スマホ見てる姿が愛おしい日と、全くそう思えない日
「謝らないと、抱きしめてくれないの?」
「という事は、自分はまったく悪くない、と思っているんですね。」
「なによ、その言い方!」
いけない。
つい、声が大きくなってしまった。
あぁ、いけない、いけない。
余計にYさんは心を閉ざしてしまうのに。
「抱きしめてほしいって私、あなたに正直に、素直に伝えたのに、それでも抱きしめてくれない理由を知りたいだけなのっ!」
あーー、ダメだもう止まらないや。
今日はパート先の先輩の機嫌が悪かった。
35番テーブルのお客様がビールがぬるいと先輩に文句を言っていたのが聴こえた。
先輩がお盆が足りないから拭いてと言ったから急いで拭いていたら、私が綺麗に拭きあげたお盆を一枚取って洗いもののシンクへ無言で放り込んだ。
なんだかモヤモヤしながら半日、ご機嫌ナナメの先輩と一緒に仕事をした。
「なんで抱きしめてくれないの?ねぇ、なんで?」
「それです。その言い方。責める気満々ですよね。」
「ちがうっ!」
もう嫌。
泣きそう。
「責めてない!理由を教えてほしいの。」
「そんなに大きな声でキツい口調で責めていないと言い張るんですか。」
もう嫌過ぎる。
最低。
あなたの胸に顔をうずめたいの、今すぐに。
「好きだから、必死だから、大きな声になっちゃうの!」
涙が溢れた。
バカ。
抱きしめてほしいだけなのに。
スマホばかり見ていないで、ほんの少し構ってほしかっただけなのに。
キスしたり、お尻を撫でたりしてほしかったの。
少しだけ触れてほしかった。
そうしたらまた幸せな気持ちで洗いものやお洗濯ができるのに。
「本当にもしそれが事実だとしたら、やり方を変えた方が良いかもしれませんね。」
Yさんは淡々と続けた。
「抱きしめてほしいと言いながら、口調も雰囲気も抱きしめてほしいようには、とてもじゃないけど見えない。理不尽だよ。」
私は思わず立ち上がって隣の部屋へ行き、
泣きながら枕を布団に投げつけた。
なんなのよ、もうっ。
かたい人!
さみしくて、悲しくて、惨めだった。
わかってる。
Yさんは何も悪くないし間違った事も言っていない。
感情的になった私が良くないし、
彼の言葉を何度もさえぎってしまった。
「違う、責めてない!抱きしめてほしいだけ」って、わかってほしかった。
悪いのは私。
でも、 でも、、、
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