれからの社会人生活・沖縄生活の静かに燃える期待と奥底にある不安を落ち着かせてくれる不思議な言葉に感じた。この言葉とは今後、僕の心のありとあらゆる喜怒哀楽を投影してくれる言葉になってくれることになる。ちなみに、
めんそーれ=ようこそ
はいさい=こんにちは
にふぇーでーびる=ありがとうございます
ちばりよー=がんばれ
という意味らしい。言う側も受けてもカジュアルな形でコミュニケーションが取りやすくて素敵ですよね。字体もニュアンスもかしこまった感じがなくて方言からもその土地の性格を感じ取れる。そういった意味では「馴れ馴れしい」とたまに言われる僕の欠点は住む場所では欠点じゃなくなるとも思った。
空港には営業所のイケおじ所長とメインで指導してくださる先輩社員がお迎えに来てくださっていた。そんなわざわざと思いながらも車に乗った。なんだか、車に乗った瞬間に「あ、これもう逃げらんねえな」と思った。現実をまだ受け入れられていない自分にとってはもはや連行だとも思ってたところもあった。それぐらい感情が上下するというよりかは常に一定以上の割合で夢の中だと思ってた。静かに車の中で自分をビンタしてみた。ゆっくりだったから痛くなかった。内心はそんな感じだが、ここは沖縄。見渡せばヤシの木と琉球の街並み、晴れ晴れした太陽。そして透き通る綺麗な海。僕の本音を黙らすかのような建前ではない風景にあっという間に夢中になっていた。小話もしつつ、会社に到着した。
「初めまして。東京から来ました○○です。~よろしくお願いいたします。」
営業所の人数はざっと10人前後。一通り挨拶をさせていただいた。。僕は直感が非常に鋭い。人間に対する嗅覚は熊以上。挨拶の中でこの人はクセありそうだなとか今後何か起こりそうだなというのを感じられた。
スピリチュアル的な話になってしまうが(僕はもうスピってないのでご安心を)この時は精神的に落ち着きがなかったこともあり気が普通ではなかった。ずっと喋ってた。よく、「気が合う」「気が合わない」という言葉を言ったり聞いたりすることがあると思う。
その時は人から気が出てるのをうっすら見ることができた。そこで、「この人とはお互いの気が合っていて調和できている」「この人とはお互いの気が交じり合わない」という気を視覚を通して感じ取ることができた。実際に「合気道」という武道がある。これは「天地の”気”に合する道」として行われている。二人だから合気道ではなく、二人を通して天地の”気”と合するらしい。中村天風のような話に逸れてしまったが、世は気を感じ取れてたということです。
諸々の整理を終えて、あっという間に退勤の時間。先輩から「歓迎会どうだ?」と誘われた。誘われたというか打診。「ありがとうございます。行きます」二つ返事で返答した。プレ歓迎会ということで何人かで飲みに連れてってもらった。僕が思っている以上に素敵な方々だった。なにせ、年齢差が9歳差が一番近くて、他は30から推定70まで幅広かった。僕が孫の歳ぐらいの課長も居た。社会人初の縦との飲み会。感想は皆さんとても楽しそうだった。素直に面白かったし少し緊張も解けさせていただいた。感謝しかない。
お手洗いで少しぼーとしていたら、聞きなれたメロディーがぼんやりと、ぼんやりと聞こえる。スピーカーに耳を済ませたら、、
「JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、常磐線各駅停車我孫子ゆきです。次は西日暮里です。」
一昨日聞いたよよよおおおお。沖縄1日目で早速東京を感じてしまった。いつもなにげなく聞いていたメロディーに恋しさを感じたが、ちょっぴり元気をもらえた。ありがとう。JR東日本。店主に駅構内アナウンスの理由を聞いたら「なんとなく」の回答。またしても、ちょっぴり元気をもらえた。ありがとう。
そのまま飲み会が終わった。僕には帰る家がない。ということで、当分ホテルステイ。ちょっぴりテンションがあがっていた。ふわふわした現実に足をつけていた。
宿泊したのはホテルストレータ那覇。
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ここには約2週間お世話になった。部屋も綺麗で朝食も大変おいしかった。ホテルステイを初体験したけれど、自分の家って安心するよな~と改めて実感した。
あっという間に1週間が過ぎた。ほぼ内見ばっかり行っていた。
就労時間の8時間はあっという間に終わった。笑っちゃうぐらい何していたのか覚えていない。それはそれで問題だが目の前の事を一所懸命になっていたからだと思う。それと同じく、強烈な無力感も感じた。毎日がこんなにも目まぐるしく終わるなんて想像もしていなかった。学生の頃とは訳が違う。週末は心身疲れてぐっすりしていた。
そして、月曜日になりました。
続く、、、