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没落への筋書き #シロクマ文芸部

「青写真? ずいぶんと古臭い言い方をするのね」
「じゃあ、何て言うんだよ」
「計画、筋書き」
「へぇ」
 生業が風貌に現れている男は、ブランデーを一口飲む。
「殺しの計画、没落への筋書き」
「ハッキリと言ってくれるね」
 ボーイッシュなショートヘアに真っ赤な口紅の女は、ジロリと横にいる男を見た。
「ハッキリと言わなければ、理解してくれないからよ」
「今の内にバカにしとけ、いい仕事をしてやるから」
「当然でしょ、大金を受け取るんだから」
 男は女の言葉を聞いて、鼻を鳴らした。
「何がおかしいの?」
 男は再び、ブランデーを口に運ぼうとして手を止めた。
「お前だって、結局は金じゃないか」
「え?」
「金さえ払えば、何とでもなると思ってる。そこは、奴と変わらない」
「目的が違う」
「何きれいごと言ってるんだよ。やろうとしていることは標的と何ら変わらい。いや、むしろ、もっと残忍だ」
 そう言って男は、ブランデーを飲み干した。
「違う、私は自分のために計画したんじゃない。社会のために、やってって言ってるの」
「社会のためだって? そう言えば帳消しになるとでも?」
「あなた、どっちの味方なの?」
「どちらでもないさ。お前が社会のためなんて言葉を持ち出したからだ」
 女は男の顔を睨み、奥歯を噛んだ。
「法で裁けないなら、実力行使するしかないでしょ」
「そうかな。悪い奴が一人いなくなったところで、そう簡単には社会は変わらないさ。ずっと、そうだったろ?」
「絶対に、世界から葬り去ってやる」
 女はテーブルに置かれた一枚の写真を叩いた。その写真は、店の間接照明により感光紙に映り出された青写真のように見えた。

 大きな交差点の中にあるビルの電光掲示板。流れるように本日のニュースが報じられている。現政界トップが逮捕との文字が映し出されている。電光掲示板に一人の男性が映り出されている。太陽の光の加減で、その顔が青白く見える。また一人、悪い奴が消えていく。感光紙に映った写真のように。

                              了



#シロクマ文芸部 #青写真
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緋海書房/ヤバ猫
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