雲を追って #シロクマ文芸部

夏の雲を追って
こんな遠くの町までやってきた
何の計画もせず
ただ、スポーツバッグに数枚の着替えを入れて

もくもく力強く沸き上がる夏雲
その大きさから男性を連想しがちだけれど
僕は、あの夏の雲を見ていると
なぜか、小柄で華奢な君を思い出す

小さな身体で懸命に今を生きていた君
あの夏雲のように
突然、ムクムクと
怒りを膨らませる

けれど
海から吹きつける蒸し暑い南風には抵抗できなくて
遠くへ流されていき
あとには
澄み渡った空の中
青東風あおごちが吹いているだけ

夏の雲を追って
見知らぬ街にやってきた
何の計画も立てなかったけれど
ただ、スポーツバッグの中にスケッチブックは入れてある

もくもくと湧き上がる夏雲
その柔軟さから母性を感じさせがちだけど
僕は、あの夏の雲を見ていると
なぜか、泣いて、怒って、笑っている
少女のような君を想いだす

小さな身体で懸命に今を生きている君
この夏雲のように
突然、ふんわりと
僕の目の前に
あらわれる

　　　　　　　　　　　　　　　

#シロクマ文芸部 #夏の雲
小牧幸助さん
企画に参加させていただきます。