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【FP監修】123万円と130万円の壁はどう違うの?超えるとどうなる?超えるメリット・デメリット、違いを解説


2025年から108万円から123万円に拡大することが決まった、
通称「123万円の壁」。
ニュースではよく耳にするけれど仕組みがよく分からない、130万円の壁も聞くけれど何が違うの?…という人も多いはず。
この記事では123万円の壁と130万円の壁の違いや、それぞれ超えるとどうなるのか、超えることのメリット・デメリットを解説します。


123万円の壁と130万円の壁の違い

123万円の壁とはそれを超えると所得税が課される税金の壁を指します。
一方、130万円の壁とはそれを超えると社会保険に自身で加入する年収の壁を言います。

ただし、2024年10月から社会保険の範囲が拡大し、従業員51人以上の企業では年収106万円を超えると社会保険の加入対象になりました。

具体的に次の4つを満たすと社会保険の加入対象になります。

✅所定内賃金が月額8.8万円以上
✅所定労働時間が週20時間以上
✅2か月を超える雇用の見込みあり
✅学生ではない


123万円の壁を超えた場合

本人に所得税が課されます。課税されるのは123万円を超えた額です。
さらに、子などが働く場合、扶養控除から外れるため世帯主の所得税が増えるので、世帯全体としての収入が下がります。

扶養控除の具体的な控除額は、扶養親族が16歳以上19歳未満は38万円、19歳以上23歳未満は63万円、23歳以上70歳未満は38万円です。

配偶者控除額は38万円ですが、配偶者の年収が123万円を超えると配偶者特別控除の適用となり、さらに年収160万円からは段階的に控除額が減ります。

すなわち、所得税が課されず、かつ扶養控除を受けられる収入の上限が123万円だと言えます。123万円の壁を超えそうなときは、手取り額が減らないように自分でしっかり計算をすることが大切ですね。


130万円の壁を超えるメリット

130万の壁を超えると社会保険料を自分で支払うようになり、一見、余計な支出が増えるように見えますが、次のようなメリットがあります。

✅世帯収入の増加
✅将来の年金受給額増加の可能性
✅傷病手当金や出産手当金の受給
✅スキルアップやキャリアアップの機会の増加

それぞれ詳しく見ていきましょう。

世帯収入の増加

年収を130万以上にすることで、制限を気にせずに収入を増やせます。
さらに、パート・アルバイトから正社員になるなど、雇用形態もライフスタイルに合わせて柔軟に変えられます。

社会保険料の負担は増えますが、雇用形態を変えることで世帯の収入を大幅に増やすチャンスにつながるのはとても魅力的と言えますね。


将来の年金受給額増加の可能性

日本の年金制度は国民年金(基礎年金)と厚生年金(給与所得や企業年金)の2階建てで成り立っています。

扶養の範囲内で働く場合、将来受け取れるのは国民年金のみです。
一方で、自分で社会保険に加入する場合は、国民年金に加えて厚生年金を受け取れます。(厚生年金は企業と本人が折半して支払います。)
さらに、厚生年金には加入期間に比例して年金額が増える仕組みがあります。

長期的に見れば、自身で社会保険に加入することで老後の備えができ、老後の生活が安定するという大きなメリットが生まれるのです。

厚生労働省:年収の壁・支援強化パッケージよりhttps://www.mhlw.go.jp/content/001346565.pdf 


傷病手当金や出産手当金の受給

傷病手当金は病気やケガで会社を休み、給料が支払われなくなった場合に支給されるお金のことです。最大1年6か月間、給料の2/3が支給されます

出産手当金は出産のために会社を休み給与が支払われない場合に支給されます。出産前6週間と出産後8週間で、傷病手当金と同様の額が支給されます
社会保険の扶養の範囲内で働く場合はこれらの手当金を受け取れません。

仕事を休む場合の保障があることは、働き続ける上での安心につながりますね。


スキルアップやキャリアアップの機会の増加

年収の制限を気にしなくてよいので、正社員になるなど雇用形態を自由に選べます。また、働ける職種の幅が広がり、チャレンジしたかった分野などにも挑戦できます。

仕事に充てる時間が増えるので、おのずと実務経験が増え、給料UPや昇進の機会につながり、さらなるキャリアアップも見込めるのです。

このように自分が成長する機会が増えることは将来の人生の満足度にもつながり、生きる上での大きな魅力があると言えるでしょう。


130万円の壁を超えるデメリット

では、130万円を超えるとどのようなデメリットがあるのでしょうか?
主に次の2つです。

✅社会保険料の負担
✅勤務時間の増加

それぞれ詳しく見ていきましょう。


社会保険料の負担

扶養の範囲内で働く場合は保険料の負担がありませんが、自分で社会保険料を支払うようになると、およそ15%程度が給料から引かれます(年収や業種、地域によって変動します。)
つまり、手取りが減ってしまうのです。

