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レシピって有難い!!「口福のレシピ」原田ひ香~豚肉の生姜焼き

「口福のレシピ」原田ひ香

今最も勢いのある作家さんの一人である原田ひ香さん。
料理小説も多く例にもれず「口福のレシピ」もお料理満載の小説です。

あらすじ

 品川留希子の実家は江戸時代から続く「品川料理学園」を経営。

留希子は後継者としての道を嫌い、SEの仕事の傍らSNSで料理を発信し、料理研究家として活動を始めます。

忙しい女性を助けたいと献立レシピを立ち上げるが、あるレシピが自分が昔から馴染のある味の料理を発信し、それは品川家の歴史が刻まれていたものだったため、問題が起きます。

一方、昭和2年。品川料理研究所の台所では、女中奉公のしずえが昼餉の登板に抜擢されて・・・。

現代と昭和の初めとの物語が交錯し、最後は心温まる家族小説となっています。




今は本でもネットでも作りたい料理は調べれすぐに知ることが出来ます。
その当たり前に作っている料理だけど最初に考え出した人がいるんですよね。

昭和2年のしずえは白芹に格闘。
白芹ってなんだろうと思ったらセロリの事でした。

今のセロリはだいぶ品種改良して食べやすくなっていますが、当時だったら癖が強くて、サラダでは青臭さとにおいは厳しかったと思われます。

しずえはセロリが蕗に似ていることを発見し、一旦茹でて油で炒め、醤油、みりん、砂糖、かつおぶしで調理することを思いつきます。

その後も旦那様に上野の洋食屋に連れて行かれ「ポークジンジャー」を食べ、これ以上に美味しいものを作ってほしいと頼まれます。

試行錯誤の末、納得できる「豚肉の生姜焼き」を完成させました。

豚肉の生姜焼きなんて今では当たり前でそのルーツなんて考えたこともなかったけれど改めて一つ一つの料理にドラマがあるんだなぁと思い馳せました。

私はお菓子もたまに作るので、お菓子に関しては特にそのことを強く感じます。

粉、卵、砂糖、バターという材料でシュークリームやスポンジ、パウンドケーキやクレープ、タルトなど様々な形に変化しますよね。

特にシュークリームやパイなんて作り方の工程を考えると誰が考え出したんだろうかと感心してしまいます。

今ではレシピがありすぎて、どれが美味しいんだろうと反対に戸惑ってしまいますが、何もない状況から生み出す作業には頭が下がる思いです。

それにしても今の時代、家庭の味というのが薄れていますよね。

ほとんどの方が料理検索サイトから作る事が多く、おばあちゃんや母の味というものが受け継がれなくなったような気がします。

留希子の家のように代々伝えられた味を大事にするということも忘れてはいけないのかもしれません。

 

本の中の美味しい料理

 小説の中で書かれる料理って何気なくても無性に食べてくなっちゃうんですよね。
こちらも最初から最後まで食べてみたい料理が満載です。

たとえばレンコンを素焼きして塩をかけたもの。

レンコンは焼いてナンプラーをかけるのが留希子の定番なのだが、今日は太白ごま油で焼いて塩だけ。これがぱりぱりしゃりしゃりとうまくて、いくらでも食べられてしまう。

「口福の食卓」 

咀嚼音を文字にするのが美味しく感じちゃうのかしら。
こんな何気ない料理でも作ってみたくなっちゃいます。

竹の子の天ぷら。

衣はからっとしてるのに、竹の子自身が脂を吸っているのか、他の野菜天ぷらよりもぐっとコクが増す。塩はきめの細かい「雪塩」を用意した。それをちょっとつけただけで、酒がぐいぐい飲めてしまう。

「口福の食卓」

うんうん、わかります。
竹の子が出てきたら早速天ぷらで食べたいですね。

春菊のごま和えや春菊のお蕎麦も美味しそうだし、真似したくなります。

そして冷や汁。

なるべく簡単にと留希子が冷や汁作りに奮闘しますが、実は大切な過程があったことに気づかされます。

私自身も適当に材料を混ぜて作っていただけなので今度はこの方法でつくってみようと思いました。
詳細知りたい方は是非小説をお読みになってみてください。


極めつけはやはり「豚肉の生姜焼き」

しずえが考えたものはりんごを使いますが、留希子はりんごジュースを使用。

留希子のは調味料と豚こま肉をからめて電子レンジでチンするだけというものですが、一応フライパンで作る方法で作ってみました。

留希子は砂糖を使っていませんが、私は甘辛い味が好きなので砂糖の代わりに蜂蜜を使って作ってみました。


「豚肉の生姜焼き」レシピ

材料
(2人前)

豚肉生姜焼き用     4枚
塩、こしょう、小麦粉  適量
(たれ)
酒          大匙2
しょうゆ       大匙2
みりん        大匙2
りんごジュース    大匙3
玉葱のすりおろし   1/4個分
生姜のすりおろし   大匙1
蜂蜜         大匙1

1.豚肉の筋を切る。両面に塩、こしょうし、小麦粉を薄くまぶしておく。

2.玉ねぎ、生姜のすりおろしをボウルに入れ、酒、しょうゆ、みりん、りんごジュース、蜂蜜を加え、よく混ぜておく。

3.フライパンにサラダ油を熱し、豚肉を両面焼いて一旦取り出す。

4.フライパンの脂をペーパーで軽くふき取り、タレを入れ沸騰させる。豚肉を戻し入れ、スプーンで豚肉に絡め、器に盛り、タレをかける。

*留希子の様にキャベツやレタスの上にタレごと載せても美味しいです。

甘みが苦手な方は蜂蜜を省いてもいいですが、少量でも加えるとまろやかになります。
狙い通り甘辛くてご飯が進む味です。
美味しかったので我が家の生姜焼きの定番になりそうです。



時短料理が当たり前の今の料理。
でも昔ながらの調理方法も忘れてはいけないのだなと感じました。

例えば胡麻和え。
今はすりごまに調味料を加えるだけで簡単に作れますが、本来はごまを煎って、すってとかなり面倒な工程です。
でも煎り立て、擦り立てのごまって香りが違うんですよ。

レシピの成り立ち、家庭に伝わる味、家族関係など色々考えさせられる1冊でした。


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