一衣帯水の地のロミオとジュリエット #青ブラ文学部　

　こんな細い帯のような長く狭い川ひとつで、僕たちの世界は二つに分かれている。
　なんて、愚かなことなんだ。
　小舟を出して流れに逆らって漕ぎ出せば、すぐにでも手が届きそうなほど近いのに。

　違う言葉を使うから？
　食べるものが違うから？

　まるで大昔の悲劇の主人公みたいに僕が暮らすコルヴォ国と君が暮らすガット国は、ずっと敵対関係だ。

　この巨木を倒して川に浮かべようか。

　なぜ、こんな思いをしなくちゃいけないんだ。
　あの川のほとりで君に出会って、恋に落ちただけだというのに。
　異種は受け付けないなんて、そんなのおかしいだろ？

　ああ、君に一目会いたい。
　今すぐにでも飛んでいきたいよ。

まるでロミオとジュリエットだね

　この細く長い帯のような川が私たちを分断しているのよね。
　大きな布を広げ風に乗って飛び出せば、すぐにでも辿り着きそうなほど近いのに。

　言葉なんていらないわ。
　食べ物なんていらないわ。

　もう大昔の悲劇の主人公みたいな結末にはしない。あなたが暮らすコルヴォ国と私が暮らすガット国は、劇作家が嫉妬するぐらい平和になるの。

　この岩を削って、大きくて頑丈な橋をつくりましょう。

　なぜ、こんな思いをしなくちゃいけないの。
　あの川のほとりであなたに出会って、恋に落ちただけだというのに。
　異種は受け付けないなんて、そんなのおかしいわ？

　ああ、あなたに一目会いたい。
　今すぐにでも走っていきたい。

　今度のバレンタインまでには橋をつくろう。
　コルヴォ国とガット国は一衣帯水の関係だ。一つの橋で大きな愛の国が完成するんだ。

　橋を渡って真っ先に君に会いにいくよ。
　緋色の薔薇を抱え、
「愛してる」
　と、伝えにいくよ。

　橋を渡ってくるあなたをじっと待っているわ。
　緋色の薔薇を抱えながら走ってくるあなたを、とびっきりの笑顔で受け止めてあげるわ。
　
そして
「私も、愛してる」
　と、伝えるわ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了
　

#青ブラ文学部 #一衣帯水の地のバレンタイン #今週の賑やかし帯
山根あきらさん、企画に参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。