それでも社会保険に自身で加入することは、年金が増えたり傷病手当金や出産手当金がもらえたりするなど、大きなメリットがあります。
したがって、社会保険に加入するかどうかは保障と負担のバランスを考えて慎重に検討することが大切ですね。


勤務時間の増加

当然ながら働く時間が増えます。生活の中で仕事の比重が大きくなるため、家事や生活に割ける時間が減ります。
私生活が圧迫され家族と過ごす時間が減ってしまったり、忙しさによるストレスで心身不調に陥ってしまったりするケースもあります。

したがって、130万円の壁を超えるときは、自分の状況だけでなく、家族や配偶者の意見を踏まえて判断する必要があるでしょう。

同じ仕事のまま労働時間を増やすことによって収入を上げるだけでなく、転職して時給や収入を上げる方法を視野に入れてみてもよいかもしれません。


一時的な収入の増加は扶養の範囲内?

2023年10月から、収入が一時的に上がったとしても、事業主がそれを証明することで扶養の範囲内として認められることになりました。
たとえば、繁忙期など残業が発生して、たまたまその年の年収が130万円を超えてしまったとしても、扶養にとどまれます。

ただし、気を付けなければならないポイントもあります。
適用されるのは連続2回まで、年間収入の見込みが130万円を超える場合は対象外です。
つまり、あくまで出勤が例外的に増えた場合に限られます。

うっかり超えてしまった…ということがないように、パートやアルバイトをする際は年収を自分でしっかりと計算するよう心にとめましょう。

厚生労働省:年収の壁・支援強化パッケージよりhttps://www.mhlw.go.jp/content/001346565.pdf


手取りが減らない収入額

おそらく、ここで気になってくるのは、130万円の壁を超えることで社会保険には加入できるけれど、年収が130万未満だったときよりも手取りが減ってしまったら…ということではないでしょうか。

では、具体的にどのくらいの年収であれば手取りが減らない状態になるのでしょうか。

2025年からの税制改革を考慮して計算すると、次の通りになります。

従業員51人以上の企業で106万円の壁を超えて働く場合 およそ125万円以上
従業員51人未満の企業で130万円の壁を超えて働く場合 およそ157万円以上

具体的にシュミレーションして見てみましょう。(概算です)

年収130万円以下で社会保険に加入しない場合

【年収120万円のケース】
扶養控除、配偶者控除:適用される
社会保険料     :なし
所得税・住民税   :なし
手取り額      :120万円(ほぼ全額)

給料から何も引かれないので、収入をそのまま手取りとして受け取れます。
ただし、雇用保険に加入している場合は給与の0.3~0.6%程度引かれるため、手取りが約119万円になります。

雇用保険に加入する条件は次の3つを満たすことです。

✅1週間の所定労働時間が20時間以上
✅31日以上継続して雇用される見込みである
✅ 学生ではない

つまり、月収8万円を超える状態が継続すると(特別に時給が高い場合を除いて)、雇用保険に加入する可能性が高くなります。

年収130万円以上で社会保険に加入する場合

【年収140万円のケース】
扶養控除、配偶者控除:扶養控除、配偶者控除は適用なし
           配偶者特別控除は適用される
社会保険料     :20万円
所得税、住民税   :2万円
雇用保険料     :1万円
手取り額      :117万円

社会保険料を負担するので、年収から20万円程度引かれます。
さらに、年収123万円の壁を超えるので、所得が課税対象となり、所得税・住民税が発生します。

よって、働く時間は増えたのに年収120万円のときよりも手取り額が少なくなってしまう、逆転現象が発生してしまうのです


年収がもう少し高くなるとどうでしょうか。

【年収157万円のケース】
扶養控除、配偶者控除:扶養控除、配偶者控除は適用なし
           配偶者特別控除は適用される
社会保険料     :23万円
所得税・住民税   :4万円
雇用保険料     :1万円
手取り額      :130万円

手取りが約130万円となります。収入が157万円を超えてくると、手取りが130万円よりも下がる逆転現象を回避できるでしょう

年収130万円の壁を超えて自分で社会保険に加入する際は、157万円を思い切って超えるような雇用形態・仕事を選んだほうがよいと言えます

なお、2025年から配偶者特別控除を満額受けられる収入額が150万円から160万円まで引き上げられることが決まりました。これにより、配偶者特別控除を満額(配偶者控除と同額の38万円)受けられます

したがって、この収入になっても世帯主の税金に影響はありません


まとめ

123万円の壁と130万円の壁は所得税が課されるか否か、社会保険に自分で加入するか否かが決まる重要な境界線です。
それぞれ超えることのメリット・デメリットがありますので、年収を自分で計算しながら働くことが必要です。

働く時間が増えることで、私生活とのバランスが変わってきます。
超えるかどうかを検討する際は、自分のライフスタイルだけでなく、家族の状況、家計のバランスなどを見ながら慎重に判断することが大切ですね。

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